04.ひまつぶし、いたみもち。
「瀬戸くーん!」
「遅いぞ、霧島」
「ごめんね、またせちゃった」
困ったように笑う彼女。
瀬戸裕也。彼女と付き合っている。
同学年だが、2つ隣のクラス。
「帰ろうか」
「そうだね」
二人が手を繋いだことは、まだない。
瀬戸と彼女の話は、付き合いたてのカップルのように、少しだけギクシャクしている。
今日の活動報告なんて心底どうでもいいだろうに。それを飽きもせずに二人は続ける。
クラスであったこと、休み時間にあったこと、教師への愚痴、部活で今日はどれだけ頑張ったか。話しているのは大体瀬戸だ。彼女に嫌われないよう、距離を置かれないよう、必死に話し続ける。その話に、相槌をうつ彼女。
彼女が暇を持て余していた時に、瀬戸が彼女に告白した。
彼女はそれを直ぐに受けた。
薄っぺらな思いをチラつかせながら、彼女は今日もまた瀬戸と歩いている。
「あ、じゃあ、また明日ね」
「あぁ」
いつもの分かれ道で、いつものように別れる。
「あぁ、愛おしい」
結局いつも通り。変化なんて何もない。
どうせ、今日も昨日と同じ。明日も今日と同じ。
そんな人生が、彼女はそれほどまでに楽しいのだろうか?