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被告・上原透(殺人) 一日目Ⅳ ~検察側、冒頭弁論~
~検察側、冒頭弁論~
「はじめます。えー被告・上原透はおととい未明、
ひまわり荘201号室にて同アパート大家の
三枝仁を鋭利な刃物で刺し殺し、
その場から逃走を図りました。なお、
現場から凶器は未だ発見に至っていません」
「なるほど、使用された凶器がまだ
見つかっていないと。現場の状況は?」
「現場の201号室を含むアパート全体は
水浸しの状態でした」
「アパートが水浸しに?」
「事件当日、201号室隣の202号室で
火災があり、通報を受けた消防が
消火活動にあたりました。その消火活動の
影響で当然のように部屋がズブ濡れになりました」
「ズブ濡れですか」
「ズブ濡れです」
「それにしても事件当日に火災ですか……
それは事件前のことですか?」
「それはわかりません。警察が現場に
到着したとき、ちょうど消火活動の
真っ最中だったという報告を受けています」
「捜査になんらかの支障が出たのでは?」
「ズブ濡れアパートでの捜査はとても
骨が折れたと聞いています。以上で、
冒頭弁論を終了いたします」