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被告・上原透(殺人) 一日目Ⅰ
~1週間後~
街路樹の枯葉が舞う東京地方裁判所、
静寂が保たれたその小さな法廷に乾いた、
でもどこか身体に鳴る木槌の音が響く。
「これより、被告・上原透の裁判を開始します。
検察側、準備はできていますか?」
「検察側は既に準備ができています」
「前島"弁護士"、準備はよろしいですか?」
「は、はい! 完了しております」
傍聴のために裁判所に訪れたことは
何度もある。ただ、法廷でしかも弁護士と
呼ばれるのはこれが初めてだ。いまだに
その実感がわかないのは新人弁護士として
誰もが通る道なのだろうか。