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特別措置法Ⅲ
俺は弁護士資格を取得し、一週間後に法廷デビューを
する予定だ。ゆえに、特別措置法に対して
傍観者でいることはできない。
当然、その大きさに関係なくいかなる犯罪であっても
擁護することはできない。だからといって、
とりあえず死刑にしてしまおうというこの法律も
また極めて短絡的なものだ。
「もうこんな時間か」
所属は俺一人だけのさびしい弁護士事務所を兼ねた
自宅の掛け時計は午前2時を指していた。
最近は一週間後に迎える初弁護の準備に先念している。
事件の資料に目を通し証拠を集めるのも重要だ。
それ以上にこの2、3日は十年前に改正された
裁判関連の法律や規定に目を通している。
それによると、まずはじめに検察が被告人の
人定を質問する。ここで黙秘権が付与されないのが
まず大きな変更点だ。
裁判の進行だけでなく弁護士の権限も拡大されている。
「そろそろ寝たほうがいいか」