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被告・上原透(殺人) 三日目Ⅶ
~東京地方裁判所・エントランス~
「なんだね、弁護士さん」
「少々お時間よろしいですか?」
「見てわからんかね、わたしはとても忙しいのだ」
わからない、見てもわからない。
ベージュ色の高そうなソファにただ腰を
深くかけているだけじゃないか。
「えっと、何をなされているんですか?」
「見てわからんかね」
「わかりかねます」
「わたしはソファーでくつろいでおる。
そんなこともわからんのかね?」
おいおい、結局座っているだけじゃないか。
この人なかなか面倒そうな性格をしている、
早いとこ聞くだけ聞いたほうがよさそうだ。
「山村さん、税理士の方が……」
「税理士? おっと、さっぱり忘れておった。
というわけだ弁護士さん、後程法廷で」
「あっ……」
仕方ない、証拠品の整理と推理でもしていよう。




