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被告・上原透(殺人) 三日目Ⅱ
「証人は氏名と年齢、職業を述べ
「名前は山村修、年は39歳だ。
ただの会社員をしている」
「会社員は立派な職業だと思いますが?
私がこの法廷でお会いする人は
”無職”の方が多いですから」
被告席で、一昨日よりは落ちついている
上原がビクッと肩を震わせた。
あと、傍聴席で数人ほど。
「平は平なりにきついところもあるのだ。
とはいってもあなたらみたいなエリート集団には……」
「では、証言をお願いします」
目の下にできたクマをこすりながら山村は
声の音程を全く変えずにゆっくりと
社会の不平を訴えた。上原、
気持ちはわかるが舌打ちはしないでくれ。
印象が悪くなる。




