被告・上原透(殺人) 二日目Ⅱ
~ひまわり荘~
なるほど、アパートの周りにひまわりが植えてある。
だからひまわり荘なのか。しかし、
いまどき木造3階建てとは。さすがに事件当日から
4日もたつと、消火活動の水跡も乾いているようだ。
「まずは、103号室のデイビットさんに話を聞こう。
えっと、101……102……103、あった」
消火後のアパートでの生活は傍目から見ても
大変そうだ。インターフォンが壊れている。
仕方がないので、部屋の扉をたたいた。
『Who is it?』
ああ、やっぱり。外国人だ。まあ、
英語が通じない国出身ではないことは確かだ。
それなら大丈夫だな。よし、英語で返答して見よう。
英検準1級スキルを生かすときが久しぶりにきた。
「Hello. This is a lawyer, Maejima」
『なんや、日本人なら日本語で話さんかい』
……えっ、いやいや。えっ!
「ニホンゴ、ダイジョウブデスカ?」
思わず片言になってしまった。日本語ができる
在日外国人の存在は今の時代、珍しくはない。
しかしだ、まさか”東京”で”外国人”に”関西弁”で
話しかけられるだなんて夢にも思わない。
『せやから、日本語でいい言うてるやろ』
「あの、はあ。なんかすいません」
もう圧倒されてしまった。さて、どんなシルエットを
しているのやら。
『わかればええねん、わかれば。今あけたるから、
ちょっと待ってな』




