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被告・上原透(殺人) 一日目Ⅷ
「先ほど述べたとおり、被害者は
鋭利な刃物で刺殺されました。
これは明らかなことです。刺殺、つまり
出血多量だということを考えることができなかったと?」
絵にかいたような上から目線の検察官に
鼻で笑われている気分だ。いや、本当に鼻を鳴らされた
「で、ではその鋭利な刃物の目星は?」
「目星ですか。そうですね……それは
凶器を発見できなかった無脳な警官にでも
聞いてもらいましょうか」
傍聴席で誰かが肩をビクリと振るわせた。
俺は歯ぐきまで出かかった舌打ちをこらえる。
「そ、それは確かにそうですが……」
傍聴席でまた誰かが肩をビクリと振るわせた。
どうやら無脳な警官の方というのは彼のことらしい。




