カメラ
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リサイクル店のショーウィンドウに一台のカメラが破格で飾られていた。
カメラは奇怪な形をしており、とても地球で造られたものには思えなかった。
もしこんな奇抜なセンスをしている人がいるならば、それはその人の精神状態を疑うレベルではすまないな、というぐらい奇抜な形をしたカメラだった。
カメラは、長い間店内に飾られていた。
それは即ち売れないということだ。実際、そんな奇抜な形をしたカメラを買う人などいなかったから。
あまりの売れなさに呆れたリサイクル店の店主は、そのカメラをショーウィンドウに飾ることにした。
そうすれば少しは人の目に触れやすくなるんじゃないか、と思ったからだ。
そうして、今、そのカメラはショーウィンドウの中にある。
このカメラ、元は川原に落ちていたものらしい、と店主は聞いたことがある。
何でこんなものを買いとってしまったのだろう。見たら、買いとらないといけない気がしたのだ。
「ふむぅ」
店主は唸った。
「もしかするとこれが店の売れ行きを悪くしているのでは…」
それはない。
だがしかし、店主はかなり本気でそう思い込んでいた。
そこでか何か知らないが、彼は、おかしな手段に出た。
どうせこんな奇抜な格好をしているのなら、それを逆手に取ってやろう。
店主はカメラに、
『宇宙産カメラ!超高性能!
このカメラに勝るカメラ地球上に無し!』
という貼り紙をした。勿論、こんなものを本気にする人はいないだろう。
店主も勿論冗談のつもりだ。
いや、正確には、だった、だ。
何故なら、店長がそのへんてこりんなカメラに少しでも愛嬌を持たせるようにと貼った貼り紙は、結果として、一人の少年の心を引くことになったのだから…。
………………
丘には夕陽が射していた。
そこでは、町が一望出来た。
ビルディングに夕陽があたり、影と共に美しい画を作り上げている。
キラキラと橙黄色に光る川面。それは、 光と影で作り出された世界によく溶け込んでいて──本当に、美しかった。
そんな町が一望出来る丘に、少年はいた。
うわぁ、と頬を緩ませる少年。その手には、先程買ったばかりのカメラが有った。
「一度この風景を、きっちりと抜き出したかったんだ…」
美しく空を染める赤色は、町と共に、これでもかというほど少年の奇抜な形をしたカメラに捉えられていった。
たった数枚を数分で撮った少年は、満足気な顔をして、あちこちがぐにゃぐにゃ捻じ曲がっているカメラをやけに小さな鞄に仕舞って、近くに有った宇宙船に乗り込んだ。
そして、それは飛び立っていった。
後には、すっぽりと切り取られたように何も無くなった空と、町。
夕焼けの空にぽっかりと穴が空いている。だが暫くすればその穴は軈て訪れる闇に紛れ、朝には光を取り戻すだろう。
もし、これに苦情がつけられたら、このカメラの開発者は凛としてこう言うだろう。
『実物より美しいものは無いでしょう』。
そして宇宙船の中で、少年は笑うのだ。
『やあ、こんなに安く××星のカメラが手に入ったぞ』
…と。
Fin.
二作目です。