好きだから素直になれない?知るか性格悪いぞ。
諸君、ツンデレはお好きだろうか。
本来はツンケンとしていた態度から絆され、所謂デレ状態に移行していく経過を指していたらしいのだが今では性格・性質を指すものとなっている。
ツンツンとした攻撃的な言動をとる反面、懐に入ってしまえば優しさ全開。これも一種のツンデレであろう。
また、好意はあるものの素直に態度に出せずつい裏腹な態度をとってしまう……これもツンデレだ。
現在多いタイプのツンデレは最後のタイプだと思われる。完璧な独断と偏見だが。
そしてこのツンデレ、私には正直理解できない。
照れ隠しに暴言、過激なものだと暴力つきで
「本当はあなたが好き。でも恥ずかしくて素直になれないの。わかって?」
などとちゃんちゃらおかしい。鼻で嗤ってやろう。
好きなら態度で好きと示せ。
好きな相手を貶してどうする。しかも自分以外が貶すと気に食わないとか子供かと。アホかと。
結局お前の好きは
自分の羞恥心>>>相手への好意
なんじゃないかと。つまりは
自分>>>相手 という図式じゃないか。
せめて≦、譲歩しても≧くらいにはしとけよ、と。
…まぁ、こういったことを目の前のテンプレツンデレ男に言った所、物凄い衝撃を喰らったような顔をしたあとフラフラと覚束無い足取りで部屋の隅っこに移動したあとしくしく泣き出した。乙女か貴様。
「……ぐすっ、レイは、俺が、嫌いなのか……?」
「というか、顔を合わせれば
「そんな短い丈のスカートとか着て足晒すなよ公害」
とか
「色んな男にヘラヘラ笑いかけてんじゃねーよムカつく」
とか言ってくるような奴の好感度が高いとでも思ってたのかお前どんだけプラス思考なんだ」
ツンデレ訳すると多分
「気になって仕方ないから足を周りに見せるのはやめてほしい」
とか
「他の男に笑顔向けるのはやめてほしい 」
などの嫉妬・心配からの言葉なのだろうがそんなん知るか。ただただむかっ腹が立つだけだ。
というかいっちょ前に嫉妬とかするくらいなら正面から「好きです付き合って下さい」くらい言わんかこの軟弱チキン野郎が。
更にしくしく泣き出した。顔がイイだけに絵になる。本当顔が良いのは得ですね。私がしくしく泣いたら多分腫れ物に触るようなっていうかそっとしておこう……って選択される。所詮特筆すべき項目のない顔ですよ。けっ。
ああ、そういや似たようなことを目の前のこのツンデレ野郎に言われたっけな。
なんだっけ?「どんなに塗りたくってもお前の地味顔は変わらないんだから無駄な足掻きやめたら?」だったっけ。
うっさいわぼけー!とアッパーカットで返事したことはしっかり覚えてるんだけど。
キーンコーン。
おや、もうこんな時間だ。
約束の時間になってしまう。
「じゃ、もう時間だし帰るわ。今日デートだし」
「は!?」
「何。私だってデートぐらいするし、お、お付き合いしてくれる人もいるんだからっ」
やばい照れる。
なんか奴が呆然としてるが知ったことではない。
この後を考えると構ってる暇なんぞないので、放置決定である。
だってこれから、デートなのだから!
「すみません、お待たせしましたか!?」
「うん、ちょっとだけ。でも待ってる時間も、レイを待つなら楽しいんだよ。知ってる?」
「…………先輩、ストレートですね。そういうところ大好きですけど照れます」
「レイも大概ストレートだと思うけどね?でもありがとう。僕もレイが大好きで、愛してる」
「せ、先輩ぃ……!」
レイに先輩、と呼ばれる男は内心ほくそ笑む。
いつもいつもレイに纏わりついていて、レイに惚れている癖に照れ隠しに悪態をつく馬鹿な男。
他の女ならばその顔の良さと素直になれない少年らしさで落とせたのだろうが、生憎レイは実直に言動に出されることを好む。
だからこそ、彼女には素直に、恥ずかしがらずに気持ちを伝えるべきだったのだ。
ぎゅう、と後ろから抱きしめる。
恥ずかしがらない、なんてことはない。
レイも羞恥心は持っている。
しかし彼女はそれ以上に、相手に素直に気持ちを伝えたいと思う人間だ。
だからこそ、こうして抱き返してくれる。
ああ、本当に、馬鹿な男だ。
校門からこちらを茫然自失の状態で見つめる美少年に、レイからは決して見えないよう意図した角度で青年は嘲笑を浮かべたのだった。