表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

最適化の日付と時間

短いです。

まだ導入部分です。



日本‐13:40



3ヶ月の間、彼の母や大家さんの奥さんが、何を見て話しかけて来たのかと疑問に感じ、彼は恐怖していた。

彼の部屋に響いているのは、パソコンの駆動音と熱排気を行うファンの音。

しかし自分の心臓から響く信じられない程の鼓動音が彼の耳を襲う。


彼は恐怖していた。

誰もが羨むであろう時間移動に。

人類の誰もが夢にまでみた時間跳躍に恐怖していた。


パソコンの前で暫し恐怖に身を震わせていたが、彼は思いつく。


「もしかして…この時間軸の俺の事を見ていたのか?」


彼が思いついたのは、よく漫画やアニメである時間移動であった。

未来に移動したということで、本来のこの時間に住む自分がいるのだろうと予想を立てた。

この理由であれば辻褄が合う。彼の母や大家の奥さんは、言うなればこの時間に存在している自分を見ていたのだと言う結論を出した。


「なんだよ…怖がらせんなよ…」


彼は、皮肉を口にしていた。それだけ恐怖をしていたのであった。

           

日本‐13:49


このままでは、この時間に存在する自分:同一個体に出会ってしまうと思った彼は、マウスに手を乗せ、日付と時間のウインドを再度画面上に出す。

月の項目を3ヶ月前の月に設定して、彼は適用ボタンを押す。

           




日本‐13:51


彼は自分が本当に3ヶ月前のアパートに引っ越してきた日に戻ってこれたのかわからなかった。

よく漫画やアニメであるような時間移動の際の衝撃や音など一切感じなかったからである。

外的要因など一切感じない彼に無事に時間移動できた術を知る手段は、部屋にない。


彼は、確認の為に自宅へと電話をかける。


「はい。〇〇です」


電話に出たのは、3ヶ月後の自宅で出会った母親であった。


「あ…母さん?俺なんだけど…少し聞きたいことがあるんだ」

『あら?あんたかい?一体どうしたの?』

「……俺って今日引っ越したよね?今日ひとり暮らしを始めることにしたんだよね?」

『なに言ってるんだい…まったくあんたは…』

「…え?」


彼の母親の呆れた口調と共に発せられた言葉。

その言葉を聞き彼の心臓が再度鼓動を早める。


『つい数時間前に家出たばっかでしょ。まさかその年でボケたんじゃないでしょうね?』

「…はぁ…いや、ごめん。少し寝ぼけてただけみたい。わざわざ電話してごめん。それじゃあ」

『まったくなんだって言うんだい。ちゃんとご飯食べるのよ。何かあったら電話頂戴ね。それじゃあね』


先に受話器を切ったのは彼の母親であった。

母親との電話により、見事自分がパソコンを弄る前、即ち引っ越してきた当日に戻って来れた事を確認した彼は安堵する。


「本当に…いざとなったら漫画とアニメの力は偉大だな」


予想外の事態に陥った時、摩訶不思議な出来事に遭遇した時を題材にした漫画やアニメ、小説をこよなく愛していた彼だからこそ出せる言葉であった。

日常生活で誰が空を飛んだり、机の中にタイムマシンができるなど想像だにしない。それは妄想であるからだ。

しかし、現に彼はそんな妄想話に出るSFを体験し、その能力を保有していた。


「このパソコンの能力はもっと調べた方がいいな。下手に時間移動してドッペルゲンガーみたいな事にもなりかねない」


見たら死ぬと言われている同一個体の同一時間平面上にいるとされるドッペルゲンガー。勿論これも漫画やアニメの入れ知恵であった。

一時期ドッペルゲンガーは本当にいると思っていた彼だからこそ考え出せた下らない理由であった。

彼が、そんな事を一人で考えていた時にまだ昼飯を食べていないことに気づく。


「…そういや、結局買いに行ってなかったな…行くか」


彼は履いているズボンの後ろに長財布を差込家を出る。

春先の季節。晴れているがまだ肌寒い時期というのもあり、彼は体が温まる物でも食べようと考えていた。






日本‐14:03



主がいなくなった部屋で機動をし続けているパソコン。

そんなパソコンのデスクトップの右下のツールバーから報告を目的とするタブが浮かび上がる。



 【最適化ガ終了シマシタ】



それはとうに終わっていたはずの最適化の事後報告。

カタカナ表記のその文字で意図することがなにを示すのかを彼は知らない。

知る術もない。

そして数秒浮かび上がったタブは、役目を終えたように消えていく。



彼は知らない。

3ヶ月後に時間移動した際に、自宅とアパートであまり時間違わずに出会った二人の普通の反応を知らない。

その反応は常日頃から、身近に住んでいる人物に向ける反応であったことに気づいていない。

県も違う数キロ離れた自宅とアパート。

そこに住む彼の母親と大家の奥さんの普通の反応に彼は気づくことができていなかった。


それが問題の始まりであることも彼は知らない。

知る術もない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ