怪傑!「珍」事件簿 第三話
これは、最高裁判所判事の我輩が、磯つりに勤しんでいた頃、珍事件に下した判決の事例集である。
およそ99%がノンフィクションによるものである。
第三話 『夢にまで見た冠島の巻き』
この事件は、いつものメンバーが初めて「冠島」に釣行した時におこった。
この時もお決まりのメンバー3人の釣行だった。
主犯格は、佐野である。
3人は、初めての冠島に胸ふくらませ、大判を期待しながら冠島に渡礁した。
当日は、あいにくの荒れ模様、いつまで冠島で釣ができるかわからない状況であった。
そんな悪状況の中、佐野は、スズキをしとめ快調にとばしていた。さすがと言うしかなかった2人ではある。
そのとき事件は起こった。
「佐野さんたち!波が高くなってきたので場所代わってんか?」
「すぐに船に戻って!!」
船長から声がかかると、見る見るうちに波が高くなってきた。命には代えられない。あわただしく片付けをした。時間との戦いだった。
「気をつけて!早く船に飛んで頂戴!!」
と、船長の声にも緊張感が走る。
一番に小村、二番に東田と船に乗り込み、最後は佐野である。
佐野がリーダーらしく船長に声をかける。
「よっしゃ!みんな無事に船乗ったな!!船長OKです。」
「出発するで・・・・」
何とかさんにとも命拾いをする。
3人は湾内の磯に移り、実釣を再開しようとした瞬間・・・・
「あれ?俺の竿バックがない!!」
佐野が一言。
「わあ~冠島に忘れてきた!!」
落胆と挫折感の混じった声が、佐野から発せられた。
冠島に置き去りにされた竿バックは、3日間続いた大シケの波と雨にさらされ主人の帰りを待ち続けていた。しかも、天然記念物の「オオミジナキドリ」の糞を落とされながら・・・。
次回の釣行先を「冠島」に限定された3人は、割増料金の支払いを余技なくされ再度の挑戦となった。
もちろん、主人との再会を心待ちにしていた竿バックは、あの鳥の糞に塗れ再起することはなかった・・・
判決:所有物管理法違反及び資源再生法違反
懲役3ヶ月