3話
俺に意識が戻ったのは公園のベンチだ。
なぜここにいたのか。どうやってここまで来たのか。とにかく意味がわからなかった。記憶もあんまりないし。
とにかく家に帰って親に聞いてみよう。
親に聞いたところ俺は家中の窓という窓を締め切り、うずくまり「怖い」とずっと連呼して泣いていたそうだ。まぁここまでは記憶がある。
問題はこの後だ。親は俺を見るやいないや
「良樹!?大丈夫か!?」
と仕事の疲れなどまるでなかったかのような剣幕で俺に抱きつきに来たらしい。しかし、俺は「来るんじゃねぇ!!ド変態がァァ!!!!」
となにかに取りつかれたかのこどく家を飛び出して言ったとの事。もちろん大号泣でだ。いや、なぜこんなことを忘れるんだ?
手紙を見て吐き気がした。それに誰かに見られていた。
親をその気色の悪いやつと勘違いしたのもわかる。
こんなことがあった直後だからな。にしても忘れるのはないだろ。
正直もうこんな気色の悪いやつのことなど考えたくもない。
しかし、手を出されてもおかしくないのだ。
いつ誘拐され、監禁されるか分からない。怖い。誰か助けてくれ。
寝たい。寝て忘れたい。親は精神科について調べてるし。
俺に対してここまで執着する相手は誰だ?それに理由だ。
理由が1番理解しがたい。そうだ。例の手紙なら何かわかるかもしれない。
しかし、俺はとっくに燃やしてしまっていた。
きっと。いや絶対あの時の俺は錯乱していた。
ダメだ。この件のことを考える度に吐きそうになる。今でも鳥肌が止まらない。本当に気持ちが悪い。もう寝よう。でも眠りに付けない。
もしかしたらこの部屋に監視カメラや盗聴器が仕掛けられている可能性もある。
そう思うと恐怖で頭が狂いそうになる。いっその事目の前に出て来てくれよ。
そっちの方が気が楽だ。
気づけば眠りについていた。睡魔には抗えなかったようだ。
学校に行きたくない。外に出たくない。
またアイツに後をつけられるのが嫌だ。なぜこんな思いをしなければならないんだ。なぜ俺なんだ。世界は広いだろ。俺より優れたヤツなんかいっぱいいる。
親はすごく心配してきた。精神科に行こうだと。
行けるなら行きてぇよ。でもな。親でも話せないことなんだ。
親にはちょっと疲れていただけだと伝えた。これは俺の問題だ。
拓に頼るわけなど絶対にいかない。
しかし、制服に腕を通そうとすれば体が震え着ることが出来ない。
まるで薬物の禁断症状でも出ているみたいだ。
なぜだ?別に制服は怖くないはずだ。まさか学校の中に犯人が?
いやそうだとしても制服は関係ないはず。
無理やり通そうとしても体には嘘をつけない。
俺は仕方なく学校を休むことにした。
このままずっと行かなくてもいいかな。こんな思いをするぐらいなら死んだ方がマシだ。そうだ。なにか楽しいことをして忘れよう。
いやまずは学校に電話か。
えっと、学校の番号はこれか。
割とすぐ繋がった。
「もしもし、3組の良樹です。」
「おいおい生徒が直接かけてきちゃダメだろ?」
この声は担任か。俺に何があったかも知らないくせに。悪魔が。
「すみません。親はもう仕事に行ってしまって。」
「そうか。次から気をつけろよ」
意外と物分りいいな。悪魔から小悪魔ぐらいにしておこう。
「学校なのですが、体調不良なのでお休みさせて頂きます」
「そうか。体調気をつけろよ。明日待ってるからな」
「ありがとうございます」
そう言って電話を切った。体がまだ震えている。
この状況も監視されている可能性があるのだから当然だ。
今日からはいつもの何倍も警戒して過ごさなければならない。
グーッとお腹から低い音が響いた。しかし食欲がない。
何もしたくない。そう何も。今何かしたところでこの状況が変わるわけないと本能で察していたからだ。もう寝よう。
俺は2度寝の体制を取った。だが眠れない。
早く寝ろ良樹。アイツの事など忘れろ。俺は何もされてないし、ストーカーなどいなかった。考えるな。
そんなことができるならとっくに学校に行っている。
寝ようとすればするほど昨日のことがフラッシュバックして吐きそうになる。
あ、これやばい。俺はトイレへ駆け込んだ。自分でもびっくりするほどの吐瀉物が出た。これでわかった。俺の心はとてつもなくすり減っている。
おそらく生きていることが奇跡なレベルだ。
俺は学校が終わる時間までずっとトイレで過ごした。
ブーッ。スマホのバイブ音がした。
どうせ拓からの心配のLINEだろう。あいつはやっぱり優しいな。
俺はスマホの画面を見た。そして、スマホを投げ飛ばした。
見知らぬアカウントからDMが来ていた。
「良樹さん。今日学校に行ってなかったけど大丈夫?」
は?なんで?キモイキモイキモイ。俺は増々吐き気がした。あぁそのうち家とか入り込んできそうだ。怖い。今すぐこいつを殺したい。しかし、そんなもの叶うはずもない。俺は視界が暗くなり、そのまま意識が遠のいて行く感覚を覚えた。




