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1話

カーテンの隙間から嫌な光が射し込み、ピピピっと俺を急かすような騒がしい音が聞こえる。

先程までの気持ちの良い感覚はどこかへ行ってしまい、今から1日がはじまるという事実に気づき憂鬱な気持ちになる。一体なぜ夢から覚めると憂鬱な気持ちになるのだろうか。

別に朝が嫌いという訳では無い。ただ何故か憂鬱な気持ちになるのだ。そんなことを考えながらアラームを止め、今日の予定の支度をする。

今日の予定といっても学校に行くだけだ。ササッと顔を洗い袖に腕を通し、ズボンを履く。朝ごはんは...無くていいか。

たまにはこんな日があっても仕方ないと自分に言い聞かせ家を出る。

今の時刻を確認し、やや焦りながら駅へ向かう。今日は確か小テストがあったな。しかし勉強などするはずもない。勉強しなければまずいのだが、今は全てがどうでも良く感じる。

なぜこんなことを感じるのかは分からない。もしかすると心のどこかで消えてしまいたいと思っている可能性もある。

こんなポエムじみた思考を途切らせ、同じく電車に乗る友人の拓に声をかける。おや拓はいないようだ。先程までの声をかけようとした行為にはなんの意味があったのだろうか。

軽くため息を吐いた。

「よっ」

背後から声がした。不覚にも驚いてしまった。この声は拓だな。

拓はこういうしょうもないことをよくしてくるのだ。別に嫌ではないが、少し腹が立つ。

「どうした?ため息なんか着いて。珍しいじゃん。」

驚いた。いや、呆れた。

俺は結構ため息を吐いてストレスを出すようにしている。拓も聞いてきたはずだ。

「別に珍しくないだろ。」

「いや、お前って悩みとかなさそうじゃん」

なんだ。そんなことか。しかし拓は俺の悩みをいくつも聞いてきたはずだ。やはりこいつの脳みそにはタンパク質しか詰まってないのだろうか。

「俺の悩み結構拓に相談してきたはずだけどな」

拓はハッとしたような顔ではにかんだ。拓は憎めない性格だ。イラついていてもつい許してしまう。

もう10年来の仲だ。しかしそんな拓にすら話していない悩みもある。おそらく拓もだ。

人間関係とはとても複雑だ。拓のような長い付き合いの相手でもまだ完全には信用できていない。

俺の問題もあるだろうが、大体の人は全てをさらけ出せる相手はいないと思う。

ただの学生が何生意気なことをと思うだろう。まぁ別にいいか。

拓はどうなんだろうか。しかし、そんなこと考えても意味もないので気持ちを切り替え電車に乗る。

何故か疲れてしまった。まだ1日の半分も終わっていない。寝るか。

拓には悪いが1人で勉強してもらおう。

元々勉強する気もないのだからどちらにせよ拓は1人だ。

「俺寝るから最寄り駅着いたら起こして」

拓は絶望した顔でこっちを向いてきた。

「お前が寝たら誰が俺に小テストの対策教えてくれるんだよ...」

拓は完全に絶望していた。仕事終わりのサラリーマンのようだ。

しかし拓よ。起きていても俺は教えるつもりはなかったぞ。

「じゃ、おやすみ〜」

拓のことは申し訳ないが放っておき眠りについた。

なぜだ。眠ることができない。やはり悩み事のせいか。

学生のうちは悩み事が多くて困るねぇ。と心の中の俺がぼやく。

何言ってんだろ。気でも狂ったか?いや元からだな。

俺は昔からクラスの中、いや学校中で変人と言われている。

おっと。自己紹介がまだだった。

良樹だ。よろしく。誰に向かって話してるのかは自分でも分からない。

これが変人たる所以だ。

さて。俺の悩み事についてだが。実は最近好きな人が出来た。

というのは嘘だ。すまない。なんだコイツと思っているだろう。まぁいい。

「ええっとぉーここはこうだからぁ...」

拓の独り言が聞こえた。独り言デカイな。マジででかい。

もう悩み事とかどうでも良くなるぐらいだ。

まぁそんなことでどうでも良くなる悩み事なら俺もとっくに解決している。

実はここ5年くらい誰かにストーカーされている気がするのだ。

そう悩み事とはこれだ。

5年もストーカーされてるのならとっくに手を出されていると俺は思う。

誰でもそう思うだろう。しかし、今まで感じたのは視線と気配のみだ。

もしかすると忍者にでも追われてるのだろうか。

いや俺の勘違いという可能性もあるか。

5年もするか?いやしない。この俺がするはずがない。

あぁーダメだ。論点がズレてきたな。とにかく今は寝ることに集中しよう。

俺は気絶したかのように眠りについた。浅くも深い眠りだ。



「おい良樹もうちょいで着くぞ〜」

何だこの優しい声は。まさか天使か!俺は思わず目を見開いた。

しかしそんな淡い期待は儚く散っていった。

「なんだ拓かよ」

やべ。つい心の声が。まぁ男なら仕方ないだろう。

「なんだってなんだよ。こちとら起こしてやったんだぞ!感謝するがいい。」

やっぱ腹立つなコイツ。いや今のは俺が悪いか。すまん拓。心の内で平謝りした。

「キャー拓様素敵〜なんで彼女がいないのかが不思議なぐらい紳士〜」

「お前そんなこと思ってないだろ」

バレてしまった。そんな他愛の無い会話をしているとまもなくで到着するという放送が流れた。定期を片手に体の意識を起こし始めた。

「ほら行くぞ良樹」

「うぃー」

電車を降りるといつも通りの普通の景色だ。

しかし毎日何かが違うなと違和感を感じる。映画とアニメの見すぎか。

急に拓が小走りを始めた。おいおい寝起きの俺を走らせるつもりか?

「おい拓なんで走るんだよ」

「だって!早く行かないと勉強する時間無くなっちゃうじゃん!」

意外と可愛い1面もあるようだ。仕方なく走った。

まもなくして学校に着いた。

拓は職員室に用事があったようなので途中で別れた。

「みんなおはよう〜!」

今日は何故か落ち着かないのでクラスのみんなに挨拶をしてみた。

別に拓がいなくて寂しいわけじゃないぞ。

しかしクラスには静寂が訪れた。なぜだ。まぁいい。

みんな小テストの勉強で俺の存在に気づいてないのだろう。

俺も勉強するか。仕方なく教科書を開き単語の確認だけした。

なんだこれ。全く意味がわかんないぞ。

教科書を読んでいるだけなのに俺の脳はダメージを受けていた。

「え...良樹が教科書読んで勉強してる...」

誰だそんな失礼なことを言う輩は。少し切れたような感じで後ろを振り返った。

なんだ拓かよ。ていうかよく良く考えれば拓しかこんなことを俺に言ってこないことに気づき、自分の追い詰められかたに驚いた。教科書読んだだけだぞ。

「別に俺も教科書ぐらい読むわ。学生なんだから」

「でも絶対なんもわかってないでしょ」

悟られただと。多少は理解したぞ。多少は。

「こんな簡単なことわかんないはずないだろ」

嘘をついた。見栄を張ったのだ。

キーンコーンカーンコーン。タイミング悪くチャイムがなってしまった。

小テストが始まってしまう。

しかし、あんなに教科書が難しいならみんなもわかんないだろ。

俺は変に心を落ち着かせた。

コツコツコツ。誰かが教室に向かってきた。担任だ。

うちの学校は少し変わっていて小テストは全て授業担任がクラス担任に小テストを渡して行うのだ。

「じゃあ今日は言っていた通り小テストするからなぁ〜」

クラスのあちらこちらから阿鼻叫喚の声がした。俺もその1人だ。

「そんなに叫んだって無駄だ。勉強してないのが悪いんだからな」

この悪魔め。

小テストが配られ開始のタイマーの音が鳴った。

おいおい難しすぎるだろ。これ習ってないよな?

しかし、周りからはカリカリとペンが進む音がする。

俺だけがわかっていない孤独感に追い詰められながらも必死に問題を解こうとした。解こうとしただけで実際のところひとつも分からなかった。

家族が死んだかのような絶望感に襲われた。拓は解けていないはずだ。

「なぁ拓小テストどうだった?」

拓は待ってましたと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべた。

「それが完璧にとけましたぜ良樹の旦那ァ」

拓が解けたという事実に増々心が追い詰められた。

「そう。良かったじゃん」

よし。忘れるか。小テストなんてものはなかった。これでいい。

本当にいいのだろうか。いやこんなこと悩んだところでだ。これでいいはず。


キーンコーンカーンコーン。

学校終わりのチャイムがなった。ようやく放課後だ。

今から部活に行く者。友達と遊びに行く者。

様々な過ごし方だ。

今日は見たいアニメがあるから早く帰って見たいな。

思わずスキップをしていた。

「拓、帰ろうぜ」

いくらアニメが見たいからと言って1人で帰るわけは行かない。

くだらない日常でも拓がいないと恐らく何も面白みがないだろう。

「良樹、わりぃ先帰ってて。今日用事あってさ。ごめんな」

「そうか。じゃあまた明日」

珍しいな。拓は放課後はいつも暇している。

学校を後にし、帰路に着いた。

1人で帰るのなんていつぶりだろうか。いつもの景色。

あぁよく見ると綺麗だな。しかしどこか違和感を覚えた。

朝と同じ感覚だ。まぁいつもしてるし。

特に気にせず歩みを進めた。

パシャッ。

パシャ?いやカシャだろうか。確かにカメラの音がした。

誰が何のために?一体何者だ?

俺を撮られたと確定してもいないのに何故か焦っていた。

俺は景色を見渡しているフリをして辺りを見渡した。

人影はない。ていうか俺しかいない。

増々疑念が募っていった。

ストーカーだとしてもなぜ?今まで何もしてこなかったじゃないか。

いやずっと視線と人影は感じていたが。

意図せず歩くスピードが上がっていた。

しかしその後は一切何も無く、無事に家に着いた。

とりあえずアニメを見て忘れよう。

しかし忘れられるはずもない。

風呂も。食事も。家族との会話も。まともに出来なかった。

俺はずっと疑念を抱えたまま眠りについた。

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