謎めいたこと
フードをかぶった少女はシスの剣を両手で持ったナイフで軽くいなしていった。攻防が続く中、少しずつ窓に近づいて行きフードをかぶった少女はガラスのついた窓に飛んでガラスを割りながら逃げていった
「っ…逃げられた!ショウ、トートさんを呼んできてくれ!私はあいつを追ってくる!」
シスはフードのかぶった少女に割られた窓に体を取り出し、少女を追っていった
な…今の少女は何者なんだ?この男は生きているのか?シスはなぜあんなに冷静に…今は考えても意味がない。とりあえずトートさんを呼びに行かなければ
ショウはシスと歩いた道を戻って行ってトートの家に行った
「トートさん!!」
家の扉を思いっきり開けて叫んだ
「おや、ショウくん。忘れ物かい?」
「農家のラウニさんがナイフで刺されてて!速く来てもらえませんか?」
「それは本当かい?」
「はい!」
「分かりました。すぐ行きましょう」
トートは冷静に言った。ショウはなぜこんなに冷静なのかが分からなかった
トートと2人で走っていたらいつの間にかラウニの家についていた。
「これはひどい…」
ナイフで突き立てられていたラウニを見てトートは言った
「これは…死んでますね」
「は!?死んでる?じゃあもう助からないんですか?」
「大丈夫ですよ。ただ死んだだけですよ」
トートはこちらを向いて微笑みながら言った
ショウは完全に動揺していた。トートの言っている意味が分からないからだ
トートは倒れているラウニの横に座って一息ついてから言った
「エクストラヒール…」
手をかざして言った瞬間ラウニの体みるみる回復していき何もなかったように体が回復していた
ショウはこれがスキルだと瞬時に理解した。
だが、それと同時に疑問も浮かんだ。このゲームではプレイヤーが死んだらすぐに近くの街や村に転送するため、蘇生の魔法は使う機会がないのだ
考えている間にラウニの体が動きゆっくりと倒れている状態から体を起こした
「何が起こったんだ?」
「ラウニ。さっきまで死んでいましたよ」
「そうだったのか」
ラウニという男は手で頭を掻きながら話していた。倒れていて、あまり見えなかったけれど、見た目はフラカンと同じくらいの体格だけどお腹が出ていて、髪が少しくるくるしていた。まさに片手にクワを持ってそうな見た目だ
「なぁトート。そこの坊主は誰だ?」
「この方はショウくんと言います。最近ここに来たばっかりらしいですよ」
「ど、どうもショウと申します。体とか大丈夫なんですか?」
「おう、大丈夫だ。俺はラウニ、この村の農家だ。あとそんなにかしこまったしゃべり方しないでくれ…なんだかムズムズする」
そういえばシス以外はみんなに敬語使って少し疲れた感じするな
「分かった、ラウニ何が起こったんだ?」
「そうか、ショウは知らないんだな。たまに殺されるんだよ。あいつらに」
「え?たまに殺される?あいつらに?」
ショウはまたもや混乱していた。
あいつら…つまりあの少女一人ではなく組織ということ…動機は?どのような組織?なぜ人を殺すのか?メンバーは?分からないことが多すぎる
「その人たちはなんでそんなことをしてるんですか?」
「あ?そんなの一つだろ。それは…」
外から足音が聞こえてだんだん大きくなってきた
「おーい。逃げられてしまった…」
ラウニの言葉に被さるようにシスが現れて喋った
「おー、シス。また逃げられたのか?」
「ラウニ!起きたんだね。また逃げられちゃった……あ!紹介するよ。最近来たショウだよ」
「それはさっき私が紹介しましたよ」
トートさんが話に入ってきた
「そうなんですね…」
シスはなぜかしょんぼりしている気がした。きっと逃がしたからしょんぼりしてあるのだろうとショウは理解した
「では、私はここで。そろそろ暗くなるころでしょうし」
トートがそそくさと帰っていった。そしてシスも手を顎に当てて考えている
「よし!ショウ。私たちも帰るか」
「そうだね。暗くなるって言ってたし」
シスが家を思いきり出て帰ろうとして、今日も帰ろうとすると
「おい!ショウ。これ持ってけ」
ラウニから結構大きい箱を渡された。ショウはその箱を少し開けて中身を確認する
「これは…果物か!?ありがとう」
「いいってことよ。記念に持って帰んな」
ショウはラウニに挨拶をした後に先に行っているシスの所まで行って一緒に帰った
「長老。帰りました」
ショウは長老の家に戻った。シスは自分の家があるらしくそこへ帰った。シスに「明日も案内する」としつこかったので明日も案内してもらう予定だ
「どうじゃったこの村は?」
「みんな優しかったですよ」
「それはよかった。部屋にご飯を置いてあるからそれを食ったら寝なさい。どうせシスに明日も案内すると言われたんじゃろ?」
「は、はい」
見透かされてるぞ…とシスに心の中で喋りかけるショウであった
暗くなった。村の人達をみんな寝ている頃
やっと村の探索に行ける…
ショウはウキウキで部屋の窓から出て外へ出た。
外は朝と違って当然暗かった。
月が出できてよかったな…出てなかったら全く見えない
当然街灯も電気が走ってないので、月が出ていなければ暗い
今日歩いた道と反対方向に行くことにした
行ったことない方に行く方が情報が得られそうだと思ったからだ
体感で10分くらい歩いた。前の何かあると気づいた
あれは?森か?でも森の中は暗そうだな…
でもでもここまで来たんだ。行かないでどうするんだよ!
自分の心に決意を固めてずんずんと森へ入るショウであった
少し歩いた。周りは木ばっかりで道もなかった。そして何とも会わなかった、魔物とか…そもそも魔物は存在するのか。常識がやっぱり足りない
少し開けた場所に来た。真ん中に岩が置いてあり、その周りだけ木が生えていない空間へ来た
「ッ…!?」
岩の上に座っている人影が見えた。今は夜遅い為こんな森に人がいるとは考えられない。魔物の可能性も捨てきれないため周りの気に隠れながら様子を見る
あれは…人間の女か?
ふとした瞬間周りの月の光が岩を照らしていて、月の光の塔みたいになっていて幻想的だった
その光りのおかげでようやく顔が見えた。長い黒髪に大きい目、落ち着いた顔立ちでスラッとした体型はっきり言って美少女だった
なんでこんな所、時間に人がいるんだ?しかも女……
今日は考えていた………
「君はここで何をしているんだい?」
「ッ…!?」
岩の上で座っていたはずの女がいつの間にか後ろに居た。ショウは反射で岩の方へ逃げた
全く反応できなかった…長老の時と同じだ。いつの間にか後ろに居た…いつだ…いつ動いた…?
ショウはすぐに刀を出して前に構えた
「我の質問には答えんか…」
女はナイフを取り出してこちらへ投げて、また両手にナイフを持ち突進してきた。
今ならギリ見える
ショウは投げてきたナイフを刀で弾き、女のナイフを刀で受け止めた
【スキル凝視を獲得】
女は少し驚いた顔をした後後ろへ下がった
「な!?」
女がそこにいたはずなのにいなくなっていた
いやいなくなっていたのではなく透明になっていた
くそ!相手が見えない…服も武器も透明になってるのかよ…でもこのレベルの敵なら他のゲームでいくらでも対戦した
ショウは剣を構えて目をつぶり下を向いた
そしてとにかく周りの音を聞いた
ガザ…
「っ!?」
ショウは目をつぶったまま女が振りかぶっていたナイフを刀で受け止めて、刀をはじき返し、ナイフを吹き飛ばした
【スキル傾聴を獲得】
「我の攻撃を2回も…そなたここでは見ない顔だな。何者だ?」
「人に名を聞く時は自分が先に名乗るものじゃないのか?」
ショウと女は今でも動きそうだった。その時女が急に構えるのをやめてため息をついた
「どうした?降参か?」
「なわけなかろう…だがここは行ったん退散だ」
女はまた透明になり姿を消した
「大丈夫か?」
後ろから声が聞こえて来てショウはまた構えたがすぐに構えるのをやめた
「長老…」
後ろからゆっくりと長老が歩いてきた
「夜は寒い。家に戻って寝なさい」
またもや何も聞かずに長老は話した
それからは何事もなかったかのように家に戻り、夜を明かした