目覚め
昼。工房で。
ヴィキャスは認めない。
「お前が俺の作品と認めるわけにはいかない」
このまま。現状を維持する。俺にはどうこう出来る話では無い。
作品が俺に訴える様に見つめてくる。
「何が言いたい? 言いたいことがあるなら言えよ。言えるならの話だが」
ガタがきている椅子に足を組んで座るヴィキャス。
顔に手を当て。観察。
「完成させろだと。無理強いはよしてくれ。俺は俺の創りたいように創る。創りたくないものは創らない」
答えない作品に対して。独り言。
「俺はもう寝る。お前はここに居ろ。絶対に外に出るなよ。……チッ。鍵がオシャカになってやがる」
工房を後にする。
ヴィキャスは自室に帰ってきた。
ペンキで汚れたボロイ借家の屋根裏に。
借家のオーナーは先生。つまりココは先生の家でもある。
室内には先生の作品がずらり。俺の寝る場所なんてココしかないって訳よ。
「なんだ。もう完成させたのか? 存外あっけないものだったな」
「手ぇつけてないよ。気色悪くて扱えたもんじゃねぇ」
「ハハハ」
先生は可愛らしいエプロンを身に着け。両手にボウルとミキサーを持ち笑った。
先生。料理でもしてるんですか。
「じゃあ、なぜ帰ってきた? 飯か? 丁度いい。食え」
「いらん。寝る」
「昼夜逆転を治すいい機会だ。夜起こされる身にもなりたまえ少年」
屋根裏に籠る。
屋根裏は工房と違いスッキリした所だ。
寝床だけがあり、他には何もない。
ヴィキャスは着替えることなく。寝床に付く。
次の日。朝日が出始める頃。
階段が軋む音で。ヴィキャス目を覚ます。
先生? 勘弁してくれ。俺は起きたい時に起きる。そういう人間なんだ。
ヴィキャスは再び寝付く。が、存在が。
気が散る。何の用だ。そう思い。布団から顔を出す。
「おはようございます。あなた」
優しい声で。ささやく。
そこに居たのは。否。在ったのは。昨日の動く女性像だった。
「ぬわぁぁぁああ!」
叫ぶ。目が覚める。
恐怖。喋る。動く。銅像。検索。
「ハハハ」
下から先生の笑い声が聞こえる。
悪い顔をしてそうだ。




