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人間現象「10話完結型」  作者: SEIZAN
1/9

彼女


 スピリチュアル。

 意味は目に見えない世界の事を指す。

 神様や精霊。精神や魂の事を言うらしい。


 そして、その形の無い世界を投影するのが俺の役割。彫刻家だ。


 名前はvie(ヴィ)casse(キャス)。性別は男。歳は19。

 好きな食べ物はチーズ。嫌いな食べ物はトマト、その他大勢。

 偏食で気難しく。少しおっちょこちょい。

 作品にかける情熱は誰よりも。

 女の子にかけるアプローチも誰よりも。

 彫刻は小さい頃から。

 初めはただの粘土遊びから。

 木の枝や葉っぱをぶっ刺したこともアリ(今はしない)。

 自分の世界を投影する事はしない(本人談)

 やりたいように。したいように。創る。

 未だ彼女はいない。

 だからって。

 理想の女性を掘るなんて(先生談)(愉悦)




 彫刻家の朝は遅い。やりたいときに。やる。

 昼を過ぎ、夕方。少年ヴィキャスにとっての朝は12時間程ズレていた。

 冷たい風と月明かりが射し込む工房(アトリエ)。電気は無い。昔、ケーブルでコケて以降、点かなくなった。めんどうくさくて替える気も起きない。

 めんどうくさがりで。片付けが苦手。

 だから工房は滑石などの彫刻用の石が散乱していた。

 先生はこの工房を見ても文句は言わない。

「散らかっているとは思わない。これが君の作品(個性)だ」

 らしい。先生はよく理解してるよ。俺の事。怖いくらいに(いつ見られた?)。

 工房は小さい頃から与えられ、どこに何があるかも目を瞑っても分かる。

 染み付いた感覚だけで彫刻を行う。

 明かりなど必要なかった。

 

 そして、今日も。ヴィキャスは創作に打ち解ける……はずだった。


「俺の独房に何の用だ? 生憎。俺の作品は値が付けられないぜ。一級品だからな」


「……」


「まあ、俺も鬼じゃない。盗みを働くには。何か訳があるんだろう? 聞かせてくれよ。サツが来るまでよぉ」


 話し合い。大切。

 陰に隠れた泥棒に気付いたのは、直感。

 机に置いてあるハンマーを握りしめ。出かたを伺う。

 泥棒は歩を進め。近づいてきた。


「……!」


 それは息を飲み込む光景だった。

 月明かりが。それを照らす。

 着飾った服は白く。整った髪型も白く。艶の無い肌も瞳も白く。

 欠けた腕。ヒビの入った唇。粉塵が積もった鎖骨。

 そして何よりも。ヴィキャスの心を射止める「美」。

 それは、ヴィキャスが作りかけた作品。

 理想の女性像。


「う、動いている⁉ 見つめている⁉ 先生。大変だ。彼女が出来ました!」


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