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あなたの自由を許せない。  作者: ちわみろく
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ラッキーな再会

 宗像久乃むなかたひさのは代議士の娘だ。

 地方とは言え、地元で有名な財産家で会社を経営する夫と結婚したのは、多少、父親の七光が関係しているのかも知れない。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 地元の私立高校を卒業し、都心のお嬢様学校と呼ばれる短大へ進学した後に、今の夫を紹介され、二年ほどの交際の後に結婚した。

 兄が二人いるので、父親の後を継ぐのは彼らに任せる。二人共きっと議員や官僚を目指して都心の大学を卒業し、今は国家公務員として働いていた。

 夫の浩未ひろみはイケメンだし稼いでいるし、言うこと無いくらいに久乃を溺愛してくれていた。仕事が忙しくて余りかまってくれないのが玉に瑕。一男一女に恵まれ、長男が高校に入り、長女が中学に入る頃には余り手もかからなくなっていた。そんな時、偶然にも高校の同級生とばったり出会ったのは、長女の入学準備のために小学校へ出かけていった時の事だった。

 受験させて私立の中学へ入れることも考えていたのだが、長女は小学校時代の友人と離れたくない、という理由でそのまま公立中学へ入学する。長男は母親に言われるまま、素直に中高一貫の私立中学へ通っていた。

「久しぶりですね大滝君。もしかしてお子さんの?」

「そうです。金古かねこさんもですか?」

 高校の同級生は、奥さんの代理で入学準備説明会へ来ているのだという。

 子煩悩なのだなぁと思った。久乃の夫は忙しくてとても平日は休めない。土日や祝日のイベントならば遠足だろうが運動会だろうが、積極的に参加してくれていたけれど。

「懐かしいですね。まさかここで再会するなんて思わなかった。」

「そうですね。でも、俺は年に一回くらいは、地元で同窓会してるんですよ。まあ、親しい仲間とだけなんですけどね。」

「わあ、いいなあ。そう言えばわたし一度も同窓会って行ったことないわ。」

「そうなんだ。よかったら来ますか?中原とか、木内とか来ますよ。」

「嬉しい。行ってもいいの?」

「もちろんです。」

 そんなやり取りの後に、久乃はかつての同級生と連絡先を教えあった。



 有休を取ってまで息子の中学校入学準備会に来るのは面倒で憂鬱だったけれど、子供のためだと思って来てよかった。嫁の優子がどうしてもこの日だけは休みが取れないと言うから、仕方なく来たのだが、思わぬ幸運が舞い込んできたのだ。

 克行は嬉しかった。懐かしかったのもあるし、再会した相手の女性は高校の頃手の届かない高嶺の花のような生徒だった。

 家が財産家らしいこともそうだったし、何よりとても美人で、男子生徒達が互いに牽制しあって中々声をかけられないくらいの人気者だったのだ。綺麗で上品で他の女子のように喧しくなくて優しい。成績も良いし、スタイルもいい。

 あれから二十年も経っているけれど、相変わらず上品で綺麗だった。物腰も柔らかく、ちょっと遠慮がちな感じがまたしおらしくていい。子供がいるということは当然既婚者なのだろうけれど、さぞやハイスペックな男と結婚したのだろうなと思う。克行など足元にも及ばないような、いい男に違いない。

 金古久乃。今は結婚して宗像久乃となったのだ。説明会の後、思わず名簿を見てしまった。

 垢抜けた美しいかつての同級生との再会に、思わず心浮き立っていた。





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