②
ハッと目を覚ます。身体を起こして周囲を確認しながら、体の違和感を確かめる。
と、そこで、違和感が薄いことに違和感を覚える。手で身体を弄ると包帯の感触を感じる。視線を巡らせると、寝袋に包まった三人と、焚き火の番をする男が目に入る。
どうやら、この四人に拾われたらしい。近くの木に立て掛けてあった剣を掴んでひとまず腰に差す。
全身に鞭打ちのような痛みを感じながらも、焚き火の側による。男が気づいて側に置いてあった長剣に手をかけつつ声をかけた。
「お目覚めのようだな。体はどうだ」
「全身が痛いよ…。いやぁ、それにしても助かった…。すまないな、見ず知らずのオジサンに薬使わせちゃって」
「そう言うな、俺たちはアンタが倒れてたところを見つけただけだ。それより、アンタどうしたってあんな所に倒れてたんだ?」
周囲を見渡すが、既に辺りは真っ暗で、自分の来た場所は見えようがなかった。
「んー、僕はね、傭兵なんだよ」
へらりと相合を崩す。無精髭をなぞりながら、深いため息をついた。
「アインハルト側に雇われたんだけど、まー嵌められちゃってね、逃げ延びてきたってわけさ。君達は…冒険者かな」
「…そうか、アインハルトの…。そうだ、俺たちは冒険者で、依頼を終えて帰る所なんだ。アンタは…これからどうするんだ? 失敗したんだったら、戻っても居場所はないだろ」
「そうなんだよねぇ…」
だから、と男に力なく笑いかける。
「ちょっと頼りないけど、戦力として雇ってくれないかい? あぁ、駄賃は気にしないでくれ、一人じゃないってだけでも助かるんだ。なんなら寝ずの番も受け持とう」
「それは…俺一人じゃ決められないな。朝になってみんなに聞いてみよう。それに、アンタもまだ治ったわけじゃない、無茶をしてると、今度は本当に死んじまうぞ」
「ははは、その通りだね。じゃあまた明日、みんなが起きた頃に起こしておくれ」
「あぁ。そうだ、アンタ、名前は?」
立ち上がったところで、声をかけられる。ザンバラを揺らして首だけ回す。
「サンバン、そう呼ばれていたよ」
「…わかった、サンバンだな。お休み、サンバン」
「あぁ、…えーと」
「ロイだ」
「ありがとう、おやすみ、ロイ」