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7万文字超えちゃったので分割投稿です。
一つ一つの長さもまちまちですが、よろしくお願いします。
金属同士がぶつかり合う音がそこかしこから響く。
怒声、悲鳴、鬨の声が混ざり合う。
身につけている鎧だけが辛うじて彼らを区別する。
だが、それもお構いなしに砲弾が飛び交い、敵も味方も関係なく吹き飛ばしていく。
そんな混沌とした最中を、鎧も纏わぬ集団が駆け抜けていく。
「狙うは大将首ィッ!!疾う疾う駆けィ! 足が止まらば良い的ぞ!」
「応!」
集団が一斉にばらけ、隙間を縫うように進む。
「傭兵…!」
「絶対に通すなぁ!」
「くそっ、そこまで落ちぶれたかアインハルトォ!」
突如として現れた介入者により、戦線が崩れる。駆け抜ける傭兵に対処するために陣形が崩れ、そこを突き崩すように雪崩れ込む。
「戦争に正当など不要!」
「そんなくだらないことに縛られているから負けるのだ!」
「落ちぶれるのは貴様らのほうだ!」
そんな声を聞きながら、ばらけた集団の最前線を疾る傭兵が二人。一人は簡易的な胸当てをつけ、二本の剣を、一本は右肩から柄が出る様に斜めにかけ、もう一本は左の脇腹から柄が出ている。目玉が飛び出そうなほどギラついた目、口はへの字に結ばれ、ザンバラを一本に纏めた男。もう一人は身の丈ほどの巨剣を背負い、獅子のように髪を逆立て、鋭い眼光、ニヤついた口元で隣を走る男に声をかける。
「今日ぉの手柄はぁ、俺がもらうぜぇ!!」
「………」
無言のまま目だけを向け、また駆ける。遮る兵士たちを切り抜け、切り分け、蹴散らしながら、また隙間を縫うように進んでいく。
そして本陣が見えてきたところで二人は別の方向に分かれた。
正面で構えていた兵士たちは二手に分かれたことを伝令に伝えさせるが、タイムラグがある分二人の方が早い。
そして二人とも壁がわりに立てられた柵を壊して本陣に入る。
本陣、と言っても、この戦争のために建てられた仮拠点だ。本来の建物よりも綻びも多いため、壊すのは容易い。
縄で括られている重要な支柱などを切り追走する兵士たちの邪魔をしながら、剣を二本携えた男が一番大きな建物に飛び込むと、目に入った光景に唖然とする。
串刺しにされ掲げ挙げられた先程まで隣を走っていた男。
一瞬の逡巡、それから踵を返し違う壁を壊して外に飛び出す。
横から伸びた槍を寸でのところで潜り抜け、走る。ここに辿り着くまでに襲われた兵士の比ではない。その数の多さで、自分たちがここに誘い込まれたのだと予想する。
仕事は失敗だが、命あっての物種。
次々に襲いくる兵士たちを躱しながら戦場から離れる。明らかに進行方向を誘導されているが、この際進めるならどうだっていい。
そして辿り着いたのは、眼下を鬱蒼とした森に囲まれた崖だった。
崖を背に、振り返る。
長槍を構えた兵士たちが今にも突き出さんと穂先を向ける。
「………、」
この高さなら、仮に木に受け止められたとして、枝が体にささり致命傷になりかねない。
だが、このまま槍で刺されれば、確実に死が待っている。
なら、やることは一つ。
トン、と後ろに向けて飛び降りた。瞬間、突き出された槍を剣で弾き飛ばし、落下までの間に鞘に仕舞いつつ、体を丸めて急所を守る。
きゅ、と目を瞑り、身体に衝撃を感じた瞬間、意識が吹っ飛んだ。