表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/68

  ほげほげ病(びょう) ~伝染編~






   ※注意ちゅういです。


   〇このものがたりは、【帰りみち 編】『2.ほげほげびょう』のつづきです。

   〇ショートストーリーです。(四部構成よんぶこうせいです)

   〇『前回ぜんかいのあらすじ』がありません。

   〇【本編ほんぺん】のキャラクターや、ストーリーなどのふんいきを壊す可能かのう性があります。

   〇以上いじょうの点に抵抗ていこうのあるかたは、【もどる】をおすすめします。



   ・・・



   〇登場とうじょうキャラクターです。

   ・メイ・ウォーリック:貴族のおじょうさま。シャツとプリーツスカートの服装。ながい黒髪くろかみ黒目くろめの17歳の魔女まじょ。リリンの主人しゅじん。ある事件でかおにおケガをして、ほっぺにガーゼをっている。

   ・和泉いずみ本編ほんぺん主人公しゅじんこう白髪はくはつに黄色いサングラスの、18才の青年せいねん。黒い法衣ほうえにシャツとスラックスが、旅行中りょこうちゅう衣装いしょう魔術学院まじゅつがくいん教授きょうじゅをやっている魔術師まじゅつし

   ・リリン:メイの使つか















   〇



「ほげほげ(びょう)?」

 地面じめんに正座した(させた)おとこ見下みおろして、メイは訊いた。

「はい……」

 あたまにコブをつくり、顔面(がんめん)をぼッこぼこにされた中年ちゅうねんの男が、あわれを誘う動きでうなずく。

 五十ごじゅう代ほどの太った男だった。町人ちょうにん村人むらびと(この)んで着る、チョッキと(あさ)ズボンの服装に、野暮やぼったい帽子ぼうしせている。

 彼は血のながれるくちを動かした。

じつは。先月せんげつからわたくしどものむら流行(りゅうこう)し出したやまいでして。かかったものはみな、『ほげ』とか『ほげほげ』という語尾(ごび)がついてしまう、おそろしい病気びょうきなんですほげえー」

「ばかばかしい」

 はッとメイは嘆息した。

 和泉(いずみ)も。気の毒だが彼女かのじょに同意だった。白マントの、女子じょし生徒のほうをる。


たいしたことじゃなさそうだけど。うつると嫌だし、よそ行くか」

「そうですわね」ほげー。

「……」

「……」

 和泉いずみは固まった。

 メイも硬直(こうちょく)した。

 ふたりは、確かに聞いた。

 自分のくちを、メイがさえる。

「なあ。ひょっとしてウォーリック。いま――」

「言わないでください」

 ――ほげ。

 気合きあいみこもうとしたものの、無駄むだだった。

 生徒から和泉(いずみ)は視線をそらす。

 ほげ。と彼女かのじょのくちから聞こえた事実を、かったことにするように。

「って。むりだッ。だあはははははは!! おまえ普段あんだけカッコつけてておまえ! ソッコーでほげほげ言ってると――ガあッ!?」

「だまりなさい!」

 ほげー。

 和泉(いずみ)側頭部(そくとうぶ)をメイはトランクで殴打(おうだ)した。たおれた教授きょうじゅの白いあたまを、さらにふんじばる。

「こんなしょおーもないやまい。わたくしの魔術まじゅつ一発いっぱつですわ――」

 語尾(ごび)を止めようと頑張がんばったものの。

「ほ、」

   げー。

 やはり無理むりだった。


 ケガのなおったおとこが、どっこいしょと立ちあがる。井戸広場(いどひろば)で、さっきからなにやら剽軽ひょうきんな動きをしている老人や、若い人たちを手でしめして。

「ちなみに三日みっかほどほっとくと、あのように人目ひとめもはばからず一日中(いちにちじゅう)どじょうすくいをおどりまくるという症状しょうじょうが出てきます」

いますぐなんとかするのです!!」

 ほげえええ!!

 半泣はんなきになってメイは和泉(いずみ)胸倉むなぐらをつかんだ。

(ちょっとてみたいぞ)

 とおもいながらも和泉はメイをたしなめる。

「まあおちつけよ。ええと――」

 女子じょし生徒をわきにやって、説明せつめいをしてくれたおとこのほうになおる。

「あ。申しおくれましたほげー。わたくし、ここ『もげもげ(むら)』の村長そんちょうをやっとります。ハナ・モゲールといいます」

「そうですか」

 いろいろ思うところはあったものの、ながして、和泉も名乗なのった。苗字(みょうじ)だけ。

「で。モゲール村長。先月から流行はやりだしたってことですけど。原因に心あたりとかは……」

 ひげのあごゆびててモゲールはうなった。そこそこ深刻に。

「うーむ。やはり……。あの一件(いっけん)以来でしょうか」


「なにかあったんですか?」

 神妙(しんみょう)つきでうなずく村長そんちょうに、和泉いずみもまた深刻な表情ひょうじょうになる。

 太い人差しゆびを立ててモゲールは。

じつは。やまいのはやり出す前日に、我がむらの子供たちがむらはずれにむおばあさんに意味いみもなく石をぶっつけて、やあいやあいクソばばあ。悔しかったらなんかやり返してみさらせもげっへっへっ。と馬鹿ばかにしたのです。あまつさえ、包丁(ほうちょう)を持ってい駆けてきた彼女かのじょとしあなめた挙句あげく、生き埋めにしてしまったので……。もしかしたら。それが原因かなあと」

(ぎゃく)にそれ以外の理由りゆうがありそうにもいんすけど……」

 ひきつったかおになって和泉(いずみ)は言いかえした。

「ともあれ。その人とはなしてみればなんとかなりそうだ。ウォーリック。オレはさっそく、そのおばあさんのところに行ってみるよ」

「おねがいします。さっきから何度なんど治癒(ちゆ)魔術まじゅつためしているのですが」


 ほげー。

 まぬけな語尾(ごび)はメイから消えなかった。

「まあ。もし病気びょうきがなおらなくても、どじょうすくいの刑になるだけだから気にすんなよ。くくく」

 わりと本気ほんきになって和泉いずみ彼女かのじょになぐさめの言葉ことばをかける。

「ふざけたこと言ってないで。使い魔(リリン)を貸してあげますからさっさとなんとかして来てください――ほげげっ!!」

 ――症状(しょうじょう)順調じゅんちょう悪化あっかしている。

 首に引っかけていた毒ヘビをひっつかみ、メイは和泉いずみおもい切りげつけた。






                         (つづく)











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ