1.ひとだすけやで。
※注意です。
〇このものがたりは、『鉄と真鍮でできた指環《2》 ~ネクロマンサーの秘薬~』の番外編です。
〇ショート・ストーリーです。(でも二部構成です)
〇文章がいいかげんです。
〇本編のほうの、キャラクターやストーリー、ふんいきなどを壊す可能性があります。
〇以上の点について抵抗のあるかたは、【もどる】をおすすめします。
・・・
〇登場キャラクターです。
・和泉:本編の主人公。黒い法衣に、シャツとスラックスをつけている。白髪に、黄色いサングラスの18才の青年。魔術学院で教授をやっている魔術師。
・リリン:魔女メイ・ウォーリックの使い魔。みじかい黒髪に、黄色いサロペットの、12才くらいの女の子。もとはヘビ。
・メイ・ウォーリック:ブラウスとプリーツスカートを着た貴族のおじょうさま。ながい黒髪に黒目の、17才の少女。リリンのあるじ。
~本編を読んでいない人のためのあらすじ~
夏休みも返上で学校で働かされていた人権のない和泉くんは、怖いおっさんからの頼みが断れなくて、とおおーくの調査に追いやられた。そのとき組むことになった貴族のおぜうメイ・ウォーリックと、そこそこケンカしたりしたものの事件は解決。得るものって言ったらメイの好感度がちょっぴりアップしたぞい。ってゆーカンちがいだけの、誰も報われない話だったとさ。
ははっ。
かわいそ。
〇
「なんか、今さ……」
「うん?」
帰りの馬車のなか。草原を歩く四頭の牝馬と、幌を張った大型の客席。
自分とメイとリリン以外にいない客車内で、和泉はヒザをかかえてうなった。
「ものすごく馬鹿にされた気がするんだが……」
「気のせいじゃない?」
「そうかなあ」
「……すー。すー」
和泉の対面の席で、メイ――リリンの主である魔女は横になって眠っていた。
時刻は午前で、お日さまはサンサンと降りそそぎ明るいが、ねむい時には寝る性質なんだろう。
ぐうぐう。眠っている。ぐうぐう。
「にしても退屈だな」
「いーじゃないの。それくらいがちょーどいいよ」
「いやだ」
「は?」
わがままを言う和泉に、メイの横からリリンは聞きかえした。
和泉は立ち上がる。ガラにもなく――熱く。拳を握りしめて。
「せっかくの馬車だぞ!? なんか……こう。悪党に襲われてる貴族のおじょうさまを助けるとか。きゃわゆい(死語)女の子をたすけて気に入られるとかッ。なんかあるだろ!!」
死んだ魚の目になってリリンは和泉を見上げた。
「和泉教授さあ。私が今どんな顔してるかわかる?」
「もんのすごく可哀想なもの見る顔してる」
「うん。わかってるならさ。そうゆうつまんないこと言うのやめようよ。人の感情って、そんな弱みにつけこんで獲得していいもんじゃないし。そもそもリアルな反応として、たすけたところで人間って、礼こそ言っても『じゃっ。』で終わりの生きものだよ」
「願望くらいは持たせてくれよ」
「いやだ」
「は?」
和泉が黄色いサングラスの奥で眼を剥いた。そのとき。
馬車が急停車した。
「助けてー!!!」
と。外から甲高い悲鳴がする。
(つづく)




