48.creature(クリーチャー)
〇前回のあらすじです。
『和泉とウォーリックのまえに、敵の〈使い魔〉たちが現れる』
獣が息を吸いこむ。
犬の巨躯がかたむき、左の頭が黒いブレスを吐く。
エントランスの壁で和泉は身うごきが取れないでいた。全神経が、切れたように言うことをきかない。
黒い霧が視界をおおう。
「災禍を返す、イージスの悲鳴」
ウォーリックの呪文が飛んだ。
発声により惜しみなく硬度を発揮した魔力の盾が和泉をかばう。
毒の息が透明な障壁とぶつかった。
黒い霧が、火花を散らして消滅する。
駆けてきたウォーリックが、うしろ手に和泉に魔法を放つ。
「ほころびを紡ぐ、医神の祝」
あわい光が和泉の全身を包みこむ。
――痺れがほぐれる。止まっていた声が出る。
「……た。助かったよ。……ッ!」
和泉はうめいた。クリーチャーの頭突きをまともにくらった肋が痛む。
ウォーリックは和泉のまえに立ったまま武器を生成する。
魔力によるカバーで、仕様がもはやライフルのそれとなった〈マスケット〉――パーカッション・ロック・ガンを模倣した銃器が出現し、彼女は構える。
「あまり期待しないでください。わたくし回復系はヘタなのです」
「……いや。じゅうぶんだ」
和泉は息を整えた。壁を支えにして立ちあがり、呪文を唱える。
「動乱をあおぐ、アテナの産声」
戦の女神に賛美をたてまつり、和泉は自身の精神を武器に変換する。
鋼のロング・ソードが開いた両手のなかにあらわれる。
敵のすばやさを考えれば、呪文を唱えて放射型の魔術を連発するより、武器を主体にした攻撃のほうが対処に融通がきく。
無発声で魔術の発動が可能になるひばりの技法を使えれば――ウォーリックはそれを習得しているものの――話しはべつだが。
しかし。呪文のない魔術は、圧倒的なちからの差をもつ敵を相手にするのに、大きな欠点もあった。
〇すでに投稿しているエピソードと、内容や呪文が食いちがっている可能性があります。
修正はおこなう予定ですが、時期は決まっていません。




