43.実験室
〇前回のあらすじです。
『ホゴルの研究室で、和泉たちが捕縛アイテムを手にいれる』
壊した壁をくぐって、和泉たちはあけた場所に出た。
広さは大きなリビングほどある。
魔鉱石の灯が、天井を支える柱に煌々と照っている。
作業用の大テーブルが、部屋のまんなかに構えていた。
壁には飾りのように、斧やのこぎりが掛かっている。
「ここは……。実験室だな」
足元に積まれたサンプルに独白して、和泉は進んだ。
薬棚を見あげる。
あかぬけたデザインの硝子瓶に入った粉末が、視界をかすめる。
「これ。あのマーゴットってやつが持ってたのと似てる」
硝子戸――カギが掛かっていたが魔法で解錠した。――を開けて、和泉は粉薬を取った。
遅れて出てきたウォーリックに見せる。
「どう思う。ゾンビパウダーってこいつかな」
ウォーリックは容器を手に取った。側面を確かめる。
「まちがいないですわ」
「根拠は?」
「ラベルがあります……」
多面体の一面をウォーリックは和泉に向けた。
味気のない白いシールに『ゾンビパウダー(取り扱い注意)』と表記してある。
和泉はぐったりした。
気が抜けて、その場に四つん這いになる。
「な……。なんつーわかりやすい……」
「わざわざ警告まで入れてくれますものね」
「なんだってそんなことを……」
「使い魔がまちがえないようにでしょう。いくら見た目は人間でも、彼女は畜生です」
「そう言うなよ。秀でた頭脳を持ってる使い魔だって、いくらでもいるだろ」
ウォーリックは自分の首にかけたヘビに触れた。
「否定はしません」
と和泉に答えつつヘビの頭をなでる。
(……自分の使い魔にはあまいんだな)
魔術師の、ペットに対する溺愛っぷりはめずらしくないのだが、他者のあつかいとの落差に和泉は時々ついていけなくなる。
「なんにせよ。コイツは持って帰るってことでいいんだな?」
「ええ。――鞄がないのが不便ですわね」
和泉はウォーリックから瓶を返してもらった。
「ポーチ……ならあるけど。入るかな」
スナップをあけて、四角いポーチに薬を入れる。
すっぽり。瓶はフィットする。ふたを閉める。
「割らないでくださいね。和泉教授」
「努力するよ」
レザー製の、クッション素材をふくんだポーチをたたいて、和泉は苦笑いをつくった。
――ぎゃははははははは。
声がする。
近い。
ウォーリックが、奥への暗がりに上半身を向ける。
「モルモット?」
「にしては、楽しそうだな」
数秒。
和泉とウォーリックは互いに見つめ合った。
先に和泉が目をそらす。
「いちおう確かめておこう。実験体なら解放して、見張りだったら……」
「おねんねしていただきますか?」
「気はすすまないけどな」
息を吸いこみ気合を入れる。
先頭に立って、和泉は慎重に声のするほうに歩いていった。




