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鉄と真鍮でできた指環 《2》 ~ネクロマンサーの秘薬~  作者: とり
 第4幕 ネクロマンサーの秘薬(ひやく)
37/68

35.480分


   〇前回ぜんかいのあらすじです。

   『よる墓地ぼちで、和泉いずみたちが大量たいりょうのリビングデッドに苦戦する』





 リビングデッドたちは性懲しょうこりもなく蘇生した。

 分解した手やあしが、自然と胴体(どうたい)にくっついていく。

 うようよとはかをおおう(むくろ)(りょう)に、和泉(いずみ)もウォーリックも嫌気(いやけ)がさす。

「このままではラチがあきません」

「ああ……」

 ぼやいたウォーリックに続けて「だいじょうぶか」と問おうとして、和泉はのみこんだ。

 訊けばそのままたおれてしまいそうな。鬼気としたあおさが彼女かのじょの白い(はだ)にはある。

「……教授(きょうじゅ)は、いまから〈(あさ)〉にすることができますか」

「それは『天体』をどうこうできるかってことか?」

 ドーム(じょう)魔力壁(まりょくへき)こうで、ウォーリックはうなずいた。しゃべる体力(たいりょく)もおしいとばかりに。

 まばたきもなく答えを魔女(まじょ)に、和泉は首をよこに振った。

「むりだ。オレたちが宿(やど)めしを食いはじめたのが……。七時頃。仮にいまがはち時だとして……。八時間(はちじかん)(ぶん)、〈月〉と〈太陽たいよう〉を動かすんだぞ」

「『四八〇(よんひゃくはちじゅっ)(ぷん)』ですわ」

おなじだろーがっ!)


 夏場なつばなので日の出ははやい。

 それでも空があかるくなるのは、あさ四時(よじ)……。

 天気がわるければ、陽光ようこうのめぐみを受けるのはもうすこし(あと)になる。

「それから認識がまちがっています。月と太陽たいようを動かすのではなく。ずらすのです」

「どっちでもいいじゃないか」

 言い返したが、ウォーリックはもう相手(あいて)をしなかった。

 ――四八〇(よんひゃくはちじゅっ)分。

魔術(まじゅつ)を展開します」

 表情ひょうじょう青白(あおじろ)さをのこしたまま、ウォーリックは宣言した。

 直感的(ちょっかんてき)に、和泉(いずみ)彼女かのじょの元にはしる。まとわりつこうとする亡者(もうじゃ)を、ぼろぼろの剣で斬りはらう。

教授きょうじゅ。そのまま一分(いっぷん)。わたくしをまもっていてください」

 自分を包む障壁(しょうへき)をウォーリックは消した。

 彼女に打ちかかる敵を、和泉は体当(たいあ)たりではじく。

 魔術(まじゅつ)は――使えなかった。


 あさ(よる)まねくのは、強烈(きょうれつ)集中しゅうちゅう(よう)する【大魔術(だいまじゅつ)】。ほかの魔法(まほう)によるノイズは、できる限り小さいほうがいい。

 和泉(いずみ)の死角を腐肉の戦士が素通すどおりした。

 ガラあきのウォーリックに、棍棒(クラブ)おどりかかる。

 ――が、戦士はころんだ。ほねの見える足首あしくびに、まだらのヘビがきついている。

「リリン!」

 和泉は快哉(かいさい)を叫んだ。

 黄と黒のぶちのへびは、人化のじゅつ十二才(じゅうにさい)ほどの少女(しょうじょ)ける。

 仰臥(ぎょうが)するリビングデッドの上にスニーカーの片足かたあし()き、ごきんっ。とあご(ほね)を踏みく。

「あと五十一秒(ごじゅういちびょう)かぁ」

 ひとごとのように吐露して、リリンはぐるりをまわした。

(あさ)になったらコイツら、おねんねしてくれるのかな?」

「賭けだろ。そこは……」

 確信はなかった。

 つるぎ和泉(いずみ)かまえなおす。

 ――ウォーリックの膨大(ぼうだい)魔力(まりょく)が、星空(ほしぞら)干渉(かんしょう)をはじめる。


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