27.土地柄
〇前回のあらすじです。
『和泉が生徒の行き先を、その使い魔にきく』
まがりくねった、家々のすきまというべき道。
リリンの示した先に、和泉の探す人物はいなかった。
「なあ」
和泉はリリンに言った。
「ウォーリックは、この領地の人たちが不憫で調査に来たのか? ほかの人でもよかったワケだろ」
「う~ん。……そうだよ。『フビン』ってほどじゃあないけど」
土で汚れたお尻をぱっぱと叩いて、リリンが立ちあがる。
「うちの姫さんはね。こういう辛気臭い空気がきらいなんだ」
「きらいったって。土地柄ってことで目をつぶるべきこともあるんじゃないか?」
「死んでも働かされるところとか?」
「なに?」
和泉は訊き返したが、相手は一方的に話を打ち切った。
彼女は道の向こうにあごをしゃくる。
「教授。この先にはね。宮殿があるんだよ」
「きゅうでん?」
すっとんきょうな声を和泉はあげた。
リリンはうなずく。
「ギルベルト・G・ホゴル。この土地の領主の住まいだよ。すんごいでかくて、ぜーたくな体裁なんだ」
ほうけたように和泉は村の向こうをながめた。
青い空の下には色褪せた瓦や木材の屋根。
その外縁には森林が広がり、くだんの建物はおがめない。
「よく知ってるんだな。来たことあるのか?」
「ずいぶんまえに。ちょろっとね」
サロペットのうしろポケットから、リリンは「はい」と突っ込んでいた冊子を差し出した。
和泉は受け取る。観光マップだ。
ポップなイラストと『ようこそホゴル領へ』とキャッチフレーズが入っている。
「なんか。色々と言いたいことがあるんだが」
「がまんして」
言われるがままにこらえて。和泉はパステルカラーの地図を確認した。
へびの少女に断って冊子を借り、宮殿へと道を辿る。




