21.seal(封印)
〇前回のあらすじです。
『主人公が生徒の事でなやむ』
バスルームに行こうとして、ふと和泉は窓を見やった。
「なんだ?」
気配がする。
カーテンを開け、路地を確かめる。
通行人らしき人影が、ちらほらこっちを指差していた。
不気味になって、カーテンを閉める。
(念のため)
万年筆とメモパッドをトランクから取り出した。
〈印〉を記して、部屋の四隅にテープで留める。
(封印は得意じゃないけど)
部屋の中央に立って、呪文を唱える。
「鬼を祓う。硝子の鈴」
〈護符〉を中継して、魔力が引きのばされる。
庇護の能力を、寝室全体に与える。
【裏】の世界において、魔術は呪文のみで発動するのがポピュラーだった。だが。持久性や効果に自信のない場合には、魔法陣や護符で補助をする。
(ただ単に村の人たちが立ち話に興じてるだけとは思うんだけどな。いちおう。あいつにも声かけといたほうがいいかな)
心配ではあったが……。
(勝手に対処してるかな。使い魔もいるし。時間もおそいし……)
夜中に女子を訪うの抵抗が勝り、和泉はほったらかしにした。
ふいに、【学院】に留守番させてきた烏――使い魔のクロが気になる。
いたらいたで「マスター。お茶いれて~」とかわがままを言いそうだが。
(あれでクロには辛抱させてるし。みやげくらいは買ってくか)
それだけを決めて、和泉はバスルームのドアをくぐった。




