表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/68

15.つりばし



   〇前回のあらすじです。

   『敵の魔術師まじゅつしとその使つかがなにかたくらむ』




   〇


 途中(とちゅう)りた(まち)から別の馬車ばしゃって、和泉(いずみ)とウォーリックは旅を続けた。

 三日目(みっかめ)ひるさがり。

 目的の領地(りょうち)からまだいくばくかある停車場(ていしゃじょう)で「ここが終点しゅうてんです」といやられ、のこりの(みち)をふたりはとぼとぼあるいていく。


   〇


「メーイ」

「ウォーリックです」

 相方(あいかた)魔女(まじょ)を、和泉(いずみ)は谷のはしからび止めた。

 赤銅色(あかがねいろ)に暮れる空の下。

 深い谷間(たにま)にかかる(ばし)――【オッコチッタ(ばし)】のまんなかに、くだん女子じょし生徒は立っている。

「あの。和泉教授(いずみきょうじゅ)、」

 (はし)の入りぐち――生木(なまき)のポールにしがみつき、ヒザを笑わせている白いかみ魔術師まじゅつしを、彼女かのじょはあきれたようすでながめていた。

「はやく渡らないと、冗談じょうだんではなく日が暮れてしまうのですが」

「ばかっ……。怖いんだよ。仕方ないだろ」

「だいじょうぶですわ。ほどお粗末そまつな造りはしていないようですから」

 植物(しょくぶつ)のツタで天然(てんねん)補強(ほきょう)がされた太いなわを、ウォーリックはすった。

「ううう……」

 木の板がならび、中央ちゅうおうかってあさくしなった足場(あしば)に、和泉(いずみ)はつまさきをのせる。

 かかかかかか。

 とおとがしそうなほどなさけないおよび腰で、一歩(いっぽ)一歩(いっぽ)。踏み出しめる。

 なんとなく。ウォーリックは彼に訊いた。

「高いところが苦手なのですか?」

「わりと。そうだ」

「……。……」


 思案(しあん)するようにウォーリックはほそいあごに手をてる。

 和泉(いずみ)彼女かのじょの仕草に「どうした」と問う余裕よゆうもない。

 ――かつて和泉は、【迷宮(めいきゅう)】というモンスターの()にしてフロアごとに地形の異なる魔窟(まくつ)に、ひとりで飛び込んだことがある。

 そのさい第七層(だいななそう)溶岩(ようがん)地帯で、火の河にかかる手摺てすりのないはしを渡ったこともあるのだが。

 かつてのいきおいなど、もはや()る影もない。

(あの時のオレ。ほんとに必死だったんだな……)

 一年前(いちねんまえ)の自分を、ちがいになつかしむ。

 (すう)センチもすすまない内に、あしが止まった。

 ぴゅうッ。と突風(とっぷう)が吹いたのだ。

「ゆっ。ゆれるー!」

はやくして下さい。あなたのかばんだって、わたくし持ってあげてるんですから」

「だってさあー……」

「『だって』じゃなく」

 ざあああッ。

 ふたりのはるか下で河がおとをたてて(はし)る。

 水面すいめんからのぞく岩くれ。岸のそこかしこからびるほそい木々。

 (りょう)はらんだきよらかな景色に、それらがものものしく()える。


「あのさあ……。どうしてもここ、あるいて渡らなきゃ駄目だめか?」

「そうですわね。……この辺も『飛行禁止区域(くいき)』ですが、危険がある際は、免除(めんじょ)もききますので」

「じゃあ。飛んで行きたいんだけど」

「だめです」

「なんでだよお~」

 涙目(なみだめ)になってうめく和泉(いずみ)

 ウォーリックははしのロープを心持ちつよくゆすりながら。

「びびっている教授(きょうじゅ)のすがたが不覚にもわたくしの()()にはまったので。だめです」

「飛ぶっ!!」

 上昇(じょうしょう)()ぶ、シルフの唄ッ。

 と呪文(じゅもん)を叫び、和泉は浮遊(ふゆう)魔術(まじゅつ)を展開した。

「!?」

 がかああッ!

 対岸で、閃光が()ぜる。

 熱波ねっぱはしのロープと足場あしばき切った。

 光は魔法(まほう)(はっ)したものだった。

 【魔鉱石(まこうせき)】という特殊とくしゅ宝石(ほうせき)を使ったものか。術師(じゅつし)の使う――魔術まじゅつによるものかは分からない。

 太陽(たいよう)直視(ちょくし)したようなまばゆさを、サングラスの(おく)――魔法まほうの義眼に感じて、和泉はとっさに()を閉じた。


「ウォーリック!」

 たわんだ(はし)と、バランスをくずす魔女(まじょ)が、半分(はんぶん)だけけた和泉いずみ片目(かため)に映る。

 片腕をばすと、少女しょうじょ和泉(いずみ)の手首を掴んだ。

 ふたつのトランクの内、ひとつがちる。

 女主人おんなしゅじんの首から(あし)にすべりりた使つかのヘビが、かばん把手とってをくわえる。

「よくやったわリリン。――でも。爆発(ばくはつ)?」

 ウォーリックがつぶやいた。

 呪文(じゅもん)となえて、和泉は飛翔(ひしょう)魔術(まじゅつ)を高速飛行に切り替える。

 谷底に、つり(ばし)ちていく。

 焦げたにおいと、下方(かほう)からの水音(みずおと)

 それらを感じつつ、ふたりは対岸――ホゴル(りょう)に渡った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ