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第3話 廻り続ける『階段』

ドラマや漫画で見る様な、特殊部隊そのものの様な特異装甲。

その上重火器で武装した相手に、対する僕は丸腰。

だが、確信的にこの身体を巡る細小因子は教えてくれた。

僕の言霊は。能力は。『テセウスの船』は、確実にこの場面を打破するだけの力を持っていると。



現実に「始め」の合図は無かった。



視線が重る刹那。

放たれた弾丸は音を置き去りに僕の眉間へとの距離を数寸に詰める。


音すらを置き去りにする速度の発射から着弾までに干渉する物は余りにも少ない。

直接視覚情報、周囲空間環境への物理的衝撃干渉波。それくらいだろう。


だが、十分だ。

僕の目には今、血ではないなにかが。因子が溢れる程に充血している。


視える。狙いを眉間に寄せる数寸先の弾丸を、確かに捉えることが出来る。


この間合いは『テセウスの船』の効果範囲内だ。



眼前の銃弾を完全に消失。

後、反完全一同軌道に原始規模、ベクトルまでもの精密再構築。

飛んできた弾丸軌跡の真空道に空気抵抗は無い。



音をも超える弾速が更に空気抵抗を捨て去った速度。

弾丸は放たれた銃口へと数倍もの速度での帰還する。




ーーーッパァァァン‼️‼️

逆流した弾丸の衝撃に耐えきれず、赤光と硝煙を吐きながら崩壊する銃。

「...っぅ!!」

肩身で爆発した銃に無傷では済まず、男は呻きを押し殺す。



銃は破壊した。

でも具体的にこの男を倒す術は浮かんでない。

殺すわけにもいかない。



だから、折る。両腕を。完全に無効化する。




「っらあああああああああああああああああ!!!!」

大きく大きく右腕を振りかぶり、怒号と共に男の顔面へと走らせる。


「っっっつ!!!」

呼吸と意識を詰まらせたのは僕の方だった。

男は左手で拳を弾き、滑らせる形で肘を僕のみぞおちへ。



っ!!馬鹿か僕は!?あの距離で一撃で喉元を撃ち抜いたんだ!

CQCくらい使えるに決まってんだろ!!!!!!!


流れる様に右手から俺の体をたたきつける形で拘束される。

腕が軋む。骨と肉が圧迫によって順に裂かれてゆく。

ーーマズいっ!!!

「『テセウスの船』っ!!」


完全に拘束されている僕自身を消滅させ、目前に立った状態での再構築。

もちろん腕の軋みも無く無傷な僕に。

「もちろん傷はなくても、痛かったことに違いはないけどな」

「チっ...」

唾を吐き捨てる男を目前に冷や汗は止まらない。

 


落ち着け。さっきみたいなミスが許されるのはあれが最後だ。

単純な体術で素人の僕がこの男に勝てるわけない。

だからこそ、『テセウスの船』で勝ちに行く。


「っし!!」

左脚のつま先に重心を集中させ、右脚で大振りの蹴りを回す。

素人の僕にも理解できる。こんな蹴り、脚を掴まれてカウンター。

それで終いだ。


予想通り、男は左手で僕の右足を弾く構えへ動いていた。

僕の視線先は相手の足元。

当然、男衝撃に警戒して上半身に注意が集まっていた。

つまり僕の蹴りは完全に読まれている。だけど、それでいい。



「『テセウスの船』!!」

その瞬間、僕の座標を消失。男の目前から背後足元へと再構築。


完全死角からの大振りの蹴りもとい、全力の足払い。

「ぐっっ!ぉぉぉ!!」

バランスを崩し、前方に倒れこむ。

畳みかける様に、背面から両腕を拘束し肩甲骨に男の肘を運ぶ。


このまま腕を...!!

「折るっ!!!」

人の腕を折るのは意外と力がいる。

ミシミシと歪む音を上げる骨の音と手に伝わる触感は不快感以外を運ばなかかった。

「っおおおおおおおおお!!!!!!!」

「あ"あ"あ"あ"あああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

血目を見開きながら男は断末魔を挙げる。



折らねば、こっちが殺されるんだ。



確実に骨を砕く確信がある最後の一押し



それを押す寸前



「・・・『ペンローズの階段』、囲え。」


「なっ!?」

その瞬間。

僕は半透明な立方体に囲まれていた。




「・・・腕の関節を砕かれる痛覚に精神は耐えることはできない。気絶するのは当たり前だ。警備隊一名及び民間人1名の負傷か。下衆め。」

『ペンローズの階段』と言い放ったその声の主は明らかな軽蔑視を僕に向け、部屋の入り口に寄りかかっていた。


男の語った通り、僕の喉元に弾丸をぶち込んだ男はぐったりとした様子で立方体の前に倒れこんでいる。


この状況をなにか誤解をされてるな。まるで僕が能力で暴れたみたいな。

「この娘はむしろ僕が守ってたし、腕を折らなきゃ僕が殺されてた。というかたぶん一回殺された。」

「・・・存在自体が犯罪の違法能力者が。お前の行動は正義じゃない。正義じゃない奴の言葉など戯言に過ぎない。」


男は小さく溜息を洩らすと話すことすら嫌悪感を隠さず口を開いた。

「・・・だが仕事だ。名乗る。特務警察言霊管轄隊、阿賀野だ。大人しく投降しろ。」

そう名乗る阿賀野の光薄い三白眼は鋭く、淀んだ瞳には確実に殺意が籠められていた。


特務警察...?あまりにも警察にしては感じる雰囲気は話す空気じゃないんだけど。

まるで警察官じゃない。処刑人だ。


「正義の警察さんは、投降したら僕をどうする訳?」

僕はこの阿賀野という男に心の底からの警戒を抱いていた。

言葉には言い表せない、深い摩耗感が有る。


「・・・無論、殺す。殺さなければ正義じゃない。違法契約刻者は存在してはいけない。特務警察の、正義の意思だ。」

ほぅら、やっぱり。嫌な予感がした。

「事情徴収も無しに殺すって、どこが正義なんだよ」



睨み合いの時間は続く。


違法契約は多分言霊の、『テセウスの船』の事だろう。


そしてこの立方体といい、さっき言ってた『ペンローズの階段』...

たぶん、阿賀野は特務警察言霊管轄隊と名乗っていたし、阿賀野の言霊の能力なのだろう。


『ペンローズの階段』って確かよく見るトリックアートみたいなのだよな。無限に登る階段とか。



ーーどうにしても、まずこの立方体をどうにかしないと。


そっと僕を覆う立方体の右壁に、近場の小石を投げてみる。

すると小石は壁に呑まれ消失し


僕の左手に当り、落ていた。


ー!?


驚きを殺し切れない僕に阿賀野の口端は緩み、愉悦。と言わんばかりに目が細まる。


最悪の状況かもしれない。もし僕の推測が当たっていたら。当たってしまっていたら。

『ペンローズの階段』がその名前に完全に由来する能力だったとしたら。




このループする立方体に、完全に閉じ込められたことになる。




既に僕は、詰んでいる事になる。

閲覧いただきありがとうございます。


作者の柚原 透です。




ページ下部分にあるポイント評価をササっと、評価を着けて頂くとと幸いです!!




好評でなく、アドバイス等でももちろん大歓迎です!


評価していただけると本当に幸いです!




皆様から頂いた声を励みに、頑張っていきたいと思います!




この時間のお相手は、柚原 透でした。




作者Twitter @yuzuhara_yuki

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