第1話 きっと頭が弱すぎる
「五泉ってさ、彼女とかできたことある?」
放課後、教室でクラスメイトの女子に不意に投げかけられたこの言葉
少し肌寒くなったきた歩き慣れた下校路で、僕の頭にはずっとこの言葉が反射していた。
彼女との関係は特になかったし、話しかけられたことに驚いたから。
僕、五泉 蓮は正直言って死ぬほど恋愛に興味がない。
幼いころから漫画、アニメ、映画、ラノベetc...
いろんなもので触れてきたが、どうしても恋愛感情だけは理解ができない。
第一、一人の人間と関係を持つことで得られることって限りなく少なくないか?
代わりに付く束縛とかほんとデバフでしかない。
性格が好きとか、得られるものがあるとか。そのあたりはわからなくもない。
少なからず自身にメリットがあるからだ。
今となりで話してる悪友のように見た目で相手を選ぶタイプは本当に理解不能だ。
デメリットしかないだろ。ただ隣に人が居続けて、束縛されるだけなんて。
彼女もとい気軽に話せる異性が欲しくないわけじゃない。
基本的に深くかかわる友達が同性ばかりの僕にとってそれはきっと新鮮なものだろうから
ただ、映画ラノベetcみたいな純愛とか正直存在しないと思ってる。
つまり、一目惚れとかそういう恋。
大体いい感じに出会っていい感じに付き合ってって感じだろ現実。
理解できないんじゃなくて、そんなもの存在しないって言われたらそこまでだけど。
その場合、そんなものがあると信じてる僕のほうが子供みたいだ。
あ、先にも言ったが決して彼女持ちに嫉妬してるとかそういうわけじゃない。
モテないとか、違うから、ちゃんとバレンタインにはちゃんと家族含めチョコ貰ってたし。
別にほんとにモテないからとか、さっきまともに話したことないクラスメイトの女子に彼女出来たことないこと馬鹿にされたからって引きずってるわけでもない
マジで、ほんとに、全然関係ないんです。
「...い。おい!蓮!?聞いてるか!?」
「あ、悪い。聞いてなかった。」
悪い癖だ。どうやら僕は自己整理に更けるあまり悪友の戯言を空聞きしていたらしい。
「悪い、なんだっけ?茹でたブロッコリーの話であってるか?」
「違ぇよ!!なんで俺には彼女ができないのかって話だよ!!」
あぁそうだった。悪友の恋愛事情とかあまりにも興味なさ過ぎて忘てた。
「とりあえず、茎が柔らかくなるまでしっかり茹でたらいいんじゃない?」
「お前ひょっとして俺のことブロッコリーの妖精か何かだと思ってる?」
しまった。話題に興味がなさ過ぎて僕の中でブロッコリーが勝ってしまった。
「少しはまじめに俺の相談に乗ってくれよ...」
おっと、ふざけすぎたか。
まずホモ・サピエンスは諦めろと伝えようと思ったが口を塞ぐとしよう。
仕方ない、悪友のためだ。恋愛には微塵も興味がない僕だが、僕なりに送れるアドバイスを送ろう。
「まぁ、確かにお前は相手からすると食らいつきにくい奴かもしれない。それでも、たっぷりとマヨネーズをかけることでわかったわかった落ち着けとりあえずその僕に振り上げた腕を下ろせ」
まぁ僕はこいつに彼女ができたら脅迫は良くないと諭すが。
「これはお前のためでもあるんだ。お前だっていつかは一目惚れくらいするかもしれないだろ?」
「あんなのフィクションだろ」
呆れた。あんなの現実で起こすやつがいたらどうしようもなく頭が弱すぎるだろ。
T字路に差し掛かり、僕が溜息交じりに返事を投げた時
おそらく僕の人生の中で、最も遅い1秒だった。
目の前の道角から、少女が飛び出した。
少しだけ年相応な華奢な恰好をした彼女の全力疾走。
柔らかみを感じるショートな茶色の髪は、風を受け自然に耳へとかきあげられていた。
どこまでも透き通るような湖を閉じ込めたかのような、瑠璃がかった彼女の瞳は一瞬、ほんの一瞬だけ僕の瞳を見つめ。
何かを訴えかける様な、大人しくて荒々しいその気迫を連れて彼女再び前を向いた。
呼吸すら忘れた。時間が止まったような感覚。彼女以外すべてが見えなくなり、その刹那に閉じ込められた感覚。
彼女の瞳に吸い込まれる様な、鋭くて鈍い衝動的な感覚。
柔らかい光に当てられた様な。暖かい春風に顔をさらわれた様な。そんな感覚。
思考が纏まる前に、体は動いていた。
悪友の声も届かず、僕の体は駆けていた。名前も分からない彼女へ、ただ一心に。
周りからしたら僕はきっと不審者だろう。いきなり少女を追いかけ出したんだから。
それでもまっすぐに、躊躇は無かった。視界の端で次の角へと曲がって行く彼女に導かれる様に。
息切れる自身の肺と悲鳴を上げる脚と一緒に、初めて恋愛感情という物の片鱗を体感し理解できた気がした。
一目惚れはフィクションでもなく、そして僕はどうしようもなく頭が弱すぎるようだ。
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作者Twitter @yuzuhara_yuki