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序章

 

「これが、始まりなんだね」


 少年が馬車から外を見て呟く


「ああ、主人(マスター)、何処に向かうのも自由だ、世界には色んな景色がある……この世に一本しかない大樹『ユグドラシル』、龍族が住む『龍の里』、天に存在する島『アマテリース』」

「それ、全部神話だよね? 本当に有るの?」

「それを確かめるのが、冒険の醍醐味では?」


 奴隷の首輪を付けたオークの男が少年に微笑む


「うん、そうだね! 改めてよろしくね! オーさん!!」


 少年は微笑んでオークと親しそうに握手をするのだった



 ーーー半年前ーーー


「ぐぅ! いっ!」

「てめえ生意気なんだよ!」


 放課後、中学校の教室で、1人の少年が別の少年に暴力を振るっていた

 他の生徒は帰ったのか、2人しか居ない


「生意気って……僕は君に何もしてないけど?」


 少年は近くに有った机に手を置いて立ち上がる


「その見下した眼が生意気なんだよ!!」


 金髪の少年が蹴りを放つが、少年は咄嗟に退いて避けた


「おらっ!」

「ぐっ!!」


 しかし、金髪の少年は持っていたカバンを投げる

 頭にカバンが当たった少年は怯むと、金髪の少年が少年の腹部に蹴りを入れた


「ゴホッ!」


 少年は尻餅をつく

 金髪の少年が少年に近付く


 その時、教室の扉が開く


「あ、あんたまた!!」


 そこには1人の女生徒が居た

 女生徒は少年に駆け寄る


「大丈夫!? (つかさ)!」

「だ、大丈夫だよ、黒川(くろかわ)さん……」


 司と呼ばれた少年は、黒川と呼ばれた少女に微笑みながら

 彼女の手を借りて立ち上がる


西山(にしやま)! いい加減にしなよ! これ以上司に何かするなら……許さないから!」


 西山と呼ばれた金髪の少年は不愉快そうだ


「うるせえ! そいつを見てるとイライラするんだよ!」


 西山は司が気に入らないから暴力を振るう

 理不尽である

 実際に何度か問題になり、反省文や親の呼び出し等の罰を受けているが

 西山は全く懲りてはいなかった


「……」


 司はもう嫌だなぁ、等と思いながら、どうやって現状を打破するか悩んでいた



 その時だ……


『招かれよ……招かれよ!!』


「!?」


 聞き覚えの無い声が聞こえてきた

 司は周りを見渡す

 西山と黒川も聞こえたのか、廊下や外に視線を移した


「んだよ! 誰か居んのか!?」


 西山は、近くに有った机を蹴飛ばしながら威嚇する

 反応は無い


 しかし……


『来たれ!! 異界の者よ!!』


 その声が聞こえた瞬間、3人は見覚えの無い場所に立っていた


「!?」


 司はビックリして思考停止する


「えっ? えっ!?」


 黒川は周りを見渡してパニックになる


「んだてめえら!!」


 西山は周りに立っている、鎧を来た人間に威嚇する


「おお! 良くぞ参られた!」


 混乱する3人に偉そうな服を着た

 見るからに王様っという雰囲気の老人が声をかけた


「んだジジイてめえ!!」


 西山が威嚇する

 周りの人間が老人と西山の間に入る


退()けやてめえら!!」


 西山が暴れだす


「ちょ、西山君! 少し落ちついぶぇ!?」


 思考停止状態から復帰した司が西山を止めようとする

 当たり前である、周りに居るのは見ず知らずの大人の集団

 それが武装しているのだ、暴れるのは危険だ

 そのため、西山を止めようとしたが……司は西山に思いっきり殴られてぶっ飛んでしまった


「ちょ!? うわだ!!」


 司はぶっ飛びながら異常を察した

 今まで、西山に暴力を振るわれた事は多かった

 しかし、それでも大体尻餅をつく程度だ

 それが、思いっきり吹っ飛んだのだ

 驚きながら飛んで行く司は、皆から少し離れたところに落ちた


「いつつ……」


 司は腰を擦りながら起き上がる

 そして、離れた所で暴れてる西山と、それを止めようとしている大人達を見る


「あれは、時間がかかりそうだな……黒川さんは……」


 司は黒川を見る、黒川は新官の様な女性と話をしていた

 どうやら新官が黒川を落ち着かせようとしているようだ


「黒川さんもパニックになってるみたいだ……まあ、仕方ないよね……僕だってまだ混乱してるし……」


 司はそう呟きながら、目の前にあった地面に刺さっている剣を掴んで立ち上がろうとする


 ズボッ!


「っと!? あ、抜けちゃった……」


 地面に刺さっていた剣が抜けた……

 どうしようと、司は周りを見渡すが、皆、西山を止めるのに忙しく、誰も司を見てなかった


「……よし、戻しとこ、何か封印してるとかあるかもだし」


 触らぬ神に祟りなし

 司はそう判断して、剣を戻す


「ちょっとぐらついてるけど……大丈夫だよね? バレたら謝ろう……」


 そう呟いて、司は皆の所に戻るのだった


 ・・・・・・・・


 数分後、漸く落ち着いた西山

 司は黒川と軽く話して落ち着かせた

 3人が落ち着いたのを確認して老人が話を始める



「先ずは、いきなりの召喚で混乱させて、申し訳なかった」


 老人は王冠を外して、頭を下げる


「ジジイ! てめえ誰だ!!」


 西山が怒鳴る


 周りの大人の一部が『無礼な!』等と口を開く

 それを老人が手を挙げて、黙らせる


「そうじゃの、先ずは自己紹介からかの、我輩はアムリタ、『アムリタ・イスターク』じゃ……(みな)()る……ここ、イスターク王国の国王をしておる」


 司はそれを聞いて、やっぱり王様なんだ、と思った


「次に、君達の名を聞かせて貰えぬかな?」


 老人……イスターク王がそう言って司を見る


「あ、えっと……司……天城(あましろ)(つかさ)です」

「アマシロ殿だね?」

「あ、司が名前です」

「では、ツカサ殿だね」


 イスターク王は微笑む


 次に黒川を見る


「く、黒川(くろかわ)優姫(ゆうき)です……」

「ユウキ殿だね」


 そして次は西山を見る


「あ? 何ガンくれてんだよ!!」

「君の名前を聞かせてくれんかの?」

「てめえに教える名前はねえ!!」

「うーむ……それでは何と呼べばいいのかわからぬぞ?」


 イスターク王が困っていると


「西山! ちゃんと答えなよ!」


 黒川……優姫が西山に言う


「んなめんどくせえ事するかよ!」


 怒鳴りかえす西山

 仕方がないと司が口を開く


「彼は西山……西山(にしやま)……えっと、確か……帝って書いて『カイザー』だったよね?」

「えっ? 西山ってカイザーって名前だったの?」

「文句あんのかよ?」

「では、カイザー殿と」

「名前で呼ぶんじゃねえ!!」

「では、ニシヤマ殿と呼ばせて貰おうかの」


 コホンと咳払いをするイスターク王


「では、君達を召喚した理由を説明させて貰おうかの」


 そう言うとイスターク王は説明を始める


 この世界『レギオン』は様々な種族が存在する世界

 ある時、魔族の国が急に覇を唱え始め、争いを始めた

 魔族以外の国は必死に魔族を止めようと様々な手で交渉したが

 魔族は聞く耳を持たず、このままでは世界が魔族に蹂躙されると考えた

 その為、様々な対抗手段を用いたが、どれもこれも破られた

 結果、最終手段である、勇者召喚に頼らざるをえなくなってしまった



「そして、喚ばれたのが君達ということじゃ」


 それを聞いて

 司は『切羽詰まってる状況なんだなぁ』と思い

 優姫は『という事は、戦わないといけないって事?』と思い

 西山は話をあまり理解できずに『勇者』にだけ反応していた


「我輩は勇者とその助けになる者を召喚した、そして喚ばれたのは君達3人……君達の中に勇者殿が居るはずなのじゃが……」

「確かめる方法があるんですか?」


 司が聞く


「うむ! 良くぞ聞いてくれた! あそこを見てくれ」


 イスターク王が指す方向を見る

 そこには剣が刺さっていた

 さっき司が抜いてしまった剣だ


「あれは勇者にしか抜けない剣じゃ、剣を抜けた者こそ勇者である!」


 そう言うと、イスターク王は司の近くに歩み寄る


「ツカサ殿、試してみてくれぬか?」

「わ、わかりました」


 この時、司は思った

 さっき思いっきり引き抜けたし……僕が勇者って事なの!? っと


 司は剣の側に行こうと歩き出した


 グイッ!


「うわっと!?」


 すると、西山が司を引っ張り倒した


「てめえみてえな雑魚が勇者な訳ねえだろ! 俺に決まってんだろうが!!」


 そう言って西山は剣の側に駆け寄り


「ふん!!」


 剣を引っ張る

 そして……


「ぬぉぉぉぉ!! おら!」


 西山が剣を引き抜いた


「っと! 重てえな!?」


「なんと、ニシヤマ殿が勇者とは……」


 イスターク王を始めとしてざわつく者達


「嘘、西山が? この世界終わったんじゃない?」


 優姫が呟く


「西山君でも抜けたんだ……」


 司はそう呟く

 この時、司は知らなかった

 西山に剣が抜けたのは、さっき司が1度引き抜いたからだと

 西山は剣を重いと言ったが、勇者なら剣から重みを感じることは無いと

 つまり、西山が勇者だと言うのは、完全に勘違いなのだと


 しかし、誰もそれを勘違いだと思わなかった

 司はそんな事情は知らないし

 イスターク王達も、司が引き抜いた所を見てなかったのである


 この結果が、世界が平和になるのを数年遅れされる事になり

 多くの犠牲が出てしまう結果になるのだった





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