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春夏秋冬-season-  作者: 森の家くま
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-二つのソプラノ-

音楽の授業の後

柊木の言った言葉が気になり授業に集中できない


そもそも彼女はなぜこの時期に転校なんてしてきたんだ?


わからない事が多すぎる…


まだほとんど会話すらしてないんだ彼女に対しての情報が…


『おい、兵藤夏!俺の授業は退屈か?なんならグランド10周くらい走ってくるか?』


『足りねぇ…』


へ?あれ?俺今なんか言われたか?…


『ほぅ…この俺様の授業が退屈でグランド10周くらい走っても足りないか…』


あ、え、いや、これは違くて…心の声はこの悪魔の形相の先生にはどうやら届きそうにない



『なっちゃん音楽の授業の後からずっと変だったけど、どうしちゃったの?』


『夏が変なのはいつものことよ秋ちゃん!どうせ小鳥ちゃんに声かけてもらって浮かれてたのよ、このエロ夏!』


『誰がエロ夏だ!まぁ確かに万年Aカップに声かけられるよりは浮かれてたかもな!』


『あんた、また言ったわね!いい加減そろそろ本当に訴えるわよ!』


『事実を述べて裁かれるなら悔いはありませーん!』


『このー!あんた今日こそ本当にぬっころすわ!』


俺と春乃のやり取りを苦笑いしながら見ていた秋風がふと立ち止まる


『ねぇ…なっちゃん、はるちゃん…あれって柊木さんじゃない?』


秋風が指差した先には確かに柊木の姿が見える

どうやら1人のようだが周りをキョロキョロしながらスマホとにらめっこしている


『小鳥ちゃーん!どうかしたの?』


お節介焼きの春乃の性格じゃこうなるよなと思いながら柊木のもとへ歩き出す


『みなさん、どうしてこちらに?』


『私達家がこの辺なのよ!』


『そうでしたか、私は知人のお店を探していたのですが、私はどうやらこの機械とは仲良くなれないようで…』


なるほど、知人のお店を探してスマホを頼りにここまできたけど迷子になったわけか

案外おっちょこちょいさんか?


『あぁ、このサイトの地図相当古いわねーこれじゃ夏なら隣町くらいまで行っちゃってるわ!』


こいつは俺をバカにしないと会話できんのか…


『で、なんて店探してたんだ?』


『カノンというお店なのですが…』


『カノンってあのライブハウスのカノンか?』


『はい、本日そちらで友人のライブがあるもので…』


友人というがどうも暗いトーンだな

まぁすぐ近くだし案内してやるか


『俺と秋風の家の近くだから俺らで送ってあげるよ』


『感謝いたします、兵藤くん』


しばらく歩いて目当てのカノンの看板が見えた瞬間柊木の歩みがとまる


『兵藤くん、秋風くん、ここまでありがとうございます、ここからは私だけで大丈夫ですので…』


なんとも無理をしてますという表情だ

カノンの前には入場待ちのお客が列を作っている

店の前にあるボードに貼られているポップを覗き込む


シェリアというアーティストの名前と写真が貼られている


しかもワンマンライブか

これだけの客を1人で呼べるってよほど有名なのか?


『なぁ柊木、友人ってこの人のサポートか何かか?』



『いえ、私の会いたかった友人はシェリアです…

彼女は、私と過去にデュオを組んでいた方です…』


待て待て思考が追いつかない…


柊木とシェリアがデュオを組んでた?

これだけ人を集められる人物と?


『なぁ柊木…君って一体なにものなんだ?』


『私達は海外を中心に活動していたソプラノデュオだったんです…それも去年までですが…』


『差し支えなければ話を聞かせてくれないか?』


『わかりました、ライブの後でよろしければ…』


募る話もあるだろうと気を利かせ秋風と俺は自宅でライブの終わるのを待つことにして一旦わかれた


1時間過ぎたくらいにスマホが鳴る

柊木からのメッセージだ

先程の件お話いたしますとのメッセージだった


秋風と2人で急いで待ち合わせの場所に向かうと柊木がすでに到着していた


『悪い、遅くなって』


柊木が小さく首を振る


『問題ありません、こちらこそお待たせしてしまいました…』


『それで、柊木とシェリアの関係が元パートナーってのはわかったんだが…』


『私達2人は養子としてとある音楽家の家に引き取られた義姉妹なんです…』


『それって…小鳥ちゃんとシェリアって人は…』


『はい、孤児院の出身という事ですね…』


柊木の両親は有名なオペラ歌手だったが海外公演で出向いた会場が火事になり柊木が4歳の時に亡くなったそうだ


両親が亡くなった為に孤児院に引き取られた先でシェリアと出会った


シェリアの両親は子供に愛情を注げなく彼女を孤児院の前に置き去りにして失踪したと聞かされたらしい


同い年の2人はすぐに打ち解け毎日なにをするのも一緒だった


歌を歌うのが大好きなシェリアに喜んで欲しくて独学でハモリの練習などをして毎日歌を歌って過ごしていた


そんなある日柊木の両親に世話になったという音楽家が柊木を引き取りたいと孤児院を訪ねてきた


『小鳥ちゃん、おじさんは小鳥ちゃんのパパとママに凄く感謝をしていてね、その恩返しをする前に2人は旅だってしまってとても悔しかったんだ、でもそんな時、小鳥ちゃんが孤児院に引き取られたと聞いたもんで慌てて探し回ったんだけど8年もかかってしまった…すまない…これからは私がパパとママのかわりに君を立派に成長させるから、ぜひ我が家に来てくれないかい?』


『シェリアと離れ離れは嫌っ…』


『シェリアっていうのはここのお友達かい?』


『そう、シェリアと歌を歌って一緒に遊べるだけで私は十分幸せだから別々になるのは絶対に嫌…』


『わかった…それならシェリアもうちに来てもらおう!』


『本当?シェリアも一緒でいいの?』


『あぁ、もちろん、君が望むならなんでもしよう』


そうして2人は養子として音楽家の家に招かれた


その2年後2人はとある投稿サイトに2人で歌った曲を投稿したところアクセスが集中してサーバーがダウンするほどの再生回数を記録する


そこからはトントン拍子にデビューまで話が進む

しかし、去年の終わり頃シェリアが急にデュオの解消を独自で宣言した


理由があるのではと思いシェリアと話をしようとするも門前払いをうけたという


1人取り残された柊木は歌う事が出来なくなってしまった


『これが私のこれまでの経緯です…』


なるほど、それでシェリアのライブを聞きつけライブに足を運んで話をしたかったわけだ


『で、シェリアと話は出来たのか?』


『はい、ただ…未だに話の内容が飲み込めなくて混乱しています…すみません…』


『仕方ないさ、少し落ち着く時間が必要だろうしな、時間も遅いし駅まで送るよ』


柊木を駅まで送りゆっくりと家路に着く


その間秋風と俺は会話することすら出来なかった…

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