準備をしましょう
「さて、これでバロワン侯爵一家の容疑はほぼ確定です。行いには報いを、罪には罰を。彼等にかけるべき慈悲などないと思うのですが、いかがでしょう?」
「「異議なし」」
レイモンド様の言葉に、即答するお父様とお兄様。茶化した雰囲気を出してはいたものの、何だかんだで二人も相当お怒りのようだ。
当事者であるはずの私はというと、戦う姿をレイモンド様に見られたショックが大きすぎて、イマイチ怒りの感情は湧かない。自力で撃退してしまったので実害がなかったというのも、大きな要因であるが。
いやしかし、そもそもの元凶は彼らである。私を襲うなんて依頼がなければ、レイモンド様にあのような姿を見せることもなかったのだ。
「私も異論はございませんわ。」
「お二人はいかがです?」
レイモンド様に話を振られて驚いた様子のベンとライラ。
「実害はなかったとはいえ、あなた方も賊と交戦したのでしょう。被害者の一人として、あるいは仕える家の令嬢を襲われた身内として、この話し合いにも参加していただきたいのです。どうぞ、率直な意見をお聞かせください。」
確かに二人は事件の当事者であり参考人でもあるのだが、使用人という立場上黙っていたのだ。まさか公爵から直接話を振られるとは、思ってもみなかったのだろう。お父様に目配せして、発言の許可を得たらしいベンが先に話し始める。
「ヴィレット公爵様、私共に敬語など不要でございます。僭越ながら、意見を申し上げます。私は、実害はなかったとはいえ、男を雇って卑劣な真似をしようとした輩を許すつもりは微塵もございません。」
「わ、私もです。お嬢様を傷つけようと画策した罪は許せません。侯爵のご子息とご令嬢は特に、です。」
ご子息のマティアス氏は私に対して、その…邪な感情を持っていたようだし、ご令嬢のナターシャ…様は公爵夫人の座を奪おうと目論んでいた。なるほど、ライラが憤慨するわけだ。
「よくわかりました。ちなみにこの口調は癖のようなものなので、お気になさらず。では、今後の具体的な動きですが…あまり時間はかけられません。」
「依頼の失敗を侯爵一家に悟られてしまっては逃げられる、と?」
「ええ。西の2番地区に争った形跡はあった、しかし依頼を受けたドロックからの連絡はない。この状況では、依頼が失敗したと考えるのが妥当でしょう。」
やはりそうか。
「しかし、侯爵一家は気位が高い上に贅沢好きで有名です。着の身着のまま飛び出すとは考えにくいでしょう。」
お兄様の言葉に、妙に納得してしまう。確かに、あの家の人たちはいつ見てもゴテゴテとした煌びやかな衣装だったっけ。
「そうだね。持てる財産をまとめて逃げるとすると…早くとも二日後。」
二日!?犯罪の嫌疑がかかっていると自覚して逃げるのに、荷造りに二日も?
贅沢好きというのは随分と厄介な病のようだ。
「二日ですか。では、こちらもそれに備えて準備をしましょう。」
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