パートナー?
私が書類を差し出すと、こちらをじっと見ていたヴィレット公爵が視線を書類に落とし、受け取って内容に目を走らせる。
「ああ、本に挟まっていたのですね。どこを探しても見つからなくて困っていたのですよ。わざわざ届けていただき、ありがとうございます。」
よかった。要らない書類だったらどうしようかと不安に思っていたのだが、どうやら探していた書類のようだ。
「お役に立てて何よりですわ。トルマ国との国交はヴィレット公爵の主導ですの?」
「ええ。……ですが、なぜ貴女がそのことを?」
しまった。書類のトルマ語が目に入ったので、つい言葉が口をついて出てしまった。国政のあれこれなど、司書であろうといち令嬢が知っているようなことではない。
公爵の鋭い視線が突き刺さるのを感じる。変に取り繕って言い逃れするよりも、正直に言ってしまおう。
「も、申し訳ございません。内容は全く読んでいないのですが、ついトルマ語が目に入ってしまい…」
「いえ、別に機密情報というわけではないので、それは気にせずとも構いません。それよりも、貴女はトルマ語が読めるのですね?」
慌てて謝罪したものの、機密情報だとかではなかったようでほっとした。それよりも、公爵の関心は別の所に向いているようだ。
「ええ、読めますわ。アメスト王国ではあまり馴染みのない言語ですけれど、最近では王立図書館にもトルマ語で書かれた本が寄贈されていますの。ぜひ一度、ご担当の方にお礼を申し上げたいと思っておりました。司書として、いち読書好きとして、感謝申し上げます。」
「そうでしたか、お役に立てたようで何よりです。ところで、貴女はトルマ語を読むだけでなく、書いたり話したりも可能でしょうか?」
なぜそんなことを聞くのだろう?そんなにトルマ語を読める人間が珍し…珍しいか。時折、お父様から翻訳の仕事を依頼されるくらいだ。
語学に堪能な文官たちの中ですら、トルマ語が堪能な者は少ないのかも知れない。
「はい。日常会話程度でしたら、読み書き会話、ひと通りはできますわ。専門書の翻訳には、辞書を使用することもありますが。」
「そうですか。……ジュリア・ロベール様、よろしければ私のパートナーになって頂けませんか?」
「え?」
読んで下さってありがとうございます。
誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m
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