レイモンド・ヴィレット公爵
お待たせしました(?)
ようやく公爵登場です!
3番目の扉に鷹の意匠…ここだ。相手は初対面、それも公爵様なのだ。失礼のないようにしなくては。ひとつ深呼吸をして扉をノックし、声をかける。
「失礼いたします。王立図書館司書のジュリア・ロベールと申します。」
「…どうぞ。今手が離せませんので、中で掛けてお待ちください。」
落ち着いた声で返事が返ってきた。再度失礼しますと声をかけて中に入ると、応接用のテーブルとソファがあった。長居するつもりはないのだが、相手から掛けて待つようにと言われたため、それに従うとしよう。
はしたないとは思いつつも、つい部屋の中を見回してしまう。以前入った兄や父の執務室よりも広いが、内装に関しては大きな違いはない。しかし、執務机の上だけは様子が違う。書類が山と積まれているのだ。
この上図書館の本まで読むなんて、一体いつ休んでいるのだろうかと心配になってしまう。
5分ほど待っていると、ようやく部屋の主が書類から顔を上げた。こちらがソファから立ち上がって礼をすると、ヴィレット様も立ち上がってこちらへ向かってくる。
「初めまして、でしょうか。レイモンド・ヴィレットです。お待たせして失礼いたしました。」
「お初にお目にかかります。王立図書館司書、ジュリア・ロベールと申します。こちらこそ、執務中に突然の訪問となり失礼致しました。お時間を頂けて感謝いたしますわ。」
「気にすることはありませんよ。どうぞ楽にしてください。」
「はい。ありがとうございます。……っ!」
礼の姿勢から顔を上げた私は息を飲み、一瞬言葉を失った。
―――――美しい。
男性にこのような形容詞は相応しくはないのかも知れないけれど、これ以外の言葉が思い浮かばない。
艶やかな黒髪に、透き通ったアイスブルーの瞳、スッと通った鼻筋と、噂に違わぬ美青年である。凛とした佇まいと鋭い眼差しは、扉の意匠にあった鷹を思わせる。
射抜かんばかりの眼光に感情の見えない無表情。怒っている様子ではないので、きっと愛想笑いが苦手なのだろう。そのためか近寄り難い雰囲気があるのだが、“気難しい”と評されるのはこの雰囲気のせいだろうか。
「それで、図書館司書の方がどういったご用件で?借りていた本でしたら、昨日お返ししたはずですが…」
うっかり呆けてしまっていた。訝しげなヴィレット公爵の問いかけに、慌てて意識を戻す。
本の物語から現実に戻るときのように頭をブンブンと振るわけにはいかないので、ひとつ深呼吸をする。落ち着いたところで、ヴィレット公爵へと返事をする。
「ええ。実はその返却された本に、こちらの書類が挟まっておりまして。必要な書類でしたらお困りかと思い、お返しに参りましたの。」
そう告げて、書類を差し出した。
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