お昼休憩(2)
「私、午後はヴィレット公爵様をお訪ねしようと思っているのですが、よろしいでしょうか?」
午後に急ぎの仕事はなかったはずなのだが、一応先輩方にも確認をしておこう。私一人だけで仕事をしているわけではないのだ。
「まぁ!ヴィレット様のところへ?ジュリア様がいらっしゃるなんて珍しいですわね?」
「ええ。昨日ヴィレット様が返却された本に書類が挟まっていて、お仕事に使われるものでしたら困るでしょう?ですから、お返ししに行こうかと思いまして。」
オリヴィエ様が大げさに驚くので、思わず苦笑してしまった。他のおふたりも驚いた様子だが、そんなに驚くことだろうか?
「ジュリア嬢はほとんど図書館から出ることがないからな。てっきり人に会うのが苦手なのかと思っていたよ。」
ああなるほど、そういうことか。フレデリック様の言葉で合点がいった。
確かに、社交はあまり得意な方ではないし、人と話すよりも本を読んでいる方が楽しいのは事実である。とはいえ、人付き合いが特別嫌いなわけではない。
「そうでしたの?特に人に会うのが苦手というわけではありませんわ。今までは外に出るお仕事はジェラルド様がして下さっていたので、私が外出する必要がなかっただけですの。今日はジェラルド様はお休みでいらっしゃいますので、私が行きますわ。」
「そういうことか!ジェラルドも過保護な奴だな。」
「ではジュリア様は、図書館と食堂以外に行くのは今回が初めてかな?もしそうなら僕が同行するけれど…」
ジェラルド様が過保護とは。いつも「散歩ついでに」といって外出の必要な業務を引き受けて下さっていたのは、そういうことなのだろうか?
…てっきり噂話の収集のためだとばかり思っていた。
むしろ、過保護なのはわざわざ案内役を買って出ようとしたテオドール様の方ではないだろうか?
確かに仕事中、私はほとんど図書館に引きこもっている。しかし、文官として王宮勤めをしている父や兄に届け物をすることもあるため、実は王宮内の道はある程度把握しているのだ。
「ご心配には及びませんわ。以前ひと通り王宮の中を案内して頂きましたし、テオドール様のお手を煩わせるわけには参りませんもの。お気遣い感謝いたします。」
「そうかい?ならジュリア様に任せようか。」
「そうそう。過保護はジェラルドだけで十分だ!ヴィレット様は、午後は大抵執務室にいらっしゃるはずだ。」
「ヴィレット様は少し気難しい方だという噂もありますけれど、きっと悪い方ではありませんのよ。ですから安心してくださいな!」
「ありがとうございます。テオドール様、フレデリック様、オリヴィエ様!」
そんな会話をしていると、そろそろ昼休憩が終わる時間だということで、皆で図書館へと戻っていく。
初投稿につき、誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m
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