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【完結】才色兼備な伯爵令嬢は仕事に夢中です  作者: あい・すくりーむ
新婚の公爵夫妻はご多忙です
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被害者【ヴィレット公爵視点】

「講師のベネット本人からの聞き取りと、彼女の身辺調査が一段落しました。」


「さすがはクラウスだね。では、報告を頼むよ。」


「はい。簡易的にまとめましたので、こちらの資料をご覧ください。」


クラウス殿から渡された資料にざっと目を通す。


・ベネットという女性は元貴族――没落したアガレス伯爵家の長女――だった。

・没落の原因はベネット本人と亡き両親の散財による借金、それと領地経営の放棄による爵位の剥奪。

・ジラルダ伯爵が彼女に金を握らせ、マナー・ダンス講師としてわざと不十分な指導をさせた。

・ベネット自身も新興貴族が嫌い。生粋の貴族である自分を差し置いて、平民が貴族になれるなんておかしいと思っている。


「――それで、“爵位を持つに値しない者たちに、身の程を知らせよう”というジラルダ伯爵の計画に乗ったそうです。」


「なんと愚かな。それで、彼女が新興貴族の講師を務めたのは、ドルーナ男爵家だけですか?」


もし他に不十分な教育を受けた被害者がいたなら、ドルーナ男爵令嬢のように恥をかかされる可能性は大いにある。どこの誰が恥をかこうと私は一向に構わないが、同じような事件が起こってしまったら、リアはきっと心を痛めるだろう。


「ええ。ジラルダ伯爵の指示で投資家や貴族のふりをして、いくつかの案件に関わっていたようですが…講師役は今回が初めてだったそうです。」


「それ、信用できるのかい?」


殿下の疑問ももっともだ。クラウス殿の報告によると、ジラルダ伯爵は狡猾で隙のない人物のようだから、偽名を使わせて他の貴族にも同じことを仕掛けるくらいのことはするだろう。


「ひと通り調査はいたしました。ここ3年ほどで爵位を得た新興貴族たちに、ベネットという名の講師を招いていないか、教育を受けたにも関わらず作法を咎められたことがないか。もちろん、ベネットが偽名を使った可能性も考えて彼女の年恰好を伝えましたが、それも含めて該当する情報はありませんでした。」


「クラウスがそこまで調べたのなら、大丈夫そうかな。」


「そうですね。」


3年か、まあ妥当なところだろう。爵位を得て、ある程度の期間何の問題も起こっていないのであれば、ドルーナ男爵令嬢のような不十分な教育を受けた可能性は限りなく低いと言える。


「それから、被害に遭った方たちについてですが…資料二枚目に記載のある四名。彼らの引いた“ハズレくじ”に関しては、ジラルダ伯爵が関与している証拠・証人が確認できました。」


ラーベンド子爵――ジラルダ伯爵から鉱山経営の話を持ち掛けられ、鉱山を購入した途端に事故が発生。事故は人為的なもので、ジラルダ伯爵が関与している証拠を入手。


カミル男爵――ジラルダ伯爵から持ち掛けられた投資話に乗ったところ、経営者のスキャンダルが発覚して大暴落。この件で、話を信用させるための投資家を演じたのがベネット。


作家のマリー・レソンズ女史――ジラルダ伯爵の強い後押しで新ジャンルの本を執筆も、伯爵の口出しにより著書は大幅に改稿され、出版に至った。その著書はほとんど売れず、残ったのは多大な借金。


薬学の権威であるメディク・フェネル氏――ジラルダ伯爵の投資により新薬の開発に成功。しかしその後、詐欺紛いのやり口で研究所と新薬の権利諸々をジラルダ伯爵に奪い取られた。


「ジラルダ伯爵が関わっていると思しき案件は、およそ30件。そのうち現在確認が取れているのは、この4件のみです。他はキナ臭くとも証拠がなかったり、被害者が頑なにジラルダ伯爵を庇っていたりで、容疑が固まりそうにありません。」


「30のうちの4ですか…随分と少ないですね。ジラルダ伯爵――抜け目がなく、ひと癖ある人物だという印象はありましたが、想像以上です。」


「ま、それもクラウスほどではないだろうけれどね。」


「それはお褒めの言葉と受け取っておきますよ、殿下。」


殿下の言葉に、ニヤリと笑みを浮かべながら軽口を返すクラウス殿。

読んで下さってありがとうございます。


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