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星廻りの夢5「ダイナグラム」

一日一章以上、アップしています。

今回は文庫本一冊には収まる内容なので、短く刻んでいきます。

とはいえ、短編にはならないので、お付き合いよろしくお願いします。


どこかで誤字脱字、文章表現言い換え、チェックしないといけない。

応援よろしくお願いします。

        ※

「ーーそれでサナレス、朝早くからきちんと学院の講義に参加した感想は?」

「お前が言うように、ーーわりと、おもしろかったよ」

「わりとってことは、お前の場合は、かなりと受け取っていいんだな?」


 サナレスはルカの言葉をはぐらかし、しらじらしく肩をすくめた。


 ルカはサナレスが満足していることをちゃんと察している。

 呪術はまやかしだ、なんてモリ・リトウとかいう講師が言い切ったときには、講義内容全てが眉唾ものに感じたけれど、その後の火薬についての講義の方はかなり興味をそそられた。


 黒色火薬の作り方はサナレスも知っていた。

 木炭と硫黄、硝酸カリウム(硝石)の混合物で、子供のころ作ってみたことがある。


 ラーディア一族では硝石が取れず、入手は輸入に頼ったが、今日の話であれば、バクテリアがアンモニアを分解すると、硝酸ができると言っていた。そして糞尿に、ヨモギ、麻、サクなどの雑草を混ぜ合わせ、尿を掛けて何度もかき混ぜれば分解がすすむ。


 バクテリアの中の亜硝酸菌や硝酸菌が分解する過程で硝酸塩ができるというのだ。土中のカルシウムと結合して硝酸カルシウムに変化させる。灰汁で煮詰め、結晶化すればいい。


 主要な交通手段が馬であるこの時代、糞尿の入手に困ることはなかった。


 バクテリアを利用して、汚水処理もできて一挙両得だ。バクテリアの種類について何を用いれば一番いいのか、文献を探ってみよう。


 恐るべし、バクテリア!


 想像すると目が輝いた。

「よっぽど楽しかったらしいな」

 サナレスの興奮を感じ取ったルカは言った。


「上手くいけば、臭くないトイレをつくれるかもしれない」

 開発すれば金になるはずだ。


 それからやるとすれば、電力開発だ。

 必ず、電気は売れる。


 トイレとか人が日常必要とするものに価値はあった。

 サナレスは民からの捧げ物で暮らす生活をやめると決めた。まずは自分で稼がなければ、王族としての役割を放棄できない。


 こすると発生する静電気については理解していた。

 それから二種類の金属と食塩水を使用しても電気はつくることができる。けれど夜の街を明るくするような大量の電気を開発し、何なら蓄電したい。


 何かいい方法がないものかと、前から考えていたのだ。

 もしかするとあの講師になら、ーー相談できるかもしれない。


「きゃぁぁぁ!」

 学院帰り、ぼうっと考え込んでいると、つんざくような悲鳴が聞こえた。


「なんだ?」

 サナレスは現実に引き戻されて、周囲を見た。


 ルカと互いに顔を見合わせ、声の方へ走り始める。

「どこだ!?」


 声の主の女を見つけて、サナレスは大声で問い掛けた。

 女は水門の下を指差している。

「子供が落ちた、ーー助けて」


「まずいぞサナレス! もうそろそろ水門が開く時刻だ。このままではあの子が流される」

 ラーディア一族の水路に流れる水は、山から流れてきた雨をダムとして貯め、時間がくると放流している。


 午後15時、放流前の丁度水嵩が上がった状態のダムの中に、小さな水しぶきがあがっていた。


「確かにまずい! 自動で開くぞ」

 状況判断をしたサナレスは、水門を手動に切り替える場所の位置を確認する。


「ルカ、お前はあっちにいって、水門を閉じてくれ。管理人がいるはずだから、手順はそこできくんだ。くそっ! ルカ急いでくれよ」

「わかった!」


 二人は別れた。


 あの距離ならば、ルカが走れる。

 指さしたサナレスは、ダムに向かって走り出した。


 総貯水容量10万1千規模のダムが左右に2つ。神殿の正面を向いて右手のダムでトラブルが起こっている。

 サナレスは叫び声をあげた女の元へ、5メートルはある堤防を斜めに走って駆け上がった。


 「助けて!」

 声を聴き終わるまでもなく、堤防から水面に飛び込んだ。

 落下するときに手を前に伸ばして、身体を一直線にする。

 かなりの高さがあったため、水の抵抗を最小限にした。


 サナレスは少女に向かって泳いでいく。

 一瞬で距離を詰め、溺れている少女の首を、左手に抱え込んだ。

 その途端、定刻になって門が開き始め、水面が揺れる。

 ゴゴゴーー。


 やばいな。

 音を立ててうねりを上げる水の中、サナレスは水門から遠ざかる向きに泳ぎ始める。


 下に吸い込まれる勢いが強く、浮いていることも出来ない。

 意識がない子供を後ろ向きに抱えたまま、サナレスは懸命に泳いだ。


 門に吸い込まれて流されれば、ダイナグラム中に張り巡らされた水路へと落ちるが、無事で済むはずがない。溺死か圧死、もしくは打撲死だ。


 ルカ、頼むぞ!

 水を掻きながら、サナレスは心の中で呼びかけていた。


 今、サナレスと子供の命を握っているのは、他ならぬ彼だけだ。

 ルカを信頼していなければ、命を預けることなど到底出来ない。


 頭上から、騒ぎを聞きつけた人々の視線が落ちてくる。誰もが水面で足掻く二人の無事を願っていた。

 体力の限界勝負だ。

 サナレスは吸い込まれる水流の中、逆行して泳ぎ続ける。


 門が閉まり始めた。

 だが、まだだ。巨大な水門を閉じるには時間がかかった。

 着実に、水門に吸い寄せられていく。


 サナレスより先に、野次馬の方が気持ちを折った。

「もうだめだ!」


 いや!!

 ルカは間に合っているはずだ。


 だから自分は諦めない。サナレスは更に前進する運動能力をフル稼働させた。

 子供を離さないようにしながら、水中深く吸い寄せられる中でも、最後の瞬間まで諦めない。


「きゃぁぁ!」

 遠くで悲鳴が聞こえたのと、門が閉まり切ったのが同時だった。


 危機一髪。

 水面が穏やかに安定し始める。

 先程の事が嘘のように、静かに凪いだ水面に、少女を抱き抱えたサナレスが顔を出した。


 ふう、と安堵の息をつく。


「サナレス! 無事かーー!?」

 大音量で叫び、ルカが自分の生存を確認している。


 サナレスは彼に向かって手をふった。

 そして親指を立て、ガッツポーズを決める。


「ああ、絶妙なタイミングだった!!」

 サナレスは白い歯を見せて、豪快に笑った。

 ルカだから信じている。

 サナレスは彼と一緒の時代に生まれたことが誇りだった。

「壊れた夢の先は、三角関係から始めます。」

星廻りの夢5:2020年8月31日

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