終業式の後で
一学期が終わる終業式の日、全校集会の為に生徒たちは廊下に並び始めていた。照人が列に並ぼうとすると、ポンと肩を誰かに叩かれた。振り向くと、隣のクラスのバスケチームで一緒になったショートカットの女子が立っていた。
「あれ? 君は、確か隣のクラスの……」
「三浦玉紀だよ。あのさ、ちょっと話があるんだけど。終業式終わったら、体育館の裏に来てくれない?」
「何の話? まあ、いいけど」
「じゃあ、また後でね」
玉紀は手を振りながら、自分のクラスの列へ戻っていった。
校長先生の長い話の後、生徒たちは各クラスに戻り、一学期の成績表とたくさんの宿題を受け取った。明日から待ちに待った夏休み。生徒たちはそれぞれ、友だちと楽しそうに話したり帰り仕度をしている。
「翔太ー! 悪いんだけどさ、今日ちょっと用事あって……ごめん、先帰ってて」
照人は申し訳なさそうに翔太に声をかけた。
「うん、わかったよ。それじゃあ、塾以外は空いてるから、いつでも連絡してね」
「了解。じゃあ、またな」
照人は教室を出て、体育館の裏に向かった。いつもなら運動部連中がいそうだが、午後からの練習なのか誰も来ていなかった。玉紀の姿も見えない。隣のクラスはまだ終わっていないのか。しかし一体なんの話だろう。この前のバスケの時のこととかだろうか。
「ごめん、呼び出したのに待たせちゃったね」
照人が振り向くと、走ってきた玉紀がいた。
「大丈夫だよ。三浦さん、それで俺になんの用なの?」
「玉紀でいいよ。クラスの奴にもそう呼ばれてるし。……あのさ、ちょっと聞きたいんだけどさ、黒地って好きな子とかいんの?」
「えっ? 好きな子?? ああ、俺も照人でいいけど……」
「やっぱ、いるよね……。ねえ、やっぱタイプとかって、細くて可愛い系な子?」
「んー、気になる奴はいるんだけど、正直俺、まだ好きとか恋愛とかよく分かんなくてさ。けど、なんで俺にそんなこと聞くの?」
「そうなんだー。とりあえず、付き合ってる人はまだいない、ってことなんだよね?」
「うん、まあそうだけど……」
照人がそう答えると、玉紀は少し考えてから照人の方に振り向いて言った。
「じゃあ、私と……セックスしない?」