奇跡の虹
ーー一年後。
「オギャー、オギャー」
分娩室の外の待合室で、ソワソワしながら待っていた照人と一人で絵本を読んで遊んでいた晴希。そして玉紀の両親と照人の両親と妹など、親族みんなが集まっていた。しばらくすると扉が開き、中から看護師が出てきた。
「おめでとうございます! 元気な女の子ですよー」
「やったー!!」
待合室にいた全員、喜びを分かち合った。
「あの、すぐに会えますか?」
「はい、どうぞこちらへ!」
真っ白なベッドに、まだ汗が光る玉紀と、白い毛布に包まれた可愛い赤ちゃんが、二人で寄り添って寝ていた。
「玉紀! ありがとう! よく頑張ったな」
照人は涙ぐみながら、玉紀の手を取った。
「可愛いわねー」
「小っちゃいなあ」
「やったな」
みんなそれぞれ言葉をかける。晴希は小さな赤ちゃんを初めてみて戸惑っているようだ。
「ほら、晴希。お前の妹だぞ」
晴希は恐る恐る、赤ちゃんの手に自分の指を差し出してみた。晴希の指を赤ちゃんは握り締める。
「おおー! 晴希、きっとお兄ちゃんだと分かってるんだぞ」
玉紀の父が晴希の肩に手をかけて、嬉しそうに話しかける。晴希は少し驚いていたが、ニコッと笑い、赤ちゃんに話しかけた。
「はじめまして。僕が君のお兄ちゃんだよ」
その様子を見て、玉紀や周りの人たちは涙ぐんだり笑顔になって、小さな兄妹を微笑ましく見守っていた。
ーー三年後。
三歳になった晴希の妹の奈々は、玉紀と照人と晴希の間で手を繋ぎ、一緒に歩いていた。雨の降った後に日差しが出てきて、遠くの空に虹が掛かっている。
「ねえ、お父さん! 虹ー!」
「ニジー」
晴希の声に反応して奈々も真似する。
「虹ってどうやってできるか知ってるか?」
「雨降って、晴れたら出てくるんでしょ?」
「そうだよ。南の国のハワイではね、『雨が降らなければ虹も見られない』っていうような諺があってね、『悲しいことや辛いことががあって落ち込んでいても、その後には必ず良いことが待ってる』って言われてるんだよ」
「そっかー。じゃあ、お母さんがお腹痛いのに頑張ったから、奈々に会えたんだね」
「そうだぞー」
晴希は小さな妹を見て微笑んだ。
「ねえ、お母さん。僕と奈々と、会えて嬉しい?」
「うん、すごく嬉しいよ。晴希が奈々と元気に仲良くしてくれると、お母さんもっと嬉しいな」
「うん! 仲良くするー。だからお母さんもお父さんと仲良くしてね」
晴希は、照人と玉紀の手を繋げ合わせた。二人は顔を見合わせて笑った。
「それじゃあ、今日はちらし寿司にするから、晴希お兄ちゃんも手伝ってね」
「うん!」
虹が架かる空の下、四人の後ろ姿は楽しそうに弾みながら、家へと向かって行った。
終




