突然、死神認定されまして……。
死神に認定されました!
今日からあなたは人殺しをしてもらいます!
ルールは以下の通り。
一つ、楽しく殺しましょう! ただし、天寿を全うする人のみです。
一つ、固有結界で誰からも見つからないようにして、完全犯罪として頑張ってください。
一つ、無用な感情は捨てましょう!
最後に、死神という職は残忍でなければなりません。死ぬ人の過去、家族を知れば躊躇してしまう人がいます。ですが、天寿を全うするということは自然の摂理ですので納得してください!
では、あなたに死神の幸運があることを!
一体全体、こんないたずらをするのはどこの誰だ?
ご丁寧に“死神のカマ”まで届いている。
俺はこの家に一人暮らしだからいいのだが。
死神に認定されたって……どうすればいいんだ?
バイトで今を凌いでいる俺にとっては厄介ごとがまた一つ増えたということしか頭になかった。
「あ、もうこんな時間か」
時計は朝の九時を指していた。
今日はバイト仲間の用事で十時からの出勤になっている。
あと一時間、準備してぼちぼち向かおう。
死神のことは、後から考えることにしよう。
準備してバイト先へ行こうとドアを開けた瞬間。
周りの景色が一変していた。
空は赤黒くなっているし、周りは薄暗い。
歩いている人たちの頭には“あと○○日で死亡”と書かれている。
みんなはそれに気が付いていないのか!?
動きも比較的ゆったりとしていて、いつでも殺せる。
いやいや!
殺しちゃいかん!
おんなじ人間だぞ!
と、とりあえず、バイト先に向かおう。
「お、島野来たか! 早く征服に着替えて手伝ってくれ!」
「お、お疲れ様です。飯田店長……」
「ん? どうした?」
「あ、いえ……」
家からバイト先に来てもやはり同じだった。
頭に何日と書かれている。
ちなみにだが、店長の天寿はあと五万二千十五日。
「よう! 来たなぁ!」
「梶原せん――ッ!」
「ん? どうした?」
先輩は“今日”だ!?
まだ、先輩は俺よりも六歳年上だぞ!
それでもまだ若い。
なんで!?
「き、着替えてきます」
「お、おう。大丈夫か……?」
こ、殺すのか?
殺さなきゃダメ……なのか……?
良くしてくれた先輩だぞ……。
変な冗談だ。きっと。
だって、俺には殺せない……。
「だっめだなぁ~。いきなりそんな考えもっちゃダメだよ~新米死神さん」
「だ、誰だッ!?」
ロッカールームを見渡すが誰もいない。
誰が話しかけているんだ!?
「ボクだよ」
そいつは天井から突き抜ける様に出てきた。
この世のこととは思えない。
死神となったことも。目の前で起こったことも。
「よっと、キミはもう気が付いているじゃないかぁ~。やるんだヨ」
「だが、良くしてくれた先輩だぞ!?」
「そんなんだから、人間を死神にするのは止そうって言っていたんだけどねぇ~。ボクの意見なんてちっとも聞いてくれやしない」
「お、俺は嫌だぞ!」
「じゃあ、ボクが殺しておくよ」
じょ、冗談じゃない!
殺しておくのはまずい。
な、何とかしなきゃ!
「あ、邪魔立てはさせないよ。えいっ!」
「ぐッ!?」
か、体が動かない!?
「な、なにをッ!?」
「ちょっと、そこで固まっといてね。ボクは仕事してくるから!」
そう言って無邪気に壁をすり抜けていく。
完全に消えた瞬間、店側から耳をつんざく音と衝撃が走った。
「むぐゥッ!!」
くっそォ! 動けよ体ッ!
じたばたすることもできない。
「ふぅ~。終わったぁ。無事に魂の解放ができて良かったよぉ」
「ぐッふぅぅぅ!! フゥフゥッ!」
「あ、ごめんごめん。今、解除するよ。ほいっ!」
「テメェッ!! よくも先輩をッ!」
掴みかかろうとしたら、体をすり抜けて目の前の壁に激突する。
「ダメだよぉ。いくら死神でも霊体に触れるわけないじゃん!」
「くッ……だが、テメェだけは許さんッ!」
「あはは、面白いね。いいよ。許さなくても。ボクはもう死んでいるし」
し、死んでる?
ああ、霊体って言ってたっけ。
それでも地獄に一番落としたい奴だッ!
「ボクの名前は和希、キミの補助官で助言霊だよ。よろしくねぇ~!」
そう言って、和希は白い先輩の魂を持って消えた。
クッソガァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッ!!!!