5 弁当=愛人なのかな?
「なあ・・・親友よ。ついに愛人に昇格したとは本当なのか?」
いつもの昼休み・・・あれから、ほぼ毎日先輩にお弁当を作るようになって、一緒にお昼を食べるのが日課になりつつある今日この頃・・・いつものごとく親友の意味不明な発言に僕は顔をしかめる。
「愛人って・・・本妻は誰なのさ?」
「あれだろ?副会長の三國桐華先輩じゃね?3年で幼馴染らしいし」
聞き覚えのない名前に眉を潜めていると呆れたよな表情を浮かべる和也。
「相変わらず、他人への興味が薄いよな・・・おまえは」
「和也が鋭いだけでしょ? 」
「否定はしないが、肯定もできんな。お前は昔から他人への執着が薄いのは本当だろ?」
「そうかな?」
自分では特にはそうは思わないけど・・・
「まあ、実際例の先輩のことだって知らなかったくらいだしな。と、それより本当に愛人になれたのか?」
「うん。まず、本妻・愛人以前に恋仲ですらないんだけども?」
「そうか・・・」
僕のその答えに和也はしばらく黙って俯いてから視線を明後日の方向へと向けて黄昏れるように言った。
「その・・・一夜限りの関係とか、俺にはわからないが・・・頑張れ」
「うん。親友がゲスい勘繰りしかしてないことがわかって、ホッとしてるよ今の僕」
こいつの思考を一度見てみたいところだ。
きっと9割方ピンクな思考になってるはずだ。
・・・あれ?逆に見たくないな、それ。
「ま、冗談はさておき・・・」
「本当に冗談なの?」
「安心しろ。噂は本当だから」
「うん。まったく安心はできないけど・・・」
僕はどうして今そんな噂が立ってるのかマジでわからない・・・この学校の生徒の感性がきっと僕とは別のベクトルなのだろう。
「とりあえず、用がないならそろそろ僕は行くよ?先輩待たせると悪いし」
「見事にハマってるなぁ・・・いや、用件はあるよ。お前さ、あの先輩のことどう思ってるの?」
「どうって・・・」
何やら声の質が変わった気がして僕は和也の方に顔を向けると・・・珍しく真剣な表情の和也がいた。
長い付き合いだが、こいつのこんな顔はあんまりみたことないな・・・
「いい先輩・・・かな?でも、これじゃあ、和也の欲しい答えにはなってないかな?」
「そうだな。俺的にはお前があの先輩にLOVEなのかLIKEなのかが気になってな」
「とりあえず“好き”しか選択肢がないわけ?」
英語的には質の違う同じ言葉だけども・・・
「だってお前・・・好意がなければ、そうして毎日弁当なんて作らんだろ?特にお前は人間嫌いの気があるわけだし」
「コミュ障なのは認めるけど・・・好きかどうかはわからないよ。強いて言えば“共感”かな?」
同じような境遇の人間に合えば誰でもそうなるであろうと思うが・・・そんな僕の答えに和也は首を横にふって、「やれやれ」と言わんばかりの表情を浮かべて言った。
「まあ、今はそれでもいいだろう・・・でも、お前がマジであの先輩に惚れたら気を付けなよ?あの先輩のライバルも多いし、お前が危なくなるかもしれないからな」
「気に止めておくよ。ないとは思うけど」
この時には和也の言葉の意味に気づかなかったけど・・・後々考えると和也は僕の先輩への気持ちに気づいていたのだろう。
そんな無駄に鋭い親友を放置して僕は恒例の場所へと向かった。