2 テンプレのポジションが逆な件について
先輩との出会いは本当によくある漫画のようなシチュエーションでのことだった。
僕は昔から容姿のせいなのか、よく女に間違われるんだけど・・・その日は珍しく親友の和也が用事があるとかで先に帰ってしまい、一人で下校したのだが・・・チャラい男達にナンパされてしまい、挙げ句に路地裏に連れ込まれそうになったところを助けてくれたのが先輩だった。
「あの・・・助けてくれてありがとうございます」
「気にしないで。可愛い女の子を助けるのは当然のことだからね」
お礼を言うと先輩はそう言って微笑んだ。
それに対して僕は・・・
「すみません。男なんです。僕は」
「は?」
この時ほど、先輩の間抜けな表情を見たことはなかった。
しかし、しばらく僕を凝視してから先輩は納得したようで、今度は一転して興味深そうな表情を浮かべた。
「なるほど・・・まさか似たような人種に会えるとはね・・・名前を聞いても?」
「あ、真白ゆきです。水無月高校1年です」
「後輩か・・・ふふ・・・ますます興味深い」
「あの・・・?」
何やら呟いてから先輩は「いや、すまない」と言ってから自己紹介してくれた。
「私の名前は、矢島ひろ。君と同じ水無月高校の2年生で・・・これでも一応性別は女だ」
「はい?」
今度は僕がポカンとする番だった。
えっ?女の人?
「ふふ・・・そうは見えないだろ?」
失礼かもしれないが内心でかなり頷いてしまった。
そんな僕を気にした様子もなく先輩は僕を改めてマジマジと見てから・・・何かを思い付いたように不適に笑った。
「真白・・・いや、後輩だからゆきと呼ばせて貰うよ。ゆき、君の家はこの近所かな?」
「え、ええ、一応・・・」
いきなりのファーストネーム呼びに驚いてしまうが、なんとか頷く・・・と、先輩は「ふむふむ・・・」と何かを考えてからポケットからスマホを取り出した。
「よければ、LINEのID教えてくれないかい?」
「もしかしてナンパですか?」
わりと似たようなことが過去にあったので少し警戒してそう聞いてみるが、先輩はそれにクスリと笑って答えた。
「そうだと言ったら?」
その返事に・・・不思議とそれに対して僕は嫌だとは思わず素直にスマホを鞄から取り出してIDを交換する。
交換が終わると先輩は「また、連絡するよ」と言って颯爽と去っていった。
これが、僕と先輩の最初の出会い・・・そして、僕の初恋の始まりだったんだと思う。