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邪竜の建国物語  作者: セリカ
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第七話 蹂躙

初戦闘になります。

 子竜が一直線に駆ける。


 それを迎え討たんと盾を持つ大柄の男が最前線に立ち、盾を地面に突き立てる。


 全速力でもない速度、正面からぶつかりあう必要はなかった。

 だが、子竜はあえて受けて立つ。


 駆けた勢いを殺す事無く、力強く踏み込み、放たれる右の掌底。


 風の加護と魔力の加護が盾を守っていたが、そんなものに意味は無かった。

 風と魔力の加護は掌底にぶつかりその一撃を止めようとするが耐えることが出来ず、突き破られる。


 そして、掌底が盾に叩きつけられる。

 掌底で鳴ったとは到底思えぬ音と共に盾は大きく折れ曲がり、男に叩きつけられ、男の鎧すら歪めて共に宙に舞う。


 大きな男が軽々と吹き飛ばされる姿に視線と思考が停止する。

 子竜は当然その間足を止める事無く。


「前だ!!」


 槍を持っていた男が思考を再開させて叫んだ時には、盾と剣を持つ男の正面に子竜はいた。


 この仲間の中で一番大柄な男を吹き飛ばした怪力に盾を構え、後ろに下がろうとしたが、全ては遅すぎた。


「余所見をする暇など無い」


 子竜のその呟きを聞いた時には、男の心臓に、男が先ほどまで握っていた剣が突き刺さっていた。

 ここでようやく男は自分が何をされたのか理解し、崩れ落ちる。


 剣の唾を掴まれ、剣を捻り、奪われ、突き立てられたのだと


 だが、この時、子竜の足が一方的な戦いの中で初めて止まった。

 このチャンスを逃しはしないと矢が放たれる。


 確かに隙でありチャンスであった。

 旅にも慣れているようで、場数も踏んでいると思える人間達が簡単に討ち取れるという事実に子竜は眉を顰めていた。


 親竜やオーガ達の教わる中で、人の身でありながら人の限界を超えた者がいることを知っていた。

 軍という数という集団の脅威も知っていた。

 魔族のように人間という種族の中にも技能の上下の差はあることも知っていた。

 知っていたが、理解していたつもりだったが、実際に体感することにより一瞬困惑してしまっていたのだ。

 山を越えこの森に辿り着いた者達の実力がこの程度なのかと


 故に隙を突いた矢が子竜に突き立つ


 などということはない。

 そもそもこの程度の矢の速さでは隙を突くことなど出来はしない。


 矢をかわすと同時に踏み込み、子竜と弓を持った男の間合いがなくなる。

 男は次の矢を番えるのではなく、短刀に手を伸ばすが、その手は空を切り、首から吹き上がる自身の血に理解が追いつく事無く、意識は暗転した。


 短刀は男が手を伸ばそうとした時には既に子竜に掠め取られ、そのまま子竜は男の頚動脈を切り裂いていたのだ。


「……そんな、風のっ!!」


 次々に倒される仲間の姿に風の精霊の力を使っていた魔術師の女が声をあげるが、子竜の前で詠唱する暇などあるはずが無い。


 詠唱を唱えようとした時には仲間の短刀が喉に突き刺さり、言葉を発することも叶わず、自身の血に溺れ崩れ落ちた。

 それと同時に魔術師の女が紡いでいた風の守りが霧散した。


 子竜の一撃を防げるわけではないが、それでも子竜の攻撃をコンマ数秒遅らせる程度の壁にはなっていたが、それももうない。


 残るは三人。

 瞬く間に殺される仲間達。


 リーダー役の男がせめて一矢報いようと踏み出そうとするが


「ここは退くぞ!!」


 槍を持つ男がリーダー役を止める。


「だが!」

「レベルが違いすぎる。

 生き残らなければこの情報を活かす事も出来ない!

 無駄死にになる」

「だからといって」


 息絶えた仲間たちにリーダー役の視線が一瞬向く。


「ばっ!」


 槍を持つ男が叫ぶより速くリーダー役の首は百八十度捻られ、自身が何をされたか知る事無く崩れ落ちた。


「エマっ!

 生き残って、こいつの事を知らせろ!」

「で、でも」

「お前の術なら山の魔物の目を潜り抜けて越えられる。

 一秒でも長くここに留めてみせる。

 だから速く行け!」


 瞬きすらせず、子竜を見据える槍の男に、子竜はゆっくりと歩いていく。

 エマと呼ばれた魔術師は下ろした荷物を拾う事無く、山に向かって駆けていく。


 食料も道具も無く山越えは無謀であるが、そんな暇があれば子竜から離れたい一心であった。


 子竜はエマと呼ばれた女を追うことも無く、ゆっくりと槍を持つ男に歩み寄る。


 一瞬の時があれば殺される。

 それを理解している男は子竜から視線を外すことも、瞬きをすることも無く、全神経を子竜に集中させる。


 そして、子竜が槍の間合いに入った瞬間


「しっ!!」


 引き絞った全身を使い、まだその身に纏う魔力を推進力に渾身の一刺しを子竜の心臓を目掛けて放つ。

 己の全力、これで届かねばこれまでと次撃の事を一切考えない一撃。


 だが、その一撃は子竜の右手が動くと共に槍の軌道を逸らされ、捻りを加えられた引きにより男の手から槍が奪われる。


 奪われた槍の綺麗な円を描き、一瞬で穂先が男に向けられる。


「レベルが違いすぎる」


 死を意識したせいか時がゆっくり感じられる中で、男は諦めと共に瞼を閉じ、自身を貫く衝撃と共に意識を手放した。


 子竜が放った槍は男を貫き、子竜の手を離れ、男共に空を駆け、エマと呼ばれた女の頭を超え、突き立つ。


「ひっ!!」


 眼前に突き立った槍と貫かれた男の骸に、足は止まり、引きつった悲鳴が上がる。


 目の前に突き立つ槍に残るは己自身という事を理解させられ、それから逃れるように後ずさる。


 既にその思考に冷静さは無く、その行為が逃げようとする山から離れている事実に気がつかない。


 とエマの背中に軽く何かに当たる衝撃があった。

 この時になって自身が後ずさっている事実を認識する。


 既に己以外の仲間は死に絶え、ここに居るのは自身と仲間を殺した敵のみ。


 恐怖のまま、確認するようにゆっくり振り返る。


 そこには紅と金色の瞳で見下ろす子竜の姿があった。


「あ……」


 それを認識した瞬間、身体から力が抜け、座り込んでしまう。

 自身の股を生暖かいものが濡らす事にも気づけない。


 ここで自身は死ぬのだと理解させられた。

 だが


「エマと呼ばれていたな。

 聞きたい事がある」


 予想に反して飛んできたのは死を運ぶ刃ではなく


「お前と杖を持っていたもう一人、魔術師だな。

 お前の詠唱は魔力が活性化し武器などに魔力を纏わせていたが、もう一人の詠唱は魔力を活性化しただけで風を纏わせていたのは世界に存在する精霊達だ。

 この二つ、どういう技術で、何をなしている?」


 魔術師ということと行使した魔術に対する確認と魔術技術の問いかけであった。

初めてキャラ名出たのにモブキャラという・・・


これからもよろしくお願いします。

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