第六話 会敵
木々を跳躍し、森へと続く入り口に子竜はたどり着き、木の上から視線を向ける。
敵の動きは使い魔を通して追い続けている。
先のオーガからの報告がなくても知っていた。
そして、人では見えないだろうが、既に子竜の眼には見えている。
旅に慣れているのだろう。
山を下りきる前に休息と食事を取っている。
あんな目立つところでとも思うだろうが、逆に返せば向こうからも視界がひらけている。
強襲される心配も低い。
完全に下山してしまえば少し拓けているとはいえすぐ傍に森だ。
未開の森の前で休息など襲ってくださいと言っている様なもの。
さすがにここまでたどり着くだけのことはある。
休息も終わったようで荷物をまとめなおし、こちらに向かって歩き出す人間達。
子竜は人間達を見つめ、装備を確認する。
人間達の集団は七名。
大型の盾とメイスを持つ大柄な男、盾と剣を持つ男、大剣を背負う男、槍を持つ男、弓と短刀を持つ男、杖を持つ女が二人。
子竜が警戒したのは杖を持つ女二人。
子竜が知る武器の中にメイスは無いが、槌は知っている。
形状から斬るのではなく、殴打する武器というのは理解できる。
だが杖、正式には魔術師を子竜は知らない。
オーガやガルム達に適性は無い。
親竜や子竜自身は影を使用した使い魔などを使うが、種族による適性に近いもので、魔術ではない。
一瞬、殴打する武器とも考えたが女二人の歩き方などから近接戦闘するタイプではないと判断していた。
これ以上は考えても無駄と跳躍し、森の前に降り立つ子竜。
いきなり現れた子竜に警戒し、武器に手を添える者達。
子竜は静かに立ち上がり、フードを外す。
「人?
俺たちより先に冒険者が来ていたのか?
どこの所属の者だ?」
この冒険者達のリーダー役なのだろう。
大剣を背負う男が武器に添える手を下ろし、歩み寄ろうとする。
それを
「近づくな!」
弓と短刀を持つ男が止める。
「気をつけろ。
人のような姿をしているが、魔族だ。
それも最上位の」
男の言葉に他の者達は目を丸くし、戦闘に不要な荷物を下ろし、武器を抜き、構える。
対して子竜は驚くというよりは感心し、男に声を掛けていた。
「弓に短刀、斥候か?」
「……そうだ」
「斥候をする者故の観察眼か。
どうやって気がついた?
姿は人と変わらんはずだが」
それと同時に疑問に感じたのはどうやって気がついたかだ。
影は操っていない。
にもかかわらず一目で見破られた。
「眼の色だよ。
赤い右眼は人でも地域によってはいる。
だがその左眼、金色の竜眼は誤魔化しようが無い。
この森を支配する金色の眼を持つ漆黒の邪竜の事を考えると血を与えられた眷族って所だろう」
口が軽いのか、あっさり暴露した男に子竜は感謝していた。
「なるほど、この眼は人に紛れるには向かないか」
人里に紛れた時に左眼を隠したほうが良いということを教えてくれたのだから。
「教えてくれた事には感謝しよう。
だが貴様達を生きて返すつもりは無い。
せいぜい足掻いて見せるがいい」
感謝するが見逃すかといえばそれは別の話。
静かに腰の刀に左手を添える。
それと同時に杖を持った二人の女が杖を掲げ詠唱を開始する。
「我が祈りは敵の刃を弾く守りの加護を纏う。
重ねて祈るはその手に敵を切り裂き、打ち砕く力を紡ぐ。
我が言霊を持って、彼の者達に加護を」
この言霊にあわせて魔力が活性化し流れ込むように、人間達の守りと力になる。
「風の精霊よ、我らに力を与えよ。
我らを覆う壁となり敵の刃を防ぎ、疾風の如く速さを与え、武器に纏い敵を切り裂け」
こちらの言霊は魔力が活性化することにより風の精霊の力を借りて、風の守りと刃を纏う。
子竜の能力であれば詠唱をしている間に全員を斬り捨てる事も不可能ではない。
だがあえて観察していた。
子竜自身も影を使い、森に住む者達にも炎や水を操る者がいるが、このような言霊を使っているのは見たことが無かった。
初めて見る魔術師の技術に興味を惹かれていた。
だがこの場は戦いの場
「準備は出来た様だな。
では始めようか」
子竜は一直線に駆けた。