006 黒龍と始まりとギルドと
うん、約一万六千字と過去最長を書いてしまったかもしれない龍坊ですよ。かれこれ二ヶ月間も更新してないとは……『神罰樹』の方もでんでん進んでおらぬでは無いか(白目)
さて、本文について……二匹と一人の人物の印象がトンデモナイことに……こんなはずじゃあ無かったのだよ。事故だ。放送事故ならぬ執筆事故。そのせいで渋滞して話の進みが遅い、と。
注意です。長いので読者各位に読むペースをお任せします。
──嗚呼。観念の違いがこれほど如実に感じられたのは、一体いつだっただろうか。初めて友達ができた時だろうか。
「グァァァァアアアン‼︎ 」
「グァッ! グァッ! グァッ! 」
私は見た。
それぞれ赤と青の立て髪をもつ、二匹の黒龍が絡み合っている所を。
私は見た。
双龍が咆哮をあげる度に、焦土と凍土が世界を侵食する様を。
私は見た。
伝説上の生物が……真っ昼間に夫婦の営みをしている所を。
……他所でして下さい。
※
これは少し前の、洞窟にいる所から振り返る。
さあ! 冒険の始まりだっ! と無表情で内心意気揚々な朱を、クロスケが呼び止めた時の事。
「留守番? 」
「そうじゃ。我がここを空けるのを知らせておこうと思っての。」
「え? 知り合いがいるの? ボッチ妖精クロスケ『おい。』に? 」
「訂正せよ。我はボッチでは無いぞ……何だその目は。やめろ! その様な優しげな瞳で見つめるで無い! 」
──何千何万何億年も生きていて、本人がここ暫く洞窟から出ていないと言う。……クロスケの体内時計と他との時差でお察しください。知り合いなんてほとんどどっかに行ってる、逝ってるレベルの年月が経過しているのでは?
「ふんっ。幾ら出ていないとは言え、すぐ近くにおる気配は感じ取れるわい。あの下b……同僚は未だにヴェリタスの命でここら一帯を守護しておるわ。」
不機嫌なクロスケは朱に背を向けて洞窟から出て行った。
話を聞く限りでは、どうやら旧知の妖精か龍かが近くにいるらしい。クロスケがいるから話は通じると思いたいが、どうしても緊張してしまう朱。
それにしても。やはりというか、石像になってしまった主、ヴェリタスがいるこの洞窟は、クロスケにとって放っては置けない大切な場所らしい。
大切な何かを守りたいという気持ちは理解できるため、面倒だねーと思いつつ朱は荷物を背負って後を追う。食さえ整っていればちょっと長居をする予定だった洞窟に、後ろ髪を引かれながら。──折角、異世界のサバイバルを堪能しようと思ったのに、予定が狂ってしまったねー。
「眩し。いと眩し。」
穴から出ると、朝日が網膜にダメージを与えた。……何処と無く朝霧が出ている様なのに、日差しが減衰していない。これはどうした事だと朱は周囲を見渡す。
まあ、なんという事でしょう。
あんなに天井知らずに透き通っていた新鮮な空気だったモノは、まるで生物の死骸で淀んだ底なし沼に、全身を沈めた様な不快感と濁りを演出するナニカに変わり果てているでは無いですか。
そして小さく話す様にさえずっていた小鳥が止まっていた木々は、表皮を黒く変色させ、あたかもお化け屋敷がポツンと建つ森の様。
更に更には『ギャッギャッギャッ』と言う鳴き声や、『ヒッヒヒッヒ』という怪しい音が……風が死んだ。大地が怒りに満ちておる! ……とまでは言わないが、昨日までとは百八十度状況が変わっている。
朱のイメージである“魔境”が明瞭な形で現出したような、前日までが表の優しい初心者コースで、今は裏の鬼畜な玄人コースのような……。
赤帽被った髭の陽気な青年さん来てください、極悪亀怪人はこちらです。桃姫を救ってやって下さい。
気を取り直した朱はクロスケを見失うと面倒だ──具体的に言うと生き残る事が──と思いつつ、外に出る事ができてテンションMaxのクロスケを両眼で捉える。
──大工兼配管工の髭青年みたく跳ねすぎ。この濁った空気はクロスケが原因なのか、これからいく所にそれがあるのか……多分、後者だろうから推測するだけ無駄だね。
※時点回帰ぃ
「何、これ……。」
目の前で、二匹の龍が暴れています。一見、戦っているほど激しく絡み合っているが、クロスケいわくイチャラブの真っ最中。
朱はドン引きして数歩あとずさる。
クロスケも依り代の口元が引きつっている。
「やはりか。一度経験すると歯止めが効かん所が下位の者の悪い所だの。する前は、もっと慎み深く口もあまり聞かないのであるが……。」
はい! どうでも良い龍の常識その1!
ある行為で、ある意味大人になると、感情の起伏に富む様になるそうだ! だからクロスケの常識に朱を照らし合わせると、反応が薄いので処○である!
──……えー……うん。もう、何も言うまい。
龍の謎理論に絶句した朱は取り敢えずアイアンクロー。誰とは言わないが、一時的に行動不能に陥った黒い物体があったとさ。
と、もうそろそろ落ち着かなければと思う朱さん。しかし、乱れに乱れて生きた災害と化している双龍に、一体どうやって話しかけるのか。
「と言うわけで、あとは任せた。」
「話の流れがわからんが、何とかしろと言う朱の思いはよ〜く伝わったの。我も同種族として恥じ入る事態じゃ。」
両手を上に上げ──おそらく肩を竦めた──クロスケは言の葉を紡ぐ。感知スキルのおかげか魔力がクロスケへ集まるのを知る事が出来た。が、白い何かがノイズとして混じるのも同時に感じる。
『我が名に於いて汝に命ず、我が眷属に類する者よ。【勅命】』
クロスケを中心とした半球状の何かが、朱や双龍の体を通り抜けた。──魔法では無い。スキルにしては様子が変だ。眷属と言うからには、種族的な、そう、言うなれば“固有スキル”とでも呼ぶべきモノだろうか?
朱の視線の先には、こちらを見て硬直した双龍がいた。龍の表情は読めないが、お楽しみの最中を上司に見つかった……そんなあり得ない出来事が起きた状態。
悪夢である。
龍だからまだ良いが人間に当てはめると、事を成している時にプライベートな空間に入れる上司と遭遇……修羅場になるので割愛。
「「な、何でぇぇぇぇぇぇぇえええ⁈ 」」
仰け反ってすっ転んだ双龍の絶叫が、渓谷に木霊した。──だよねー。
※
目の前にはグッタリしたおしどり夫婦。
龍? いえいえ。人化して、柔和な空気を身に纏った伯父様執事と凜とした伯母様執事が……土下座しているだけです。
たった今、クロスケの説教が終わった。始めは側にいた朱も、それを察知して──何故、わざわざいい歳をした知的生命体が叱られる現場に、居合わせなければならないのか。隣で見ている自分までお灸を据えられている様な錯覚がする雰囲気など、逃げるが勝ちである。──と言いたげに、朱はサッサと周辺を探索しに出かけたのだった。
「はぁ〜……気高き龍種たるお主らがコレでは……いつ頃から仲良くなったのだ? 」
「はい……貴方様があの洞窟でおやすみになられて、数万年経った頃からお互い……その……進んだ関係に。」
「……仕事はしとっただろうな? 」
「も、勿論でございます! そうだな! 」
「はっ! 現在、この一帯は我々の管理下にありますっ! 」
落ち着きを払っていれば、どこぞの皇族貴族に仕える使用人なのであるが……取り乱した様は見るに耐えない。
「そう言えば、今の年月日は把握しておるか? 我は一万ほどで数えるのをやめたのだが……。」
「それは、奥の崖に記録しております。」
そう言いつつ、平身低頭の姿勢のままクロスケを案内する変態紳士……執事。
しばらく進むとクロスケの目の前には切り立った崖が現れた。それもただの崖では無い。無数の巨石の表面に、天を貫くかの如く数多の縦筋が等間隔で刻まれ、さながら巌の瀧とでも形容すべき威容を誇っている。
「おお、そうでした。今日の記録を忘れておりました。」
「ほほう、仲良く完徹したと。」
「……誠に、申し訳ございません。」
ギラッとクロスケの視線が光り、冷や汗をかく執事。当にその通りであるので謝罪する他無い。
そんな男にクロスケは厳かに告げる。『バラドよ。使命を果たせ。』と。主に働きを見せろと。
「はっ。」
バラドと呼ばれた人龍は頭をあげ、主の言葉に燃える様な赤眼で己が存在を主張し応答する……“我、仕える。故に我在り。”と。
この様な上下関係は、例えお互いに再会を内心で喜び話が少し弾んだとしても、絶対である。それが龍にして王族の掟。
バラドは崖の下に立つ。そして静かに断崖の真新しい凹凸を撫で、何かを見つけて静止した刹那。
腰を落とすバラドの残像が、正面に一筋の時を刻み、あとに残るは空気が張り裂けるような音の残響。
クロスケは見ていた。
バラドは腰を落としたのち、右膝と右の手刀をやや後方の地面に付く寸前まで引き絞りつつ、又、その右腕右肩から左肩左腕へと芯が通っているかのように左手を高く挙げる。そして左肘をクンッと後ろに反動をつけて振ると、腰を巧みに捻る事でその勢いを増幅しつつ右手刀の切っ先へと伝播する!
結果生み出されたものは、下から上へ鋭く空気と壁面を刈り取る魔力を込めた右手刀の一撃。そしてそれを放ち終え、右手刀を正面に下ろし残心しているバラドが居たのであった。
「これが五十一億八千三百十五万七千二百四十(5,183,157,240)刻目にございます。」
クロスケのもとへ戻ったバラドはそう告げた。覚えているのではなく、数え直したらしい。
不思議な事に、幅一㎝深さ五㎝の鋭利な溝は、刻まれた当時のままにその姿を保っていた──薄っすら魔力を帯びて。
「……年は変わらず、一月あたり三十日で十二の月までか? 」
「左様でございます。つまり、貴方様がお休みになられてから千四百三十九万七千六百五十九(14,397,659)年が経過しているのです。ちょうど元旦でございますね。」
引き篭もり廃龍、ここに見参。
凡そ一四○○万年もの間、外界との接触を断つのは流石龍種。エルフでもそこまでしないであろう。……新年そうそう篭り始めた事に関しては、言及を避ける。
「創世暦では? 」
クロスケは考えるのが面倒になった。
「……七阿僧祇(7×10^56)から八阿僧祇の間としか……新文明暦で千九十三(1093)年にございます。」
ちょっと聞く暦を間違えたクロスケ。
創世暦は神代から続く、この世界が創られた時を紀元とした世界最古の暦である。どれ位長いかと聞かれたら、実用性が無いぐらい長い、と答えるしか無い壊れた暦である。
……世界の七不思議の一つに“生きとし生けるものは、自ずと大まかな創世暦がわかる”という何とも不思議なものがあり、幼児でさえも、知ろうと思えば頭に浮かんでくる。噂では詳細な創世暦を記録した一族がいるとかいないとか。
話を戻すが、創世暦に続いて新文明暦という暦がある。こちらは地球で言う所の西暦の様な物である。ただ、異なる所は……名称の通りだ。
「どうでもいいから、さっさとバラドさんに留守番を頼んで行こうよ。」
「いやいや、サラッと流しておるが、我が篭っておる間に一度文明が崩壊しとるぞ。」
「いや、千九十三年前とか、これからの行動に関係ある? 」
学者と極貧者の会話の様だ。毎日を生きる事に必死な者と、心に余裕があって巨視的な視点を持つ者……この場合は寿命の有無も大いに関係しているが。
クロスケにとって千九十三年前なんぞ、ついこの前起きた事なのだ。
「……主よ、そちらの少女はどなたで? 」
「ん? ……アカネ、いつ戻ったのだ……。」
「ん? 少し前から? 」
会話に自然と加わる朱さん。バラドと話していたとはいえ、気配が感じられ無かった事にクロスケは寒さを少し感じる。──成長しておらぬか?
そこで、バラドは得心したとばかりに頷いた。朱とクロスケはその姿に困惑する。
「主もとうとう、所帯をお持ちに『『それは無い。』』……そうですか。」
突然、何を言うか。朱とクロスケの冷徹な声音で、二度と言うなと殺気を静かに放っていた。朱さん、まだ、人ですよね?
「さて、バラド。留守番を頼むぞ。」
「はい? ……おや、主よ。何故のその様な御姿をなされているので? 」
「「……。」」──話が進まない。
「アカネよ。その様な、可哀相な者に与える眼差しを向けてやるな。眷属は魂の在り方で主を見るのだ。……バラド、見ての通り“いつでも解ける”封印を解くのが面倒なので、アカネに依り代を借りたのだ。今はクロスケと名乗っとる。」
「左様ですか。しかし、留守番とは? 」
朱は突っ込まなかった。プライドは、誇りというのは大事である。例えそれが埃のような誇りであったとしても、自信に深く関わっているのだから。そう、塵芥のホコリだったとしても。──いつでも解けるなら、とっくの昔に出てるよねー。
これを人は“見栄を張る”とも言ったりする。
「留守番は、留守番じゃ。」
「誰が、どこで、なさるのでございますか? 」
「バラドとアディの二人が、我の洞窟で、じゃが? 」
「嫌でございます。」
帰ってきたのは拒絶。主の威厳が迷子になっている。行方不明になっている。辛うじて警察犬が辿れるか否か。さて、安否は如何に!
「は? 」
「嫌でございます。お伴したく思います。」
「……主人の御身じゃぞ? ボデェーじゃぞ? その、守人じゃぞ? 」
「もう、待つのは嫌なのです。貴方様の側で働きたく存じます。」
困った。クロスケは本当に困った。こんな気弱な発言を龍種から、我が眷属から聞くとは青天の霹靂。──まあ、我ならば雲一つ無くとも霹を降らす事など容易いが。驚きは……せぬよ? しておらぬからな? アカネ?
「じゃあ、一緒に行こうよ。」
答えたのは朱。そしてクロスケの選択肢を一つに狭めていく。もともと朱の旅に同伴するクロスケは、反論するには分が悪い。
「おい! アカネ! 主の御身がどうなっても──」
「どうにかなるの? 封印した勇者は去り、そこらの有象無象にアレが壊せるってクロスケは思うんだ? 」
「……。」
先ほど、クロスケのプライドがまあまあ高いのは把握している。あとは持ち上げて押すだけだと朱は腹黒く考える。──それにしても執事かぁ……ふふふ。
朱の思考が逸れている間にも、クロスケに期待の眼差しを送り続けるバラドと、いつの間にかその傍にいるアディ。そしてその横には旅支度が。……旅支度がっ!
「はぁ……わかったわかった。……バラドとアディよ。我につき従え。」
「「はっ! 」」
「流石クロスケ、器量が違うね。よろしく、バラドさんアディさん。」
「「はい! よろしくお願い致します。朱様! 」」
クロスケは耳を疑った。──む?
「私はバラドとお呼び下さい、朱様。」
「私はアディとお呼び下さい、朱様。」
「わかった。バラドとアディ。」
クロスケは激しく耳をピクピクさせる。──むむむ?
「なんじゃ……なんか、釈然とせん。」
「はいはいはい、気のせい気のせい。それより時間は有限なんだから、出発しようよ。」
「アカネ……。」
なんか扱いが雑では? と思うのだが、それを聞いても“気のせい”のひと言で終わる予感がして、クロスケは口をつぐむ。
龍たちは正直だ。朱は自分たちの意見を主に通した。今迄そんな事は一度も無く、それを行い成功した朱はさながら救世主だった。……昔のクロスケがどれほど酷かったのか。
「じゃ、れっつごー。」
「「はっ!」」
「……。」
予定外の仲間を加え、一人と一体と二匹は旅に出る。
※脇役視点
私の名前はイズ。
昔は捨て子だったけれど、ここのギルドマスターであるハンスさんに拾われて、それからはギルドの受付をしています。
今は何やら森が騒がしいとの連絡を受け、その対処の為の事務処理に追われています。
「なぁ、異界の奴等がまた魔物の群れの討伐に成功したらしいぜ。軍が動くまでも無かったってよ。」
「そうそう、なんでも甲高い音が奴等の手元から聞こえたかと思ったら、次の瞬間には蜂の巣になった魔物がいたとか。」
「魔法じゃ、ねぇんだよな? 」
「そうそう、奴等の手元から炎が噴き上がったときにゃ、魔法士の連中が発狂してたぜ。『私が魔力感知を出来ないだとっ! 』ってな。」
ギルド内にある酒場で、冒険者の方々が雑談をしています。なかなか芸達者な人もいるようで、声音を変えるのも上手です。手を動かします。
……異界の人。数年前から、いえ、記録によると数千年以上前から、その様な人物がいたと記されています。情報媒体は国庫に保管されている古文書から、果ては平曲などの口伝に至るまで。中でも顕著なのがインドゥラー教の聖典で、主に救世主として登場する事が多い様です。あ、インドゥラー教と言うのはこの国──セルジ帝国──の国教にも指定されている、ポピュラーな宗教です。私もハンスさんも一般的な信者で、ハンスさん曰く“この方が融通が利く”のだそう。……勿論、私も長い物に巻かれる主義ですよ?
話は戻りますが、ここ数年、再び現れた異界の人。ただ、ちょっと様子が違う人が混じっていました。
以前に訪れた異界人の多くは、錯乱するか戸惑うか泣き始める人がいます。しかし近頃は、かなりの割合で歓喜した人がいるらしいのです。なんでも、ある人はらのべ? ちーと? はーれむ? いせかいてんい? なんて呪文を唱えながら、諸手を挙げて喜び跳ね回ったとか。また、ある人は小さく拳を握り、喜びを噛み締めていたとか。
中でも異彩を放っていたのは、数千年前にはいたと言う和風の鎧を着たギラギラ光る瞳を持つ人達と、同じ雰囲気を持つ修羅の人。
緑や灰色や焦げ茶の……そうそう、メイサイ服という特殊な物に身を包み、ジュウという魔法杖を持った修羅の人。
先ほど話題に上がったのは、主に修羅の人たちが達成した偉業だそうです。かっこいいですね。一度でいいからお会いしたい。
そんな取り留めもない物思いに耽ていると、ギッと入り口の扉が開く音がしたので、私はそちらに視線を向けました。フリーズしました。手は動かします。
え? 何でしょう? 貴族のお忍び旅行でしょうか? でもでも、こんな所に何用でしょうか? ギルド本部からの納税証明はありますし、冒険者がトラブルを起こしたと言うのは……いえいえ、落ち着くのです私。貴族が正装をしていない時点で、そんな抗議や差し押さえに来るわけないじゃないですか。
「冒険者登録がしたい。」
黒髪の少し小柄な少女……いえ、もう女性ですか? その人がカウンターの前でこんな事を言いました。おっしゃった。ねぇ、貴女、着る服間違えてない? そんなズボンじゃ無くて、ワンピースとかドレスでしょう? と言いたくなる様な美貌。そして左右には、メイドと執事の服装に身を包んだお連れが。隠す気があるんだか無いんだか。手を動かします。
「ええと、冒険者登録、でしょうか? 」
「そう、三人お願い。」
「えー、危険で、命の保証もなくて……。」
「知ってる。」
「ええと、ええと。」
私、絶賛狼狽中。あまり人を見た目で判断したく無いが、これは駄目です。百歩譲って魔法士だとしても、許可できない。
そんな時。泳がせた目が、一人の冒険者を捉えた。助けを求める様にその冒険者──ラムドさん──を見つめると、苦笑いしつつこちらへ来てくれた。渋いです。
ラムドさんは四十になる熟練の冒険者。天職が戦士のオールラウンダーで、私を含めた皆さんが頼りにするおじさん。渋いです。手を動かします。
「お嬢さん。あんまりイズを困らさないでくれ。」
「? 」
苦笑いのまま、やんわりとラムドさんは黒髪の女性に横から話しかけた。かけられた方は首をかしげるばかりなり。ラムドさんは肘と半身をカウンターに預け、話を続ける。
「お嬢さん、体力に自信は? 何か荒事をした事は? 」
「体力はある。荒事は……一度、大の大人を半殺しにした事なら、昔。」
声が嫌に響く。先ほどまで雑談を興じていた冒険者達は、この三人が入って来た時から押し黙っていました。筆記する羽根ペンの音が響きます。
……へ? 半殺し?
ギルドに静かな騒めきが広がります。ラムドさんは眉を寄せ……あれ? スイッチ入っちゃった? うう、殺る気スイッチが入ってるラムドさんは怖いよぅ。
「……おい、ちょっとそこのお前。」
「へ? 俺っすか? 」
「そうだ。こっち来い。」
「へい。」
ラムドさんは若手の冒険者を手招きして呼びました。その人は、冒険者の中ではマシな──品行方正な方の、ラムドさんの弟子の一人。薄々、ラムドさんのしたい事がわかります。任せて手を動かします。
「今からお嬢さんと、修練場で模擬戦をしてくれ。」
「はい。」
やっぱり。
世の中は不思議なモノで、体が細いのに、魔力で強化されて見かけ以上の力を発揮する英雄なる者がいます。そして、その場合は外見で判断すると痛い目を見ます。例えば私の場合だと、開始する冒険者ランクの案内を間違えるとか。そのせいで低ランクの依頼が綺麗さっぱり無くなったりとか。結果、他の低ランクの方々が酒場で自棄酒したりとか。
兎にも角にも、力量を測る必要があるのです。だからこうして、他の冒険者の方に協力していただきます。……普段なら、田舎ギルドであるここでは、ハンスさんが直々にして下さるのですが……始めに述べました通り、森が危険なのでそちらに向かっています。そして手を動かします。
ところで、女性の反応はというと。
「え、何でそんな面倒な事、しなきゃいけないの? 」
明確な拒絶。あれっ⁈ 背筋がゾワッとしました。声が低くなっただけで、ここまで威圧ができるでしょうか、こんな女性は初めてです。
ギルド内で身構え、思わず剣の柄に手をかける人が出始めます。待って下さい待って下さい、刃傷沙汰は困ります。怪我をされては困ります。……あれ、いつの間にか抜剣しようとしている人の心配をしていますねっ? 私っ⁈ とまあ手を動かします。
「私は、ただ、登録しに来たの。誰でも出来ると、聞いたから。」
「そ、それは……。」
ゆっくり区切って話すのやめて下さい。お願いですからやめて下さい。怖いですからやめて下さい。やめ、やめろぉっ!
「まあ、落ち着けや。お嬢さん。場合によっては試験を行う決まりでな? 」
ああ、ラムドさん救世主です。渋いです。結婚しても良いかもしれません。しないですけど。
「……どんな場合? 」
「例えば、狩りをしたことが無さそうな素人とか、お嬢さんみたいなひ弱な……ゴホン……一見、ひ弱に見える女性とか、な。」
「はぁ……面倒だなぁ。」
「すまんが、そういう事だ。」
何とか納得してくれた様です。これなら無駄死にを予防できるでしょう。……既にそんな事は起こらないと、確信している私もいますが。ラムドさんとお弟子さんが修練場に向かって──あれ? 行かないの? それでも手を動かします。
「ご飯食べてからにしよっか。ね、バラド? 」
「それが良いかと。……申し訳ありません。登録ならば直ぐに済むか、と考えたのですが……。」
「いいよ。でもちょっと限界かな。」
「朱様。あちらのカウンターで召し上がりましょう。」
「うん、アディありがとう。」
あれぇ? 主導権どこいった?
口をあんぐり開けた私達。ラムドさんのそんな顔、初めて見ました。こんな顔を私も晒しているかと思うと……初体験です。
「親父さん。昼ご飯にオススメのを三人前、お願いできる? 」
「あいよ。」
早っ⁉︎ 立ち直った時には既に、ギルドのカウンターから酒場のカウンターへ女性が移動していました。と、取り敢えず! 手を動かします。
私はラムドさんに懇願するようにアイコンタクトを。ラムドさんは当初の苦笑いを再び浮かべ、不思議な三人のあとについて行きました。
「親父、俺はエール一つ。」
「ほいよ。」
グラスを受け取ったラムドさんは、そのまま例の三人のテーブルへ。ラムドさんファイト! 私にはどうする事も出来ません。聞き耳だけを立てつつ、事務処理を再開します。ってラムドさん⁉︎
「ここの席、良いか? 」
「お好きにどうぞ。」
「じゃ、失礼して。」
座ったラムドさんはグイッと煽りました。あー、昼間からそんなに呑むと……まあ、夕方に近いですし、酒にも強いラムドさんは大丈夫でしょうか。ラムドさんは独身なので、私が注意しないといつまでも呑んでます。油断も隙もありゃしません。手を動かしつつ凝視します。
「お嬢さん。」
「アカネ。」
「ん? ああ、アカネお嬢さんか。俺はラムドだ。」
「で、そのラムドさんが何の用? 」
「んー。特に先の用以外に、これと言ってあるわけじゃあ無いんだが、これから新人になるアカネお嬢さんの……まあ、言い方は悪いが“品定め”だな。」
「ふぅん? ラムドさん、見た感じ戦士? 」
「おう。そう言うアカネお嬢さんは……魔法士、か? 」
「うーん。ま、初歩の初歩、って程度かな? 最近そういう方向に鍛え始めたから。」
「うん? じゃあその前は? 」
「秘密。」
「そうか、冒険者への経歴や能力の詮索はご法度……というよりは暗黙の了解だな。」
「そうなんだ。聞いてごめんね? 」
「良いってことよ。こっちも教えてもらったしな。」
「そう。あ、きたきた。」
まあ、何という事でしょう。会話が成立しています。しかも、ランチが運ばれてくるのを見るや否や、微笑んでおります。あの女性と同一人物とはとても思えません。見惚れつつ手を動かします。
「お〜。美味しそう。」
「ドリーバーグか……すまんがテルーちゃん。俺にも一つ同じのを。」
「わかりました。」
少し小腹が空くのはわかります、が……ラムドさん。貴方が密かに何と呼ばれているか知っていますか? 暴飲暴食家ですよ? 早朝、朝、昼前、昼、夕方、夜、深夜と一日何食食べるんですか? 七食ですよ?
「俺は燃費が悪くてね。馬鹿みたいに食べなきゃやってられんよ。」
「へぇ。ラムドさんが仕事してるとこ、見て見たくなったな。……登録終わったら少しついて行って良い? 」
キョトンとした後、ニヤリと咲うラムドさん。アレは何かしでかしそうな顔です。
「……あー、アカネお嬢さん? 先ほど修練場に行くと言ったが、やめにしよう。」
「? どうしたの? 」
ラムドさんは答えず、ずずいとアカネさんを正眼に凝視する。あーあ、失敗しました。ハンスさんをひとっ走りして呼んでくるべきでした。私はアイコンタクトを試みます。手を動かしながら。
“ラムドさん! 規則上は問題有りませんが、止めて下さいよ! ”
“そうは言ってもなぁ……別に一人でする訳でもあるまい? ”
“それはっ……そうですけどっ! この頃物騒になってきてるのわかってますよねっ⁉︎ ”
“それはそうだ。だが、自分が生き残る術を鍛えるのもありっちゃありだ『でもっ! 召集が掛かったらっ! ──』それに両脇に控えてる二人、ここにいる全員で掛かっても返り討ちにされそうでな? もしかすると、騎士団でも総出で来なきゃ話にならんくらいなのよ。”
“……マジ? ”
“マジマジ。つーか、一緒に席座ってるだけでも冷や汗が止まらねぇのよ。”
“……その心は? ”
“俺が見て、上のランクに推薦って形で始めさせる。あったろ、そう言う規格外用の規則。ランクがそこそこ高いと召集に応えるのも、任意になる筈だ。”
“た、確かに。確かにラムドさんはBランクですから、条件は満たしてます。それに、ラムドさんがそう言うのならば、その子の為にもそうした方が……わかりました。”
“じゃあ、そう言う事で。”
ここまででコンマ数秒。私の秘技、【有視界念話】が炸裂しました。こう言う時、便利ですねー。ただ単なるアイコンタクトとは一線を画す瞬間です。繋がる条件は視線が合う範囲と言う癖のある代物ですが、近距離での盗聴の恐れが皆無なのと、何より情報量が桁違いなんですよねー。
「代わりに俺と仕事に行って、力量を見せてくれ。それ相応のランクになるよう、話は通すからさ。」
うんうん。私はもう、その方向で事務処理の手続き行ってますよー。あとはカードさえあれば問題ありません。問題ナッシング。仕事が早いイズとは私の事だ!
「ん? どう言う事? 」
「ああ、そうか。ランクとかそこら辺も登録後に説明されるのか。そうかじゃあ簡単に説明しよう。」
ああああ、仕事が、それも楽しい方の仕事が取られた。なんと言う事でしょう。こんなに献身的に働いているのに、神は更なる無慈悲を課されるのか嗚呼。……ふざけるのはここまでにしておきましょう。こんな風に心を遊ばせておかないといけないほどの労働にも、罵詈雑言を吐き捨てたい。その分、給与明細もズラズラ桁が並ぶんですけどねっ! 休暇が殆ど無いので、黒に近いグレー企業こと冒険者ギルドヴリドリー支部。
そんなこんなで、ランクの説明の為にラムドさんは古紙──折ってある所が掠れて見えづらくなり、全体的にヘタってきていて、年季の入り過ぎてそろそろ新しい写本と取り替えたらどうかなという程の紙──を取り出して机の上に置いた。創業当時からの伝統行事にして恒例行事が始まります。
=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=|=
脅威等級倍率(D級を100とした値)
〔応戦可能推定戦力〕
N.D.級 : ∞
ダークライン〔連合軍撃破限界〕
S+級 : 2^7×6/5(15360)
S級 : 2^7 (12800)
S-級 : 2^7×4/5 (10240)
レッドライン〔一国撃破限界〕
A+級 : 2^5×6/5(3840)
A 級 : 2^5 (3200)
A-級 : 2^5×4/5 (2560)
イエローライン〔レイドパーティ撃破限界〕
B+級 : 2^3×6/5(960)
B級 : 2^3 (800)
B-級 : 2^3×4/5 (640)
グリーンライン〔パーティ撃破限界〕
C+級 : 2^1×6/5(240)
C級 : 2^1 (200)
C-級 : 2^1×4/5 (160)ゴブリン集団
ブルーライン〔単独撃破限界〕
D+級 : 2^0×6/5(120)
D級 : 2^0 (100)
D-級 : 2^0×4/5 (80)ゴブリン単体
E級 : -∞
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「これは目安だ。一般の冒険者、武装した人種を基準に、魔物の脅威と討伐戦力を表記してある。これに倣って、冒険者のランクも大まかにDからSの五段階と決められたんだ。」
そう言いながら紙をつつくラムドさん。穴が空いても知りませんよ。ええ、知りませんとも……片手で予備を用意しときましょうか。目指せエリートウーマン、仕事ができる女性。
「へぇ。こんなのがあるんだ? 参考までにラムドさんのランクを聞いてもいい? 」
そういうのはここらで滞在するだけで自然と耳に入る物なんですが、あの一行は遠方から旅してきたのでしょうかね?
「Bランクだ。ただし、いつも初心者に勘違いされがちなんだが。B級の魔物を単独で倒せる訳じゃあ無い。例えばここにあるB級の魔物を倒す場合、大規模なパーティか小規模のレイドパーティ、つまり大凡10人の集団を他のBランクの者と組んで挑むんだよ。」
機先を制す。いるんですよね……Bランクの意味を取り違えて、B級の下級竜種に突っ込む変な人が偶に。そして後片付けを増やす。
あんなん人種一匹で倒せるかっての。できるとしたら人の皮を被った傑物か怪物か、人外種の中の妖精種や竜人種の高位種族ですね。手を動かします。
「なるほど……見た感じ、A級以上の魔物は別格みたいなんだけど? 軍隊規模まで行くとそれほど個人の力がどうのとか、関係ないんじゃ? 」
ああ、マシな質問。いや寧ろ良。E級とN.D.級の謎に触れないだけ良問ですよー。そうです、その存在意義がわからない、絶望か油断しか生まない脅威ランクに何の意味があるのか、スルーして正解です。私達にも説明できませんから。
「わはは、統率の取り難い冒険者ってのは軍隊にとってお払い箱ってのは、その通りだな。遣われるとしても大半が斥候か遊撃隊だなぁ。」
「その口振りだと、参加要請でも来るの? 」
「ああ、近場の支部から数合わせでな。軍隊や騎士団の連中はプライドが高いから、そこまで呼ばれねぇよ。しかも、入って数年そこらの新人は呼ばれても行かせねぇ。まぁ最近は異世界人が活躍してるから、今の所は足りてるはずだ。」
うーん、ラムドさん。お酒が回って饒舌になって来てます。まだ登録してないのに召集の話までしちゃってるよ。もう、登録しちゃえば?
「……異世界人? 」
「うん? 勇者ミヤビ=バデュラの伝説を知らんのか? 」
「……それって何年前の話? 」
「なんでそんな事を……確か四百万年ほど前の話だ。伝説にしては新しい部類に入るな。」
アカネさんが一瞬鋭い視線を荷物にある黒い物体に向けた様な気がします。どうしたのでしょうか? 何か呟いてるのでちょっと読唇術で。手を動かしながら。
“勇者が女か。……このエロゴン。”
⁇ エロゴン⁇ 何かの呪文でしょうか? 何事も無かったかのように会話が再開します。インクを補充します。
「へぇ、その勇者と異世界人ってどんな関係? 」
「本当に知らないのか……そうだな、ミヤビ本人が異世界人だったんだ。魔王をたった五人のパーティで倒し、ヴェリタスを封印したインドゥラー神の遣いって話で有名だ。」
「インドゥラー神? 」
「……本気で言ってるのか。余程遠くから来たんだな。インドゥラー教はこのセルジ帝国の国教にして、邪神ヴェリタスをことごとく返り討ちにした守護神インドゥラーを崇める宗教だ。知らないだろうから注意しとくが、敵に回さない様に気をつけろよ。『異端扱い』=『人として扱ってくれない』だからな。」
なんとまぁ、よく回る舌で。あのエールには豚の脂でも入っているのでしょうか? 一応、私も信者なんですが。信心深さは水溜り程度ですけど。あ、ここ間違ってる。修正インキで。
「そう、じゃあ。そのイ、イン? 」
「インドゥラー教な。」
「そう、そのインドゥラー教の人の前で、これはしちゃダメだ、みたいなのある? 」
「……宗教の響きには慣れてるらしいな。……ええと、勿論インドゥラー神を罵倒するな。神社、神の社にある偶像に唾を吐きかけるな、落書きするな、悪戯するな。」
「今の所は誰でも怒りそうな事ばかりだね。もっと他に無い? 」
ラムドさん、私も流石にからかい過ぎかと思います。えーと、水袋で手首を冷やして〜。
「あー、狂信者はヴェリタスの名前を口に出しただけで切り掛かってくるとか。逆にインドゥラー神の名前を出したら目を輝かせて飛びかかって来るとか。」
「それも気になるけど、礼儀作法とかさ? 」
いい加減にしなさいこの酔っ払い。明日からはバーのマスターに言って、エール風清涼飲料水を特別に出していただきましょうか。ついでに氷を分けてもらってと。
「んー、他人の頭を気安く撫でるな、食事の前は手を合わせろ、部屋に入るのは右足から、王の前では右足を立てつつ左膝をつけて左手を腰の後ろ右手を胸の中心にして礼をする。」
“何だか殴りたくなってきた。”
んんんん。アカネさん。気持ちはよく分かりますよ。でも落ち着いて下さい。今のは覚えておくとトラブルを減らせますよ。
「色々聴いて話が逸れたけど、ランク別の人数と強い異世界人の話が聞きたいな。面白そう。」
そう、元はと言えばその辺りから話が始まったのです。てかアカネさん、どんだけ味わって食べてるんですか。食べ方が綺麗ですし。……そう言えば、食べる前に軽く手を合わせていませんでしたか? あれ? 知らなかったのに? よし、考える前に手を動かします。
「ランク別の人口、か……Dランクには女子供もいて小遣い稼ぎをやってるから、この国だけでも数千人はいるな。Cランクは四桁に近い数百人、Bランクは二桁に近い数百人……正直、ここ最近の魔災害やら戦争やらで爆発的に増加していてな。ハッキリした数字がわからん。変わらないのはAランク以上だな。」
このっ! 今この忙しくて忙しくて忙しいのはその魔災害の所為だよっ! 原因をハンスさんが究明してるのが魔災害ですよっ! 嗚呼、思い出すだけで頭の血管が破裂しそう。
落ち着け、私はゴーレム。事務ゴーレム。情報を頭に入れて手元から吐き出すゴーレム。手がインクで黒光りするアイアンゴーレム。はぁゴーレムそれゴーレムもいっちょゴーレム。私以外の事務ゴーレムは体調不良により白目を剥いて倒れました。整備不良ですね。
「Aランクは二十人。Sランクは十二人。特にSランクは『十二使徒』とか|ケッタイ(奇妙)な名前で呼ばれてたりする。ハッキリ言って奴等は人間辞めてんよ。」
「何だろう。凄く不穏な響きだね。怖いもの見たさで会ってみたいなぁ。……強い異世界人もその中にいるのかな? 」
「ああ、俺たちは修羅の人と呼んだりするが、確かにいるな。ぶっ飛んだのが数名。上手く話が合えば良し、でなければ死……かもな。俺は辞めといた方が良い、とだけ言っておこう。」
「うん、心に留めとく。ラムドさん、これからよろしく。」
「お、食べ終わったか。じゃあ行くか……。」
「……ラムドさん。十二使徒ってあんな人? 」
「お、おう。イズに休暇を与えるように、ハンスに言っておこう。」
>「東で上位竜種の目撃情報ヴリドリー秘境で魔物減少原因不明ローム皇国に遠征の兆しあr#/&¥€%$○*〒〆aaaaaaaaaaaaaaaa」<
気がつくとベッドの上でした。途中から記憶が有りません。
感謝感激雨あられ。アクセス数を見ると、ちょこちょこ御覧になられている方々がいらっしゃるようで、大変嬉しく思います。
そしてブックマークが増えました! 感謝です。
これからも気長にお付き合い下されば幸いです。