その頃
その頃、サイルロイドの街中にある砂鏡の塔の最上階にて、世界を代表する七つの国の王が重要な会談を開いていた。
「一体どうするんだ!エルフ共の人質が逃げたぞ!?」
「随分ズサンな警備をしていたんだな。」
冷ややかな目で、『伝説』のエルフを管理していた国の王を誰かが見つめる。
「いいや、門番を二人つけていた!」
「ならなんで逃げた!?」
「誰か裏切り者がいるんじゃなーい♪」
集まりの中でも、見た目は一番若い王が果物をつまみながら言った。イムットの国の王だ。
「……そういえば、『新世代』を捕らえていた所の一人が消えたと聞きました。」
立派な顎髭を蓄えた老人が、ボソリと呟いた。この老人は賢者として世界的に名を知られているようだ。
「なら、消えたヤツがハンニンって感じ♪」
「早く、そいつを捕らえ裁こう!」
「まぁまぁ、落ち着きなよ。ミニルの王♪」
この中で一番怒りっぽいミニルの王。流石に頂点には逆らえずに黙る。
「暫く泳がせてみよう?……いいモノが見つかるかも知れないからね♪」
「………イルットの王の仰せのままに」
口を揃えて、六人が軽く会釈をする
「それじゃ、ゲームの始まり〜♪」
一粒の葡萄の実を口に入れて、王は無邪気に笑った。
木で出来た出口を通ると、アンデットたちが一瞬にして消えた。もしかしたら、これが不吉な事かもしない。とにかく、抜け出た事は確かだ。
明るく妙に生活感のない場所から、いきなり生き物が騒ぐうるさい場所に戻った。
「おい、下僕よ。ここは一体どこだ?」
「えーとな。クリュスの村へ行く道だ。あと下僕じゃねぇ。お前が下僕だろ。」
「ふーん……どう見ても、ガルムが下僕です。」
やはり腐臭漂う街よりも木の芳ばしい香りの方がいい。自然の美味しい空気を吸い、ふと思い出したことがある。
「おい、お前に言いたいんだが」
「何だ?」
「私は天使じゃない。」
「えっ?……じゃあ何故背中の羽は天使のようなモノに?」
「父親からの遺伝でな。天使の血よりもエルフの方の血が濃い。」
「えっ?マジで?てか父親が天使て?」
昔エルフの王が、天使の国と親交を深めるために、娘を天使の王子と結婚させた。二人の間から、生まれた天使の羽根をもつエルフの子供。その子供が私だ。
だがこの話をこのゴミにする必要はない。
「お前みたいなクズに話すわけないだろう。何期待してんだ。」
「えっ?酷いな。」
「黙れ、ハゲ」
「ハゲてない!」
「将来ハゲるだろ?私には分かる。」
「ハゲない!ハゲないよ!?……多分」
こいつと話しているとなんとなく楽しい。