危険
「……弟は死んだし、父と母は生きてるかすら分からない、か」
「弟?」
そういえばこいつは最近来たばかりのガキンチョだったな。だから、弟の事も知らない。
「私が入っていた牢の隣部屋にいた奴だ。やはり最近来たばかりのおチビちゃんは知らないのか?」
「…………どう見ても、お前の方が圧倒的にチビだろ」
「黙れ、ガキ」
「隣のっていうと、エルヴァか。去年あたりにはもう死んでいたっけ。」
「ふーん。ガキンチョの割にはよく知ってる。」
「一応あそこの団長だったからな。牢の中の奴は大体把握して……」
その時、背筋に悪寒がした。
危険という文字と赤い血の色がが頭を埋め尽くす。とてつもない危険が迫ってる。ヤバい、ヤバい。
よく耳を澄ますと、嗚咽と悶絶の叫びが聞こえてきた。
だんだん近くなってきた。まだガルムは気づいていない。悲痛な叫び声がここまで届いてやっと気づいたようだ。
「……なんか来てるな?」
「気付かないのか。バカめ。」
「バカじゃねーっての。で、この叫び声、一体誰のだ?」
「多分腐乱死体だろうな。この叫び声の多さから見ると、少なく見ても数十程度か?」
「それにしても、凄い足音だな。腐乱死体が走ってんのか?」
「それはないな。腐乱死体たちは走れない。全身の筋肉がほとんど腐り、溶けていったため走る程の力はない。餌をとる方法は知ってるか?
………鋭い牙と爪で致命傷を負わし、弱り切ったところでかぶりつくんだ」
「お前、やけに詳しいな。」
「お前じゃない。サリアだ。家にあった本を読んでいたらこの情報が載ってたんだ。まぁ、正しいかは分からないけどな。」
家には一生かかっても読み切れないほどの本があった。誰が集めたのだろうか。
………まぁ、そんなことよりも早く逃げなくちゃな。