牢屋からの脱出
「……一体どういうつもりだ。」
「何がだ?」
「何で、私に構う。何で自由にした」
放っておいて欲しい。このまま暗い部屋にそっとしておいて欲しいのに、何故この男は静寂を壊す。自由を殺す。
「理由、言わなきゃダメか?」
「言え、私が納得する理由を」
「……見たくなったんだよ」
「あ?」
「白い羽根で青空の下を飛ぶ天使が……って臭いか」
ほんの一瞬驚いた顔を見せる。
そんな事のためにこんな事をするのか。
「くっ……はははっ!」
突然笑い出す私を見て、ポカンとした男。それを見て笑いが更に止まらなくなった。楽しい。久しぶりに笑った。
「…………いいよ。あんたの願い叶えてあげるよ。」
何十年も繋がれてきたために立つ事すらままならない。嫌だったがその男の手を借りるしかなかった。足枷によって、無理矢理抑えられていた魔力が少しずつ溢れてくる。
「………バレたら減給じゃ済まないな」
「それを承知で事を起こしたんじゃないのか?」
「起こすわけないだろう。そもそも良いと言われるか分かんなかったし。」
「……そうか、バカだなお前。」
この牢屋に来るには、階段を降りて来なければいけない。
だが、そこは捕らえられている罪人が通ると『黄金の鐘』が鳴り、逃げ出した事がばれてしまう。男は、よく私が入った拷問部屋に向かった。
「………おい人間、何でこんなところにきた?」
「人間じゃないガルムだ、覚えておけ。ここの拷問具の一つに……ほら」
女性の形をした高さ2メートルほどの拷問具の扉を開く。拷問具の中には、地下へ下る為の梯子があった。
「お前降りれるか?」
「お前じゃない、サリアと呼べ。舐めるな、このくらい降りれる……」
そう、大丈夫だろう。
ガルムは私の青黒く変色した足を見て言った。
「………やっぱ無理だろう」
「大丈夫だ。」
梯子を少しずつ降りていく。
足が痛い。刺されているように、焼かれてるようにじくじくと痛む。それなのに、こいつと居ると何か楽しそうだ。