ガルムとお茶
「あ。サリアじゃん。どしたの?」
朝早くにガルムの部屋に向かった。私が居た部屋から結構離れていて、何故か残念に思ってしまう。
ガルムは眠たげな目をして、ほんの少し微笑み言った。何故だか、顔が熱くなってしまう。何かの病気なのだろうか。
「別に………。」
「そっか。何か飲む?」
棚から二つの綺麗な装飾が施されたティーカップとポットを取り出し、丸いテーブルの上に置く。そして、その横に置かれていた二つの小包の片方の中から、スプーン何杯か分の茶葉を掬い、ポットの中に入れる。
「美味しい紅茶でさ。お前に飲んでもらいたくて、少し分けてもらったんだ。」
「へえ、そりゃ楽しみだね。」
茶葉を蒸らしている間、メイリンとアルスの事を聞く。
やはり、ガルムも二人がここ一週間、何やっていたのかは知らないらしい。
透き通るような赤茶色の紅茶が並々とカップに注がれる。
「そういやサリアってさ。最近はずっと図書館で魔導書を読んでいるよな。」
「何故知ってる。」
「最近は師匠が修行だっつって、毎日図書館に本を運んでるんだ。その時見かけてさ。」
「成る程。見られていたのか、声ぐらい掛けてもいいのにさ。」
お前のやっている事を邪魔したくないと、彼は言って紅茶を一口飲んだ。それに釣られて私もカップに手を添えて、一口飲む。ほんの少しだけ感じさせる渋みが、紅茶の味を引き立てている。
「あ、クッキーもあるぞ?」
「頂こう。」
茶葉の入った袋の近くに置かれた小さな包みを開けた。その中から少し焦げ目がついた不恰好なクッキーを取り出し、口の中に放り込む。
サクサクと軽い歯応えと口の隅々まで広がっていく香ばしさと甘さ。素晴らしい味だが、ふと当たり前のことが気になりだした。
「これ、誰が作ったんだ?」
「それがさ。わっかんねーんだよ。」
彼が言うには、朝の素振りを始めようとしたところ、部屋の前になかなか上手な字で『食べてください』と書かれた、袋が置かれていたらしい。
「………ていうか、毒が入ってるかもしれねぇのに、よく人に出せるよな。」
「大丈夫。いざとなりゃ、吐けばいいし。」
そういう問題じゃないというのに、こいつはやっぱりバカだ。
「なあなあ、この後さ。一緒にこの里の中見て回ろうぜ?」
「ん、別にいいけど………まだ私、着替えてないんだ。」
白い寝間着の下には下着も何も、つけてはいない。こんな格好で、一緒に回るのは流石の私でも恥ずかしい。
「ああ……じゃ、ここで着替えれば?」
「なっ!?」
こいつは本当に私を女だと認識しているのだろうか。どんなにバカな奴でも女を、自分にあてがわれた部屋で着替えさせようとする奴はいないだろう。
「ん?どーした?俺は出てるよ?」
「…………死ね」
ほぼ蹴るようにしてドアを開け、足音を思いっきり立てて、部屋に戻る。
多分あいつは、訳がわからないとでも言ったような顔をしているのだろう。




